大砲娘と世界征服論 Another | ナノ



シンキング・ブレイクタイム

 
 
 今日はホワイトデー。バレンンタインと対になるイベントであることは加古ちゃんから聞いていたけれど、どうしてこんな状況になっているのだろうか。
 
「受け取れ」
「え、へっ?」
 
 目の前に居るのは二宮で、そんな二宮から渡されているのは何かしらの箱だった。まあそれがボーダーに関連する資料であったりなんであったりであればまだ理解できるものの、リボンがあしらわれたそれはどうみてもプレゼントの類だろう。
 それをどうして二宮が私に差し出しているのか理解できない。
 
「えーっと、人違いでは?」
 
 彼を見る私の瞳がかなり疑ったものになってしまったが、理解できないものは仕方ない。
 小さく息を吸ったと思えば、二宮はため息交じりだった。なにが不満なのか私が聞きたいわ。まあ、そんなことを言えば視線だけで殺されそうになるだろうから言わないけど。
 
「以前、チョコレートを貰っただろう。それのお返しだ」
「……あれ、加古ちゃんからって言ったはずだけど」
 
 加古ちゃんに配るのを手伝えと言われて目の前の男に渡したのだ。それは1ヵ月前の話だし覚えている。けれど、お返しをもらう義理はない。だって私から二宮にあげたものではないし、内容だって加古ちゃんが買った?ものなのだから。
 もしかして運搬料? そしたらこんな綺麗にラッピングしたものじゃなくても食堂のプリンで
 
「老舗萬香堂」
「!?」
「限定の品だが」
「いるー!」
 
 まじか。私の最近推してるお店じゃないか! しかも、和菓子屋さんなのに洋風にラッピングされってるってことはホワイトデー限定!?
 最近忙しいのが重なってたから足を運んでなかったけれど、これからはイベントの時には行かないといけないな。
 先ほどとは一転、差し出された箱を喜んで受け取った私。そんな私の様子をみて二宮はなにも言わずに立ち去ろうとしたが、その行動を止めたのは私だ。
 
「ちょっと待って。これ、一緒に食べようよ!」
 
 わざわざ風間隊まで足を運んでくれた訳だし、そのまま帰すのもなんだか申し訳ない。
 そのままぐいぐいと彼の袖を掴んで隊室内に招く。幸い、今はみんな出払っていて私一人だ。
 
「しっかし、二宮が萬香堂を知ってるなんて意外だなあ。あの店チェーンとかないし、デパート進出もしてないドマイナーなのに」
 
 その分インターネット予約は1年以上待ちだし、三門市への観光では一度は寄ったほうがいいと言われる程だ。今でこそ私がその店の常連客として知られるようになったけれど、甘いものを食べなさそうな二宮が知っているのも意外だった。
 ラッピングを解けば中には焼き菓子が並んでいた。しかし、ただの焼き菓子ではなく、よく見る形の他には嗜好をこらしたのだろう特徴的なものや、和菓子屋という原点を忘れさせないような和スイーツとなっていた。
 
「うわー! おいしそう! コーヒー、いや、煎茶、悩むな。二宮は?」
「コーヒー」
「じゃあ私は煎茶にしよーっと」
 
 彼の目の前にコーヒー、そして私は煎茶を準備して向かい合いに座る。彼の選んだのは抹茶味パウンドケーキで、私はきなこがまぶしてあるクッキーを選択した。
 
「うー、おいしいー!」
 
 餡子が好きだからいつも練り切りとか、最中とか食べてたけど、クッキーも美味しい! きなこと和三盆の相性ってほんと舐めたらダメだと思う。このほろほろした触感がお茶に合うわー。
 もぐもぐと食べ進める私。視線を感じて口を動かしたまま二宮を見れば、コーヒーを飲みながらの彼とばっちり視線が合う。
 
「いつみても美味そうに食べるな」
「〜〜っ」
 
 え、今のなに。イケメンに微笑みプラスアルファしたら直視できないんですけどー。
 いつもはむすっとした顔を私に見せるのに、なんで微笑んでいるのさ。あれか、私が食べてる姿がそんなに可愛かったとか? うわ、自意識過剰すぎて自分で引くわー。
 あ、逆に変顔過ぎて面白かったとか? うーん、こっちの線のが有力っぽいな。不服すぎるが。
 しかし、年下にそう思われる私って。
 
「うーん」
「(リスみてえだ)」
 
シンキング・ブレイクタイム
 
アンケート結果で見事3位だった二宮のWD閑話です。
二宮って小動物とか好きそう。
20170317