中学三年生の一年間はしんどい。高校受験に備えて勉強をし続けなければいけないから。
 毎日、学校の休み時間には勉強をしている。10分休みも、昼休みも、ずっと。
 最近、友達とまともに喋った記憶がない。学校が終われば塾に通って、授業を受けては知識を詰め込み、それが終わるたびにテスト。休み時間にコンビニで買ったおにぎり片手にテスト直しをして、また次の授業。授業が終わった後も、夜遅くまで塾に残って自習。
 家に帰るころにはクタクタで、倒れるように眠る日々。
 楽しみなことなんて何一つない。

 志望校の被っている子たちはみんなライバルだ。お母さんは心配なのか、「どうなの?いけそう?」とまるで決まり文句みたいに毎日聞いてくる。
 学校も、塾も、家さえも。息が詰まる。

 今日のテストは、あまり良い点がとれなかった。いや、今日に限らず昨日も一昨日も、ここのところテストの点が良くない。居残って勉強しても、全然頭に入った気がしない。
 寝不足とコンビニ飯のせいで、体の調子は最悪だ。口内炎と額のニキビが痛いし、体重だって増えた。
 明日提出の学校の宿題もまだ終わっていないことに気づいて、どうしようもなくため息が漏れた。

 賢くなるために通っているはずなのに、馬鹿になりそうだ。

 トボトボと肩を落としながら家路を歩く。暑過ぎるほど暖房が効いていた塾とは違い、外は寒い。マフラーをきゅっと後ろで結んで、首の隙間をなくす。はあ、と息を吐くたび、白いモヤが舞った。手袋の中まで冷える。
 もう夜中の十一時になろうとしている。どの店もとっくに閉まっていて、少し先にあるコンビニの明かりだけが煌々と光っていた。

「あれ、苗字サン。どーした?」

 そんな時間帯だというのに、クラスメイトに出会った。

「空閑くんこそ」

 日本人離れした白い髪に赤い瞳。小学生みたいな小さな身体。季節外れの転校生が、そこにいた。
 この寒さだというのに、彼はコートも羽織っていない。

「おれ?コンビニ行こうと思って」
「こんな時間に?」
「腹減ったし。苗字サンこそ、遅い時間に何してんだ?」
「私は塾の帰り」
「こんな時間までベンキョー?偉いな」

 同じ受験生だというのに、他人事みたい。

「全然、そんなことないよ……空閑くんこそ、勉強……」

 そう思ったが、彼と私は同じ立場ではないことを思い出した。空閑くんはボーダー隊員だ。
 私と違い、進路は確定されている。無条件でボーダー提携の高校へ進学出来るのだから。

「おれはベンキョーだめだな。みんなに教えてもらっても全然わからん」

 並んで歩きだした空閑くんはどこか楽しげに鼻歌を歌う。「それ、なんの歌?」「さあ?適当だよ」能天気に笑う空閑くんが、気楽で良いな、と思う。羨ましいとも。
 もう間近に迫った受験のプレッシャーを彼は感じずにいられるのだから。

「そんな薄着で寒くない?」
「いやはや、まったく寒くありませんな」
「寒さに強いんだね」
「そんなところ」

 コンビニまでの道すがら、特に盛り上がるわけでもシーンとするわけでもなく、私たちの会話は続いていく。別に私が話し上手なわけでも、空閑くんが話し上手なわけでもないと思う。だけど会話が気まずくなって途切れることはなかった。

「チキンとプリンを買おうと思ってるんだ」

 空閑くんは不思議な人だ。その見た目も、ひょうひょうとした中身も。
 特に目立って何かしようとするタイプではなさそうなのに、いつのまにかするりとクラスに溶け込んでいる。
 彼はきっと、要領の良い人なのだ。
 勉強だけしか出来ない私とは違う。

 気付けば、空閑くんは道路側を歩いてくれていた。こんな小さな体のくせに、一丁前に男の子なんだ。なんだか女の子扱いされているのが気恥ずかしくて、それと同時に嬉しくて、思わず頬が緩むのをマフラーで隠した。

