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火影邸からの道程。

シカクさんの話によると、奈良家には彼の他に 奥さんのヨシノさんと その息子であるシカマル君がいるらしい。

これからそこに入っていくことになる私に家族のことを色々と教えてくれているシカクさん。恐らく彼自身は気づいていないがとても幸せそうな顔をしている。本当に家族思いな人なのだろう。


「ヨシノさんは娘を欲しがっていたからなァ……お前さんのことを話したらすげェ喜んでいたな。ちょいと気が強くて口煩い人だが……、まぁ甘えてやれ。きっと可愛がってもらえるだろうよ」

『つまり女神のような人ということですね』

「まァ、そうだな……」


私の言葉に、彼は若干頬を赤らめながら同意する。しれっと惚気やがったぞ。微笑ましいなコノヤロー。


「それからシカマル。アイツは……歳はお前さんと近いんだが、何せとにかくジジ臭いガキでな。将棋や昼寝ばっかしてやがる。将来が心配になるぐれェの面倒臭がり屋だ」

『つまりお爺さん系男子ということですね』

「ふふ……そうだな。アイツにぴったりな言い回しだ」


何。お爺さん系男子でいいのか。お爺さんで少年な男の子ってどんなだろう。元の世界ではそんな子は居なかったから想像もつかないな。無理やりイメージを起こしてみたら、シカクさんヘアーの小さなお爺さんが思い浮かんで、自分の想像力の無さにびっくりした。


「まァ、ああは言ったが、悪い奴じゃあない。仲良くしてやってくれ」

『勿論です! 』


こちらに来て同年代の子とまだ出会ったことがないから、当然友達はゼロだ。お爺さん系というのが気になるが絶対に仲良くなってみせる! そう意気込んでこくりと頷く。

シカクさんとそんな話をしながら歩いていると、視界に大きな屋敷が映った。大きい家だな〜 と眺めながらその前を通り過ぎようとした時、シカクさんはぴたりと立ち止まった。


「さ、入ってくれ」

『……えぇ!? もしかして奈良家のお宅ってここですか!?』

「あァ、そうだ」

『なんか、家もですけど……庭 広くないですか。森みたいになってますよ』

「鹿を飼ってるからなァ」

『鹿!!??』


とんでもない大富豪じゃねーか!!!

こんな豪邸、元の世界じゃ見たことないぞ。それに庭に鹿って何だ、鹿って。いくらなんでもそれはおかしい。普通ゴールデン・レトリーバーとか飼うものじゃないの!?


『ベリーゴージャスですね……』

「そんな大したモンじゃねーさ。ホラ、入った入った」


驚きのあまり突っ立っていると、軽く背を押され 家の中へ誘導された。ガラガラと引き戸式の扉が開かれその先には和風な広い玄関。言ってみれば、それはもう旅館だ。

気がつくとシカクさんはもう廊下に上がっていて、彼に続こうと靴を脱ぐ。そこで少しモタモタしてしまっていたら、向こうの部屋から黒髪の女の人が顔を覗かせた。


「あら? アナタもう帰って来て……」


シカクさんへ向けて発した彼女の言葉は、私と目が合った瞬間に途切れた。そしてその目をキラキラと輝かせ、パタパタとこちらへ走って来る。


「あなたが名前ちゃんね?」

『はい! えっと……ヨシノさん、ですよね? 今日からよろしくお願いします!』

「そうよ、こちらこそ宜しくね。……ヤダ、凄い可愛い子じゃないの! さぁさぁ、上がってちょうだい!」


ヨシノさん。シカクさんの奥さんである彼女は先程の話通り、私が来ることをとても楽しみにしてくれていたようで 驚くほどウキウキした様子で出迎えてくれた。いや、ウキウキなんて生易しいものじゃない。興奮していらっしゃる。私の頬を両手で挟んでは摩擦熱で発火するんじゃないかと心配になるほど撫で回している。

その後無事に居間へ通され 言われるがままにテーブルの席に着くと、ヨシノさんにお茶と茶菓子を出された。


「話は聞いたわ。大変だったでしょう? 何も無いところだけど、ここが本当の家と思って楽にしてちょうだいね」

『ありがとうございます……! 本当に女神だ……』


ほろりと涙が出てしまいそうだ。でも、我慢。カカシさんに言われた通り、本当に泣き虫になってしまう。涙を堪えて変な顔になってしまった私を見て、ヨシノさんは可笑しそうに笑った。


「ふふ……それから、私の事も本当のお母さんだと思ってくれて構わないからね。私達、あなたが来ることを凄い楽しみにしてたのよ」


そこまで言ってから、彼女は何かを思い出したかのように目を丸くして、パンと手を叩く。


「そうだわ! シカマルは何処かしら? もうすぐ名前ちゃんが来るからここに居なさいって言っておいたんだけど……」

「縁側で昼寝でもしてんじゃねーか?」

「もー、あの子ったら! 」

『えっと……私、探して来ましょうか? 』

「あら、いいの? じゃあお願いするわ! ……あ、そうそう。ついでにお部屋のこととか 分からないことがあったらシカマルに聞いてちょうだい。歳が近い方が色々話しやすいでしょうし」

『はい! わかりました! では行ってきまーす! 』


私は椅子から降りて、居間を出て行った。

シカマル君の捜索が第一の目的だが、他にも楽しみがある。それは、そう。


お屋敷探検だ!












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