1/2※友人がピュア出水をすきと言ったので作ったお話し。 俺、出水公平。17歳。 好きなものはみかんとエビフライとかそんなの諸々。ついでに身長は175センチくらい。 ボーダーではA級1位の太刀川隊に所属している、そんな俺は今現在、まったくの別人へと姿を変えていた。 「えっ」 俺が疑問を抱いたのは無理ないだろう。 視界がいつもより低く、本日来ていた私服ではない私服姿であった。恐る恐る置かれている鏡に目を向ければ、尊敬できる先輩の一人である風間さんの姿がそこにはあった。 「入れ替わりぃ!?」 風間さんになった俺と、俺になった風間さんの2人でエンジニアで風間さんの友人である雷蔵さんの所へ足を運ぶと、至極非現実的なことを告知された。 つまりはこの現象を入れ替わりと言い、中身だけが入れ替わったのだと言う。いや、信じられねーし。 「俺もそっちは専門外だからはっきりとは言えねーけど、さっきまでランク戦してたんだろ? お前ら」 「まあ」 すごく真剣な顔つきの俺、もとい風間さんが小さくうなずいた。違和感しか感じない上に混乱する俺を他所に、二人の会話は進む。 「ランク戦ってのはトリオン体を転送して戦うシステムだ。解除された時に何らかの影響で元の身体に転送され損ねたと考えるのが妥当だろうな」 「えっ、じゃあこのままってことっすか」 「いや、原因さえわかればそれを修復して、もう一度転送すれば元に戻れるだろう」 「問題は、それがいつになるか分らないと言うことか」 「そ、そんなあ」 じゃあ、原因が解明されるまで、俺は風間さんで、風間さんは俺を演じないといけないと言うことだろうか。 「茶化されるのが目に見えているな。どうするべきか」 顎に手を当てて思案する姿は風間さんそのものなのに、顔立ちは完全なる俺なので不思議な気分だ。一方の俺も風間さんの身体にいる訳なので、傍から見れば可笑しいことこの上ないのだろう。 「出水、お前のシフトはどうなっているんだ?」 「ええっとー、今日の午前に防衛任務終わったばかりなので当分はフリーです。だから学校に行こうかなと」 「うむ。俺も大学へはレポートを提出し終わったばかりだから予定はないし、任務もなく非番だ」 一拍置かれた後に告げられた言葉に俺は瞬くしか出来なかった。 「よし、ならば異常が元に戻るまではお互いがお互いのフリをしよう」 「えっ、はあ!? え、ちょ、ちょまってくださいよ。それってつまり」 「俺は出水になりきるし、お前は俺になりきれ」 「ええー」 まじっすか。米屋と入れ替わったとか奈良坂とか、最悪三輪でもやりきれる自信はあるけど、風間さんは絶対にできない。つーかまず、風間さんが俺になることとか無理だろう。鉄仮面な俺とか絶対米屋に即バレするやつじゃん。 しかし、風間さんはやり通すようで、鏡を見て表情を作り始めた。根が真面目な人って多少の無茶でもこなそうとすんだな……。 唖然とする俺を見かねてか、雷蔵さんは苦笑い気味で俺、じゃない、風間さんへ声をかけていた。 「年齢も違うし、学校とかも違うから無理がありすぎるんじゃないか?」 「しかし、このまま諏訪や太刀川たちにバレても面倒なことしか起きないだろう」 「そりゃあそうだけど」 名前の挙がった2人を思い浮かべる。 俺らが入れ替わったと分かれば確実に茶化してきそうな二人組だ。いいように遊ばれて終わるのを考えれば、穏便に事を運ぶのは“なりきる”と言う手段しか残されていそうにない。 雷蔵さんに早急に原因究明をしてもらうようにと念を押した後、俺は風間さん……じゃない。出水と二人でラボを後にした。 それから風間さん……じゃない、出水。いや、これややこしいな! 心の中では風間さんでいいか。 風間さんと一緒に空き部屋でお互いのスケジュールを照らし合わせた。 なりすますことを決めた前提に、風間さんは本当に予定がなかった。ボーダーでの任務はない他に大学への用事もないそうで、これであればなんとかやり過ごせるのではないだろうかと考えることが出来た。一方の俺も多少の予定はあれど、一番の鬼門ともいえる高校生活は風間さんも経験しておりなんとかなりそうだ。まあ、最も真面目な風間さんのことを考えると俺より遥かに賢い点数をはじき出してきそうではあるけれど。 「ケータイはどうしますか?」 「知人の前で出すことをしなければお互いのままで大丈夫だろう。なにかしらの連絡が来たら回してもらって構わない」 「そうですね。俺もあんまりケータイは弄らないほうですし、太刀川さんからごくたまーに来るくらいです」 「太刀川の相手なら心得てるさ」 うわあ、太刀川さんなんかごめん。 あくどい風間さんを見ていれば、風間さんの持っているケータイが震える。 この時の俺はすっかり忘れていたのだ。 風間さんとなりかわると言うことはつまり、あの人と距離が縮まるということを。 「出水、すまないが早速面倒事に巻き込まれそうだ」 「えっ?」 ← |