「じゃあ、また明日」

 眩しいくらいに明かりを照らすコンビニに向かう空閑くんへ手を振った。
 ここから家まであと十分はかかる。自転車でこれば良かったと今更ながら思った。
 そうだ、家に帰ったら寝る前に宿題をしなければ。ああ、面倒だ。
 帰ったらお母さんはまた聞いてくるだろう、「大丈夫なの?」って。テストの点数、言いたくない。
 一人になればまたどんよりした気持ちが湧いてくる。

「苗字サンも行こーよ」

 そんなとき、空閑くんが私の手首を掴んでいた。

「え?あー……ごめん。あんまり寄り道しちゃダメだから」
「なんで?」
「危ない……から?かな」
「じゃあおれが家まで送ってあげる。それならいいだろ」

 空閑くんはにっと笑うと、有無を言わせず私の手を引いた。
 無理やり動かされる体で、後ろ髪を引かれるように振り返って、追いかけてくる影を見る。実際の身長よりも伸びた影は、私たちの身長差をより強調させる。まるで大人と子供みたいだ。
 これじゃあ、送ってくれるとは言うものの、私より小さい空閑くんの方が危ないだろうに。それに、塾帰りの私はともかく、空閑くんは補導されるかもしれない。でも、きっと彼はうまく逃げるのだろう。

「空閑くん。親に言うから、手、離して」
「ん?ああ」

 まあ少しくらいはいいか。気分転換になる。
 コートのポケットに入れた携帯から、帰るのが少し遅れる、と親に連絡を入れた。あまり遅くならないように、とすぐに返事がきて、覗き込むように見ていた空閑くんに頷いてみせた。「ちょっとだけならいいって」

 入店して早々、やっぱり帰りたくなった。どこもかしこも美味しそうなものがたくさん並んでいるのだから。
 お腹は空いている。だって、おにぎりしかまともなものを食べていないのだ。だけど、女子として今の時間の食事はまずい。それに、ニキビも口内炎もこれ以上増やしたくないのだ。
 チキンとプリンを買うと言っていたのに、スナック菓子を持った空閑くんは、「苗字サンは買わないのか?」なんて可愛らしく小首を傾げている。

「……お腹、すいてないから」

 ぐう、と鳴りそうなお腹をさする。
 それでなにを勘違いしたのか空閑くんは、「おれが奢ってあげるから好きなの選びなよ」と笑った。

「いや、その……」
「おれ、結構金持ちだよ」

 ボーダー隊員は、結構儲かるらしい。でも、今はその優しさが痛い。

「あーうん……その……」
「どーした?」
「……太るし」
「ふむ、ダイエットってやつですな」

 その通りです、とうな垂れた瞬間、気が緩んでぐう、とお腹が鳴った。しまった、恥ずかしい。思わず手で顔を覆う。
 しばしの沈黙のあと、指の隙間から見える空閑くんがニヤリと笑った。

「腹の虫は正直ですな」
「うう……」

 結局、春雨スープを選ぶと、「飲み物は何にする?」と自然な流れで野菜ジュースまで奢ってもらってしまった。この商品チョイスは、こんな時間に食べてしまうことへのせめてもの抵抗だ。

「そんなつもりなかったのに、買ってもらってしまった……ごめん」
「なんで?気にしなくていいよ。おれが誘ったんだし」

 どこで食べようか、と相談する前に空閑くんは駐車場前のベンチに座った。ん、と隣にくるよう促され、腰を下ろした。手袋を取ってお湯を入れた春雨スープで手を温める私と、早速チキンを食べる空閑くん。

「うー……でもなあ、なんか、悪いし」

 そう、と興味なさげにあいづちをうつと、空閑くんはまたチキンを食べ始め、私が春雨スープを食べようとしたときにはもう食べ終わってしまっていた。
 空閑くんは、「んー」と曖昧な音を出しては、チキンの包装紙をクシャクシャに丸めてポンと上に放り投げてはキャッチすることを繰り返す。やがて、何か思いついたようにパッと顔を輝かせた。

