Trick or treat-2
「『Trick or treat』だ、ナマエ」 「は?――あ…え…?」
昨年同様、ナマエはハロウィン用カボチャのランタン作りに勤しんでいた。 右手に彫刻刀、左手におもちゃカボチャ、テーブルに置いた皿には刳り貫かれた中身と削った皮が盛られている。
細工に集中していたナマエは背後にセニョール髭の剣豪が立ったことに気づいていなかった。 出し抜けに声をかけられ、は、と振り返って凍り付く。
「なに――してんの…ミホーク」 「だから、『Trick or treat』だ、と言っただろう」 「そんな仮面…どっから持ってきたのさ」 「買った」
振り向いた先に立っていたミホークの頭に見慣れた帽子はなかったが、変わりに仮面舞踏会にでも出る気かと問いたくなる装飾的仮面を被っていた。 普段から羽飾りつき鍔広帽を普通に被り、装飾的変態スタイル(半裸)で生きている大剣豪殿である。 金の縁取りがなされている仮面も驚く程普通になじんでいた。 そもそも常態がハロウィンの仮装みたいなものなのだ。そりゃ当然だ。 しかし、仮面の下に見え隠れする得意満面な笑顔がキモチワルイ。
呆気にとられて二の句を継げないでいるナマエにしびれを切らしたのか、剣豪はついと手を伸ばしナマエの握りしめていた彫刻刀を取り上げた。
「ランタン作りは――後回しだ」 「ああもう……わかったから、お菓子が欲しいならそこの棚の上に――」 「いらん」 「は?」 「菓子はいらぬ」
言ってることがもう出鱈目だ。 そもそもハロウィンの主旨が変わってるんですけど、おっさん。
「ミホーク、言ってることが滅茶苦茶…」 「今宵のtreatはぬしだと言っている」 「は……?ちょ――ちょっとまって、待て!ミホーク!」
彫刻刀を取り上げられたまま宙で泳いでいたナマエの手を掴み、ミホークは ずいと、顔を寄せた。 狼狽するナマエ、しかし当然ミホークは引かない。
片手でナマエが握りしめていたカボチャを取り上げ、部屋の隅へ転がすと今度は軽々とナマエの体を持ち上げてテーブルの上に降ろした。
「あ!カボチャ!」 「――カボチャはどうでもよい」
作りかけのランタンを部屋の隅に転がされてしまったナマエは、場違いな非難の声をあげる。 ミホークはそれを少々悲しげな声色で諌めた。 しかし、ナマエの視線は変わらず部屋の隅で哀れにも逆さになっているランタンに注がれていた。
まったく面白くない。
ミホークは明後日を向いているナマエの顔を強引に仰がせ、有無を言わさず口吻けた。 じたばたと腕の中で藻掻くナマエを押さえ込んで、構わず咥内を舌で嬲る。 入り込んできた舌にナマエはもががと色気の無い音で抗うが知ったことか。
ナマエの背後にある邪魔な皿を脇に寄せ、そのまま上体を被せてのしかかると抵抗はいよいよ顕著なものとなった。
「…んぁ……ちょ……!ミホ……」
腕で押して引き離そうとするが無駄なこと、引く気などさらさらない。
「去年のようにはいかん、覚悟を決めろ」 「だってここテーブル――」 「ディナーはテーブルで食べるものだ」
これ以上不満を聴いてやる気はない。 ナマエの苦情をバッサリと切り捨てて、再びくちびるを塞いだ。 まだ諦めずに抵抗の呪詛を唱えているくちびるを舌で割って、捕らえられまいと逃げを打つナマエの舌を絡めとる。 そのまま口吻けを深いものにしていくと、呪詛に甘いものが混ざり始めた。
少々の抵抗は毎度のこと、ゆっくりと丹念に舌を弄びくちびるに舌を這わせれば抗い切れなくなることも承知の上。
「……ん…ぁ」
捕らえたナマエの舌をゆるゆると焦らす様に弄ぶと、ナマエの肩が震える。 体を抱く腕に力を込め、イヤだと呟くナマエの言葉ごと絡め捕った。 ナマエの抵抗力は思考力もろとも温度の高いミホークの舌に削がれ、奪われる。 逃げようと藻掻いても易々と捕らえられて、舌の表面を甘く舐め上げられると、びくりと体が揺れた。 それを見逃して貰える訳も無く、更に追い込む様に嬲られる。 ミホークの口元が僅かに笑んでいるのが分かった。 切れ切れの抵抗の声は飲み込まれ、体を後ろに引けば肩を抱いた手が仰いだ首筋を撫でる。 すいと指先が耳の後ろを掠め、こらえ切れずに声を上げた。
