小説 | ナノ

不恰好な愛を

真斗誕生日話

恰好な愛を



もうじき日が変わるか変わらないかの頃になって寝室へと向かおうとした瞬間、玄関からガチャっバタンと音がして、何事かと慌てて音の方向へ走った。


「あ、いた…聖川…」


玄関にいたのはレンだった。息を切らせ肩を大袈裟に上下させながら此方を見て笑っている。


「人様の部屋に勝手に上がり込んできて、いたも何もなかろうが」


そう憤慨したが、そういえばこの部屋の合鍵を渡したのは他でもない自分だったと気付いたため、それ以上言及するのは止した。
レンはレンで小言など耳にせず、はいはいゴメンねと平謝りしながらリビングへと直行する。
ここまで強引なら無理に追い出す方が疲れるだろうと考え、靴を揃えてから後ろをゆっくりついていった。


「そういえば、今日は聖川の誕生日だったねぇ」


リビングに戻るとレンはソファに横になり、机に置いてあった手紙を読んでいた。
奪い取れば「あっ」と声を上げたが、取り返そうとする様子はない。


「どうせ妹ちゃんにしか祝って貰えなかったんだろ?可哀想な真斗くん」


代わりに、今は自分の手元にある手紙を見てそう言ってくる。
雪だるま柄の便箋に『おにいちゃまおたんじょうびおめでとう』と拙い字で書かれたこれは、確かに妹の真衣から送られたものだ。
そして今日は12月29日。友人は皆アイドルという仕事ゆえに年末は忙しく、ファンを除けば今年は知人からはプレゼントを一つも貰っていない。だが、


「生憎一十木や四ノ宮、来栖に一ノ瀬からはメールなり電話なりで祝って貰っている」


各々仕事で忙しいとは言えど、気持ちだけでもと言葉は受け取っていた。


「へぇ、皆忙しいのによく…」

「あぁ、貴様とは違って、な」


別にレンに祝って貰う義理もないが、多少の皮肉を込めて返す。
するとレンは一瞬驚いた顔をしたあと、にやりと気味の悪い笑みを浮かべた。


「…何だ神宮寺」

「ふ、くくっ…いや、聖川は聖川だなっ、てね……っ」


終いには声を出して笑うものだから余計腹が立つ。


「聖川はもう少しオレを信用しても良いんじゃないかねぇ」


一頻り笑ったあと、はあ、と溜め息を吐いたレンは少し困ったように外方を向いて呟く。
言葉の意味がわからず、訝んでいると何か此方に投げ付けてきた。
急なことに取り損ね、慌てて拾う。
それは細長い箱だった。


「……これは」

「開けたければ勝手に開ければ良い。捨てたって構わないよ」


此方には顔を向けず不貞腐れたままなので言葉通り箱を開けると、中には筆が一本。


「前に欲しがっていたから折角買ってきてやったっていうのに、渡すタイミングを見失う、なんて…」


自嘲気味に言うレンは視線に気付くと顔を両腕で隠したが、隙間から見える耳は真っ赤で、その姿がとても可愛らしいと思ってしまった。


「素直じゃないな…愛いやつめ」

「っ言うなよ馬鹿、鈍感、ムードの一つも…」


悪態を吐く口を遮るように傍に寄って抱き締める。


「ありがとう、…レン」


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……何か色々失敗ですね。書きたいことが迷子になったまま帰ってきてくれなかったので強制終了。
レンマサレン良いよね!と開き直ります。




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