大砲娘と世界征服論 | ナノ



慰める会 by.21歳組


 
「お、もう始まってんじゃん!」
 
 諏訪の家を訪問すれば、既に出来上がっている諏訪が居た。
 蒼也の傍に腰を落ち着かせたらビールを片手に詰め寄ってきた諏訪。すっごい酒くさい。
 
「おい、葵。お前、俺らが負けるって予測したそうじゃねーか!」
「いきなりなによー。そんなに距離が近いと、ちゅーしちゃいそうになるからやめて」
「今日はお前の冗談に付き合ってらんねえ」
「葵も諏訪もその辺にしておけよ」
 
 私と諏訪の掛け合いにストップをかけたのは木崎だ。
 私のほかに木崎と諏訪、蒼也と言えばボーダー内の21歳で俗に言う同僚であった。
 ボーダーへ入った時期はそれぞれ違うものの、年齢も同じで大学も同じとなると、自然とつるむようになったのだ。
 料理が得意な木崎のごはん目当てに私たちはよく集まったりする。そして今日はB級ランク戦始まって早々に順位を下げた諏訪の慰め会だったりする。
 
「うわあっ、鍋じゃん! 食べたかったんだよねー。風間ぁ、だし注いで」
「なあ木崎、俺は葵のこういう所が嫌いだ」
「……まあ、今に始まったことじゃないからな」
 
 木崎の前に置いてある酒に手を伸ばそうとすれば蒼也に妨害された。不服だ。
 前に置かれたほくほくの豆腐を手始めに食べてみる。うん、普通に美味いわ。流石木崎。
 
「で、だ。葵、俺に言うことがあるだろ」
「うーん? ……ああ! 負けて残念だったね」
「ちくしょー、男だったら絶対にぶっ飛ばしてたのに」
 
 私用に出されたオレンジジュースを片手に謝れば拳を震わせた諏訪。流石に可哀想になってきたので、数時間前のことを振り返ってみる。
 
「うーん、けどまあ、妥当っちゃ妥当じゃない?」
 
 白菜に手を伸ばした私を諏訪は恨みがましく見つめる。

「地形選択が出来たのは玉狛だし、玉狛のデータが少なかった状況を加味すれば彼らが有利であった訳だし。……玉狛が諏訪たちと手を組もうと思った理由もわかりやすいしね」
 
 それが読みやすい諏訪隊の動きであることは敢えて言わなかった。
 
「空閑くんがグラスホッパーをあんなに使いこなせていたのは驚いたけどね」
 
 諏訪に玉狛へ行っていたことは言っていないから私の発言にしっくりこない所もあるだろうけれど、彼らは舐めてかかれるほどのレベルではないということだ。
 リーダーの三雲くんは蒼也のように熟考するタイプで緻密に計画立てする。そんな彼が立てた計画が多少の無茶であったとしても、実現させることが出来る実力を持つ空閑くんが居る。
 諏訪隊と荒船隊はデータが多く、お互いに典型的なチームと言えるので三雲くんからしても計画立てて臨んだと言えるだろう。
 
「なんで6対2対1と読んだんだ?」
 
 蒼也が横目で私をとらえる。
 彼は私が置き去りにしたのでリアルタイムで見ることは出来なかったのだけど、後で録画を一緒に見た。その時に蒼也に聞いた時の予測は2対3対4対だったように思う。遠距離の荒船隊に分があるという見解は市街地Cであれば当然の予測だったように感じられる。
 しかし、私は逆であった。
 
「市街地Cを選択した時点で、単純な実力差を考えれば玉狛が不利なのは目に見えていた。私の目からみて、千佳ちゃんには正確性が欠けるから彼女の大砲に賭けるのは最良の選択とは言えなかったからね」
 
 狙撃手がランク戦では煩わしい存在であることは共通の認識と読んでも可笑しくはないから諏訪隊の行動も読みやすい。
 
「私の6点は玉狛全員の生存点を読んだ結果なの」

 玉狛は荒船に空閑くんを当てるのが目に見えていたし、諏訪たちは多少の無茶に目を瞑るチームだから、そこに乱入することが考えられた。諏訪隊の2点は諏訪が荒船を空閑くんから横取りしての1点で、日佐人が荒船をサポートする穂刈に当てられると考えたからそれの1点。荒船隊の1点は半崎か穂刈が諏訪隊の機動力を欠けさせるために堤を倒すのかなと思ってた。
 なので、点数的には当たったけど内容は違ったのだ。
 
「玉狛隊が失点0と読んだのは実力を買ったというよりは、諏訪隊と荒船隊をうまくぶつけることが出来るのかなと思ったからだよ」
 
 へらりと笑った私に諏訪は渋々納得したようだった。
 期待値を込めての予測が当たると思わなかったし、その予測に此処まで振り回される結果になるとも思わなかったけれど、なかなか面白い戦いであったことは事実だ。
 
「(空閑くんの機動力が映えた結果だったけど、次は難しいだろうね)」
 
 本部を出る時に空閑くんが村上に勝負を挑んでいるのが見えたし、次は那須隊もいる。地形選択は那須隊だし、今回以上に上手くいかないだろう。
 
「まあ、次頑張ろうよ。B級上位に上るには二宮や東さんたちと戦わないといけないし。練習付き合おうか?」
「お前に手伝ってもらったらハチの巣にされるわ」
「うーん、なら諏訪&木崎と私と風間とかどう? 楽しくない?」
 
 部隊に関係なく戦うタッグバトルも中々面白そうだ。私の提案に乗ったのは木崎だ。諏訪は一瞬顔をしかめて私と蒼也を見比べる。
 
「お前ら同じ部隊じゃん」
「けど私と風間切り離したら勝率下がるよ。風間は私を斬れないし」
「……その自信はどこからくるんだ」
「え? 事実じゃないの?」
「……」
 
「「(なんでこいつらは付き合ってないんだろうか)」」
 
慰める会 by.21歳組
 
諏訪隊&木崎&風間隊でバトルするなら
A:諏訪&木崎&堤&菊池原
B:風間&葵&歌川&日佐人
とかバランスよさそう。
 
反省会要素も出したかったけど、書き出したら長くなりそうだったので割愛しました。
なんでも言い合える仲の良さを出したかった。
20160720