小ネタ | ナノ
ネタ帳


2017/02/08
大砲娘小ネタA
Ver.影浦
 
「カーゲくーん」
「なんだ酔っぱらい」
 
ふらふらと覚束ない足を動かして窓のそばに立つ影浦の腕に自分の腕を絡めてみた。
 
「カゲくん捕まえたー!」
「るせえ。耳元でデケえ声出すな」
 
顔を上げて影浦を見れば、相変わらず鋭い瞳が私を見ていた。
口は相変わらず悪いのに、私の腕を振りほどこうとしないのが影浦のやさしさなのだろう。
珍しく泣かずに酔えたのだからこのテンションを落とさず影浦を茶化そうと思う。
脳裏には以前、加古ちゃんから聞いた言葉が反芻されていた。
 
「カゲくん、ちょっとしゃがんで」
「? なんで」
「いいから、いいからー」
 
掴んでいた彼の腕を離して壁際に座らせた後、私は彼の首に腕を絡めてぎゅっと抱き着いてみた。腕の中に居た影浦は一瞬大きく揺れてみせた。うーん、そんなものか。
 
「なにやってんだよ」
「加古ちゃんが言ってたことは嘘だったのか」
 
期待外れだと渋々腕を離して彼から離れようとした時、何を思ったのか影浦は私の腰に手を回しすのだ。離れようと思っても離れることが出来ない。
顔を上げればすぐそこに彼の顔があって一瞬息をのんだ。
 
「なにを確かめたかったんだよ」
「影浦が初心だって言ってたから、確かめようと」
 
言い終わるか否かの所で言葉が途切れてしまう。
目を見開く私を観察するように見つめる影浦は、縮めていた距離を僅かに離した。それによって塞がれていた唇が解放されて、一瞬のことに唖然としてしまう。
 
「え、ええっ、今!?」
「くくくっ、で、答えは出たか?」
 
喉の奥で笑った影浦を見た私の顔は真っ赤に違いない。
 
「……って夢をみたの」
「それは私に嫉妬させたいの?」
「え、なんで加古ちゃんが嫉妬?」
 
END



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