03.それは、離れたくなかったから21/21
銀色の髪に赤い目をしていた銀時は、幾度となくその容姿を気味悪がられた。
最初のうちは、傷つき泣いていたものであったが、最近では、特に吉田松陽に拾われてからは回りのものが自然と言わなくなり、気にならなくなっていた。
それも、この忌まわしい銀髪を、綺麗だと言ってくれた人がいたから。
「銀時!貴様あれほど無闇に突っ込んでいくなといっただろう!?」
ボロボロになりながらも、戦場から戻った銀時に鉄拳が降りる。
それを銀時はのらりくらりと、かわしたあと、身体の疲労にその場に思わず膝をついた。
「うっせーなヅラ…でけぇ声だすんじゃねーよ死ねばーか」
膝をついてしまった銀時のもとへ慌てて駆け寄ろうとしてきた桂へ一言。
心配させまいと暴言を吐いて相手から注意をそらす、銀時の悪い癖だった。
「大体、あのまま俺が突っ込まなかったら全員あの世に行ってたと思うけど?」
さらに注意をそらそうと、体制を立て直した銀時は、ふっと軽く息を吐く。
いらいらが止まらない。
銀時は止まらぬ口を抑えることすらもできず、さらにしゃべり続ける。
「天人に大ダメージ与えられたんだし、俺も生きてるし、いいじゃねーか。結果オーライっつーことで。じゃあ俺は疲れたから寝かせ…っ」
その瞬間、また膝が折れ、銀時はその場に倒れ温かいものの上に体を横たえるハメとなった。
「おいおい、ボロボロじゃねーの銀時ィ?」
その低い声は銀時の下から聞こえてくる。
何事か、と視線を巡らせれば相手か自分のかわからない血がべっとりとついた白い羽織を迷うことなくがっつりと掴み、さらには膝の折れた銀時が尻餅をつかぬよう、床の上にあぐらをかいて銀時を抱きとめた高杉の姿があった。
「え、お前なにしてんの?」
「みりゃ分かんだろーがァ、ほれ」
「痛っ!」
抱きしめた銀時の脇腹を、隠し通せると思っているのか、と悟らせるように着物の上から、そこにあるであろう傷を握り締める。
とたんに苦渋の表情を浮かべた相手を見て高杉はふとまゆを寄せた。
「誰か、包帯と消毒液を!」
桂がその高杉の表情から銀時の傷の深さを把握すると、近くにいたものに鋭く声をかける。
その声にわらわらと集まってきた仲間をみて、銀時は苦笑いをこぼした。
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