ゲートが開かれ、多くのネイバーが三門市に現れたが、 怪我人は数人で軽症だったので、市民はすぐに安心し、平穏な日が訪れた。 「昨日、すごかったね。」 「なんかついに三門市が侵略されちゃうかと思った。」 「俺近くでネイバー見たの初めてだった。」 「まじで?え、どうだった?」 「あれ目の前にすると体動けねぇよ…。まじボーダー隊員ってすげぇな。」 「諏訪や風間とかってボーダー隊員なんだろ?あいつら、よくやるな。」 「私、ボーダーの人に助けられちゃった!」 「え、ほんと!?どうだった?」 「凄いかっこよかった!あの、よくテレビに出てる嵐山さん!」 「うそ!いいなぁ!」 大学の構内はざわついていた。 皆、昨日の出来事についての話題で持ちきりだった。 「皆なんか興奮してない?」 友人の前田咲は皆の様子をキョロキョロ見回した。 「昨日、結構なネイバーが現れたもんね。」 「私たまたま昨日は三門にいなくてさ。テレビで見ただけだからなぁ。」 「私ネイバーに追いかけられた。」 「えっ!?」 咲は驚いた顔をしてみょうじを見た。 「ちょ、大丈夫だったの?」 「うん。ボーダーの人が助けてくれた。」 「ほんと…よかった。どう?かっこよかった?」 「うーん。凄かった。あ、大学で見たことある人だった。」 「何それ運命的!どういう人?」 「えーと、金髪で、タバコ吸ってて…あ。」 「え?」 みょうじは立ち止まった。 「いた。あの人だ。」 「え、うそ。って行くの!?」 みょうじは教室の前にいた煙草の人のところに向かっていった。 後ろで「待ってよ〜。」と咲の声がしたが無視した。 みょうじはズンズンと近づくと、煙草の人はみょうじに気づき、「あ。」と声を出した。 「昨日はありがとうございました!」 「まじで同じ大学だったのかよ。」 「おかげで助かりました。」 「あぁ。よかったな。」 「何、諏訪人気者じゃん。さすがボーダーの人間はちげぇわ。」 「珍しいな、お前にお礼言うやつなんて。」 「うるせぇな。一応頑張ってんだよ。」 「じゃあ真面目にレポート書けよ。」 「風間はちゃんとやってるだろ。」 「それを言うな。」 諏訪、っていう人なんだ。 みょうじは心の中で何回は唱えて頭に覚えさせた。 諏訪さんの友人二人は諏訪さんをからかっていた。 金髪で少しいかついけれど、友達は多いのかな? 「私、みょうじなまえと言います。」 「あぁ。」 「何しけた顔してんだよ。女子が名前教えてくれてるんだからもうちょっと嬉しそうな顔しろよ。」 「…俺は諏訪洸太郎。お前、何年?」 「2年です。」 「じゃあ1個下か。」 「諏訪さん、もっと年上かと思いました。」 「オイコラどういう意味だ。」 それから、大学で見かけるとみょうじは諏訪に話しかけた。 次第に連絡を取るようになり、少しずつ仲が良くなってきた。 ------------------ 「諏訪さん。」 「あ?」 「私、最初全然諏訪さんの名前覚えられなかったなぁ、って思い出して。」 「お前、俺の名前覚えるのに一ヶ月はかかっただろ。」 「うん。だって難しいんだもん。」 「は?簡単だろ。どこが難しいんだよ。」 「諏訪って漢字、画数多いじゃん。だから。」 「だから、じゃねぇよ。ひらがなで覚えればいいだろ。ひらがなだったら『すわ』って簡単だろ。」 「なんかどうしても漢字が邪魔して。」 「邪魔じゃねぇよ、アホ。」 こつん、と諏訪がみょうじの頭を小突くとニヘーと笑った。 「きめぇよ。」 「エヘヘヘヘ。」 「おら、お前の家着いたぞ。じゃあな。」 「うん。送ってくれてありがとうございました。」 「あぁ。」 「お仕事頑張ってねー。」 「ん。」 そう言い、諏訪はすぐにその場を立ち去った。 |