「そうだ!苗字サン、明日の宿題終わった?」
「あー……ごめん、まだなの。終わってたらお礼に見せてあげれたんだけど……」
「じゃあ、明日の朝学校で一緒にやろうよ。おれ、ベンキョー得意じゃないし。苗字サン教えてくれ」

 名案だな、と空閑くんは一人頷く。

「そんなことでいいの?」
「うん、じゅーぶん」

 人に教えられほど頭がいいわけではないけれど、学校の宿題くらいだったら多分大丈夫だ。「いいよ。私でよければ」約束をすれば、空閑くんは少し嬉しそうに笑った。見た目も相まって、小さな子みたいで可愛い。
 それから、空閑くんは、「しょっぱいものの次は甘いものがうまい」と言ってプリンを食べ始めた。冬のプリンって結構体が冷えるのによく外で食べれるな、と妙に感心しながら見ていると、「欲しい?」とスプーンを差し出されてしまい慌てて首を振った。
 私は私で、ふうふうと息を吐いて冷ましながら春雨スープを飲む。和風だしが身に染みて、より一層美味しく感じた。こくり、こくり、と飲んでいると、名残惜しそうにスプーンを咥えた空閑くんがこっちを見ている。プリンは早くも彼の胃の中へと消えたみたいだ。

「それ、そんなにうまいのか?」

 それ、と指差された春雨スープ。

「美味しいよ。飲む?」
「いいのか?」
「うん。元はといえば、空閑くんのものみたいなもんだし」
「では、遠慮なく」

 はい、とお箸と一緒に渡せば、空閑くんはそのままグーで掴んだ。そして何度か格闘してお箸を持つとーーそれでもきちんと持てたとは言えなかったがーー、なんとか春雨を持ち上げて食べた。

「これは……うまい!」
「でしょ?」

 彼はお気に召したようで、ずず、と音を立ててスープも飲んでいく。
 手元が寂しくなった私は野菜ジュースを飲もうか迷ったが、寒いのでやめた。どうせならホットレモンを買って貰えば良かった。手を温めていたスープが無くなったのでかじかんできた手をこすり合せる。

「どうもありがとう。次はおれもこれを買おうかな」
「でも、お腹にはたまらないけどね」
「はっ……!これも、ダイエットの一環だったのか!」
「女子だからね」
「女子だからか」

 二人で笑って、私は返ってきた春雨スープに口付ける。少しぬるくなったけれど、体を温めるにはじゅうぶんな温度だ。
 私がスープを飲む間に、空閑くんが今度はスナック菓子を開けた。サクサクと小気味良い音を立てて食べる姿に、こんな時間なのにまだ食べるのか、とまたもや感心した。この姿だけ見たら、本当に同じ歳とは思えない。
 そんなことを考えていれば、空閑くんがスナック菓子片手にこっちを見た。「どうしたの?」問いかけると、それ、とまた春雨スープを指差す。

「間接キスだ」

 春雨スープ。間接キス。
 その二つを頭の中で並べるとすぐに合点がいって、思わず唇を手で隠した。恥ずかしい。頬が、スープの温度よりもずっと熱い気がした。
 視線をどこにやればいいのかわからなくて、春雨スープを見て、それからそっと空閑くんを見た。悔しいことに、彼は面白そうに笑っている。

「苗字サン、かわいいな」
「……わざわざそういうの、言わないで」

 からかいを含んだような、その体には不釣り合いな笑い方。さっきまで、小学生みたいだったくせに。急に異性を意識させないで欲しい。
 結局、熱を冷ますために野菜ジュースの封を開けた。すっと喉を通る冷たいジュースは、いつもよりトマトの酸味がより強く感じた。