「……っふ…ぁ!」 「逃すわけなかろう」
至近距離で低く囁く声に過敏になり始めた表皮が粟立つ。 そんなこともお見通しだと、ミホークは仮面の下で笑っている。 互いの唾液で濡れたくちびるを舌が這った。 口の端に口吻けを落とされ、そのまま仰いだ首筋にミホークのくちびるが移動して行くが、ナマエはどうする事も出来ない。
「ひ……ぁ…っ」
軽くくちびるが触れ、舌が触れ、咥内に首の柔らかい皮膚が含まれる。 甘い痺れはきつく皮膚を吸われた熱でひと際大きな声となり、乾いた部屋の空気を震わせた。
「どうした?抵抗はもう終わりか」
首筋に顔を埋めたままミホークは笑う。 そのまま僅かに顔を上げると、芝居がかった仕草で仮面を外し、傍らに置いた。 遮るものの無くなった目が、射抜く様にこちらを見ている。 ゆっくりと肌蹴られていく胸元に、ミホークのくちびるが落ちた。
「……やぁ…っ!」
肌蹴たシャツから掴み出した胸を、手のひらで嬲りながら舌を這わせる。 ぞろりと尖端まで舐め上げ、舌先で押し潰すように転がすと、ナマエの体が素直に反応した。 舌の動きに合わせて吐息が漏れ、肩が震える。 普段が少々粗暴なだけに、こうして従順に快楽に従うナマエが愛おしくてならず、ミホークは唾液に濡れた尖端を口に含んだ。
「んぅ……ぅぅっ!」
含んだ尖端を弄び、吸い上げる。 ナマエの嬌声が大きくなる。 柔らかい乳房の形が変わる程に吸い上げ離すと、尖端を囲む桃色の肉が腫れたように熱を持ち、膨らんだ。
「良い眺めだぞ、ナマエ」
「……ん…ぁ…に、言って…」
桃色の肉にぬらぬらと舌を這わせ、剣豪は満足げに笑う。 小ぶりの胸であるから尚の事、膨らんだ尖端が酷く卑猥だ。 ナマエはいつもの調子で言葉を紡ごうとするが、熱に浮かされた切れ切れの悪態はミホークを余計に煽る。
「おれに吸われた乳首がいやらしく腫れている、と言っている」 「……っ!ば…!っひ…やぁっ……」
あからさまなミホークの言葉に、「馬鹿!」と罵ろうとした言葉すら嬌声に変えられる。 嗜虐心を隠そうともしない剣豪は、音を立てて吸い上げ、繰り返し尖端を嬲りながら器用にナマエの下履きを緩め、抜き取った。
「や……ちょっと待っ…!」
テーブル上で下半身を露にされたナマエは、狼狽えながら訴えるが、 ミホークはそれを無視して、ぐ、と足を抱えて押し付ける。 剣豪の前に曝された秘部はぬるりと湿った光を放っている。
「濡れておるな」 「言うなバカ!」
体を捻って逃げを打つナマエを易々と押さえ込み、ミホークは笑う。 ようやく放たれたナマエの罵声にも動じる事なく、じたばたともがく太腿に舌を這わせた。
「んぁ……や……こんな処で…止め…!」 「止めんぞ、メインの前は前菜とスープだと相場が決まっている」
卑猥な台詞を堂々と言ってのけたミホークは、ナマエの下肢に顔を埋めた。 舌が濡れた粘膜を舐め上げる。
「…ヤ……んぅっ……!ぁ…っあぁあっ」
熱を持った粘膜の奥に舌を差し込み、溢れた滑りを吸い上げる。 そのままゆるゆると奥を嬲って舌を離した。
「そんなに溢れさせては飲み切れんではないか」
死んでしまえ!と心の中で叫ぶも、与えられる快楽に言葉が出ない。 顔を上げたミホークはこの上なくいやらしい顔でこちらを伺ってる。
「もっと啜って欲しいか」 「ひゃ、ぁっ……や、あっ…!」
音を響かせて啜られ、ナマエの体が大きく戦慄く。 ぴちゃりと粘膜を食む音が続き、舌先がぬるりと粘膜を上に移動する。
「そ…こは……待っ――!――んぁあっ…!」」
敏感な尖りに舌先が触れた。 僅かに触れただけでナマエの体は弾けるように痙攣する。 充血した尖りの根元を舌先がくすぐり、ざらつく舌で舐め上げられる。 舌が這う度びくびくと痙攣するナマエの下肢を押さえつけ、ミホークは煽るようにそこを弄ぶ。
「や……も……ヤぁっ……!」
尖端ごと粘膜を吸い上げられた。 ナマエは大きく痙攣し、ぐったりと痙攣を繰り返しながら弛緩した。
「果てたか」
粘膜を嬲る舌を休ませる事なくミホークが呟く。 達したばかりの粘膜を休む事なく弄ばれ、ナマエは悲鳴を上げる。
「ヤ……も……舐めちゃ……」 「――このままもう一度イくか?それともおれのを欲するか、どうする、ナマエ?」
溢れた滑りを舌で掬いながらミホークが問う。 以前意地を張っていらないと言ったばかりに、気を失うまで粘膜を嬲られた記憶が甦る。
「……ミ…ホークの……挿れて」 「――素直になったな」
ナマエの応えに満足げに笑んで、剣豪は下履きを緩める。 ナマエの下肢にミホークの屹立が宛てがわれた。
「……っぅ…!」
溢れたナマエの滑りを掬うようにミホークの屹立が粘膜を擦り上げた。 粘着質な音を立て、焼けるような熱を孕んだそれが焦らすように表面を行き来する。
「おれの目を見ろ」
ミホークは揺れるナマエの視線を自らに向かせると、今度こそ滑る切先で熱を割る。 指で慣らす事をしていないナマエの粘膜がミホークの尖端を締め付けた。
「挿れるぞ」
じわりと体重を乗せると、狭い坑内が屹立を拒むように締め付ける。 内側に侵入してくる熱にナマエが喘いだ。
「――っん……ぅぁあっ」
ナマエの目から視線を少しも動かさずに、ミホークは少しずつその内側に侵入してゆく。 体の芯を焼くように入り込んでくる熱に、達したばかりのナマエの体が悲鳴を上げた。 じりじりと入り込む感覚だけで、神経も体も既に焼き切られそうである。
「や……ヤぁ…ミホーク……!」
時間をかけて慣れない体が貫かれる。 ミホークの視線が戦慄くナマエを見据え、追いつめた。
「ん…んぅぅうっ…!」
屹立が最深を貫いた。 狭い入り口が押し拡げられ、ひくりと震える。
「――ほう、漸くおれを根元まで受入れたか」
これまで幾度試しても入り切らなかった屹立が全てナマエの中に収まった事に、ミホークは静かに感嘆した。 開いたナマエの下肢に、ミホークの腰がぴたりと重なる。
「初めて根元まで咥えた感想はどうだ、ナマエ」 「……っぁ…馬…鹿…しね」 「――減らず口は相変わらずか」
あからさまな問いに悪態をつくナマエに、にやりと剣豪が笑う。
「もう一度始めから試してみるか…」 「…っひ…や……!」
戦慄くナマエの体を無視してずるりと屹立が引き抜かれる。 入り口で一度動きを止めたそれは、今度こそ一気に最深を突き上げた。
「んぁあああっ…!!」 「どうした、減らず口はおしまいか?」
そのまま突き上げるように抽送を開始したミホークが、快楽に言葉の形を成せなくなったナマエを激しく追い立てる。
「っぁ……ひゃ……や‥ぁっ…!」 「そんなに締め上げてはあっという間にぬしが果ててしまうぞ」
熱をきつく締め付けるナマエを余裕の体で嬲りながら、ミホークは更に言葉でナマエを煽った。 ミホークの言葉の通り、ナマエは体の奥まで突き上げてくる屹立の質量に易々と陥落する。
「……っぁ……も……ヤ…あ……!」 「――もう限界か?おれをいかせぬと終わらんぞ」 「……んんぅ……っ!」
ミホークを咥えた粘膜がびくりと大きく戦慄く。 痙攣する内部を変わらぬ抽送で突き上げられて、果てた後もナマエは快楽の波を納める事も出来ず、そのまま絶頂の先に追い込まれた。
テーブルの上でぐったりと弛緩するナマエの頬を手のひらで撫でながら、 ミホークは上気するくちびるに口吻けをおとし、声も出ない咥内をゆるゆると舌で愛撫する。 止む事なくナマエを追い込み続けてなお、剣豪は涼しい顔をしている。 忌々しい事この上ないが、今は悪態のひとつも吐けない。
「食事をとるテーブルで抱かれるのも悪くはなかろう」
平然とそう宣い、剣豪は更に口吻ける。 Trickもtreatも存分に楽しんだミホークは珍しく上機嫌な顔を見せ、ついとナマエの体を抱き上げた。
「さすがに背中も痛いだろう、安心してよいぞ、続きは柔らかいベッドの上だ」
剣豪の声が絶望的に明るく響いた。 どうやら存分に楽しむのはこれからのつもりらしい。
「なに、気にするな。明日動けなくなっても食事くらいおれが作って喰わせてやろう」
動けなくなるまでヤるつもりなのか…! これから始まる饗宴を思ってナマエは絶望する。
視界の隅で 逆さになったカボチャが笑っていた。
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