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「で、高杉。てめ、人ん家に勝手に上がり込んできて何の用?しかも土足だし、草履脱げばか」
ぽんぽんとあやすように、高杉の腕を叩きつつ家が汚れるとまるで姑の要に口を出す。
高杉は面倒くさ気に息を吐くと、誤魔化すかのようにさらにキツく銀時を抱きしめた。
「ちょ、高杉?てめマジ何しに来たんだよ?あれ、もしかして忘れた?俺次あったら斬るって言ったよね?斬っていいわけ?」
恥ずかしさと嬉しさを隠すように、銀時は口早に質問を浴びつつ、木刀に手を伸ばす。
斬れないけど殴れるぐらいならできるよな、と相方の重さを腕に感じつつ振り上げた瞬間。
「忘れ物がってな、忘れたとは言わせねぇぜ?」

高杉のつぶやきに、ぴたりと腕を止めざるを得なかった。


「…お前…」
「あん時の約束、覚えてねぇなんて、言わねぇよなァ?」
低く耳元で囁く高杉。
からん、と音を立てて木刀が手から滑り床へ落ちた。
脳内にフラッシュバックするように過ぎ去っては現れる記憶をひたすら眺め、銀時はその確かに交わした約束に、はっと息を飲む。
どこか楽しそうに笑う高杉は、銀時の髪の毛に指を通した。
「この俺が覚えてやったんだ、感謝しろよな」
どこぞの王様のような高杉の態度に腹を立てることなく、銀時はさらにその約束を交わした時へと記憶をさかのぼって行く。

忘れていた、と思っていた。
絶対にかなわないと、この間きづいて諦めたばかりの、あの約束。
本当は、覚えてるのか忘れてるのか、問いただしたかった。

交わしたのは数年まえ。

「…な、高杉」
「あ?」

顔をあげた銀時はどこか、苦しげに表情を歪めている。
高杉はその頬をなぞり、いやらしく舌を這わすと銀時の次の言葉を待った。

「果たしてくれんの?」

それだけで高杉には銀時が約束を忘れてなどいなかったことを悟り、くつくつと笑いが溢れる。
そうしてようやっと、軽い音を立てて、本当はすぐにしたかったキスを銀時に与えたのだった。


「忘れるわけねぇだろ?」

愛しげに、銀髪を撫でて。



 

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