「なあ、苗字サン」
「……なに?」

 今度はなにを言われるのだ、と身構える。今の今、空閑くんと目を合わせるのは恥ずかしい。
 しかし、空閑くんは、「あっち見てみて」とコンビニ前の道を歩く男の二人組みに視線を向けた。男たちをよく見ると、ガタイもよく、制服姿だ。

「や、やばいよ。警察じゃん!」
「実はさっきから気になってたんだ」

 気付いていたなら、もっと早く言って欲しい。ばっと携帯を見れば、今日という日を越えようとしていた。こんな時間とあれば、塾帰りの言い訳は通用しなさそうだ。補導は避けたい。学校に連絡されるのも、親に連絡されるのも困る。
 いそいそとゴミ捨てをして、バレないうちに早くここを去ろうと警察の方を今一度確認すると、目があった。「君たち!こんな時間に何してる」なんてタイミングだ。
 ずんずんと近づいてくる警察たちに、「あのう、じゅっ、塾の、帰りで……」としどろもどろになりながら説明をする私の傍らで、空閑くんはこともなげに言ってのけた。

「よし、苗字サン。逃げよう」

 空閑くんは私に驚く暇も与えず、私の手を掴むとそのまま警察の脇を駆け抜けた。「あ!こら、待ちなさい!」ワンテンポ遅れて警察が私たちに手を伸ばすが、もう遅い。なにせ、空閑くんは足が速い。その彼に引っ張られた私も、いつもよりもだいぶ速い。
 ぐんぐんと風を切って走る空閑くんの後ろ姿は、無邪気な子供みたいだ。白い髪が暗闇の中に浮かび上がって、綿菓子にふうっと息を吹きかけたように揺れていた。

「く、空閑くんッ!ストップ!」
「ん?ああ、すまんすまん」

 私の声を合図に、空閑くんは立ち止まって辺りを見渡した。警察は私たちを捕まえることを諦めたようで、誰かが追いかけてくる気配はなかった。
 確かにさっき、空閑くんならば補導されそうになってもうまく逃げれるだろう、と思った。だけど、まさかそれに私が含まれるなんて考えもしなかった。
 勉強ばかりでまともに運動していないせいか、私の体はすぐに根をあげた。呼吸をすると肺が痛い。コートの下はじんわりと汗が滲み、マフラーがかゆくて首から解いた。

「だいじょうぶ?」

 浅い呼吸を繰り返し、ようやく落ち着いてきた私とは対照的に、空閑くんは涼しい顔をして息一つ乱さない。私の手を掴んだままの手は、ひやりと冷たい。汗ばんだ私の手のひらとは大違いだ。

「ちょっと待ってね……うん、もう大丈夫」
「このまま送る。家どっち?」
「近いから、いいよ」
「だめ。行こう」

 空閑くんはそう言って繋いだままの手を引いて歩き出した。家の場所もわからないのに。このままだと、手綱がわりにされている手だって離してくれなさそうだ。
 適当に進んで行く空閑くんに、とうとう私は折れた。

「空閑くん……私の家、あっち」
「なんと!逆方向に進んでいたのか」

 ニホンの道路はどこも似たり寄ったりでむつかしい、と帰国子女らしい愚痴をこぼして、空閑くんは私の指示した道を行く。冷たい手をそのままに。

「空閑くん」
「ん?どーしたんだ?」
「あの、手……」
「手?」

 空閑くんは、ああ、と頷き納得したかと思えば、少し力を入れて握り直した。「おれの手、冷たいからあっためてよ」とまたさっきの不釣り合いな笑みを浮かべて。
 さっきまでの成り行きで繋いだものじゃなくて、この手は意志を持って繋がれている。離して欲しいだなんて言えなくなってしまった。
 こんな夜中なら知り合いはみんな眠っているはず。誰にも見られていない。それに、空閑くんは私よりうんと小さい。小学生みたいな子なのだ。こんなこと、なんともない。
 そう自分に言い聞かせても、体温は上がっていく。
 だって、私は手袋を持っているのに。寒いなら、貸してあげるのに。その一言が言えない。
 色づく頬は、私よりもよっぽど正直者だ。前を歩く空閑くんはきっと笑っているだろう、悔しい。

 道が二手に分かれるたびに、なぜか自信満々で逆方向へ進もうとする空閑くんを後ろからフォローしたり、繋がれた手を今度は私が引いて歩いたせいで、家まではそう簡単にたどり着かなかった。ようやく玄関前に着いた頃には、一時になろうとしていた。
 うんと遅くなってしまった帰宅。携帯に何度も着信があったことに今更気づいた。カーテンの隙間から漏れたリビングの明かりは、お母さんがまだ起きているからだ。きっとしこたま怒られるのだろうが、こればかりは怒られても仕方がない。

「家、ここだから。本当に、いろいろとありがとう」

 お母さんに気づかれないように塀に隠れながら小さな声でそう言うと、空閑くんはニッと笑うと、「どういたしまして」と私に合わせて小さく答えた。
 そうして離れていく手は、最後まで冷たかった。
 じゃあ、と帰ろうとする空閑くんをそのまま送り出すのは忍びなかった。

「ま、待って。これ、女物で悪いけど……」

 さっきは言い出せなかった手袋。
 寒さに強い、と言ってその言葉通り全く寒そうな素振りを見せなかった空閑くんには必要ないものかもしれない。だけど、彼の手は本当に冷たいのだ。手を繋ぐことがなくなった今、その手を温める方法はこれくらいしか思いつかない。

「おれがいま借りたら、苗字サン明日の朝寒いだろ」
「い、家にもう一個あるから、だいじょぶです」
「なんで敬語?」
「な、なんででしょう?」

 手袋を貸すだけなのに、なぜかドギマギした。変な感じだ。空閑くんはまた笑って、「そういうとこ、いいな」と手袋をはめた。そう大きくない彼の手を納めるのには、私の手袋でじゅうぶんだった。
 それにしても、いいな、とは。思わぬパンチを食らう気がして、意味を問うことはしなかった。またもや紅潮していく頬は、答えを聞かなくてもなんとなくわかってしまったようだけれど。

「じゃあ、今度こそ帰るな」
「う、うん。引き留めてごめん。気をつけてね。おやすみ」
「おやすみ」

 寒いから早く中に入りなよ、と言って空閑くんは私に向かって手を振って、それから前を見て歩き出した。綿菓子のような髪がふわふわと闇夜に舞う。私は彼の後ろ姿が見えなくなるまで見送ろうと思った。
 女物の手袋は空閑くんの子どもっぽい可愛さをさらに引き立てているのに、私はもう彼を小学生みたいだなんて思えなくなってしまっていた。
 改めて明日会うのが恥ずかしい。でも、会いたくないわけじゃない。朝の教室でどんな会話が生まれるのか、楽しみな気持ちもある。

「それより、早起きできるかな……」

 空閑くんの姿がもう見えなくなろうとしているとき、自分の独り言によって、は、と気付いた。明日の、正確には今日の。集合時間を決めるのを忘れていたのだ。

「明日!何時!」

 慌てて叫んだ。閑静な住宅街に、私の声だけが響き渡った。綿菓子が振り返る。

「……誰もいない時間!」

 返事をした空閑くんの大きな声は弾んでいて、きっとまた笑っているのだろうと思う。

 私の後ろでは、さっきの声を聞きつけたお母さんがバタバタと廊下を走る足音が響いてきた。あと数秒もすれば、鍵を開ける音がして、「近所迷惑でしょう!」「何時だと思っているの!」「こんなに遅いなんて!」というお説教が始まるのだろう。
 いつもなら気が滅入ってしまうお説教も、今なら適当に聞き流せる気がした。
 だって朝はもうすぐそこだ。久しぶりの楽しみがやってくる。

2018.3.9

  back
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -