一日一悪
>>>Cell




「だから、どうして悪いことをするの。」


公衆の面前で、と云えばそうなのだろう。地獄の住人、罪人、魂…それらの行き交う中で何故、この私が捕まらなければならないのか。
そして今正に向けられているそのまるで子供を叱る親の如き質問の意味が、私には理解出来ずに居る。


「聞いてるのっ?」

「勿論だ。聞こえている。」

「反省してるのっ?」


する訳がない。
彼女が咎めて居るのは恐らく、私が昨日破壊した地獄の一角の事だろう。否…その前の血の池を干上がらせた事か、又は番人の一人を……、まぁ、どうでもいい。
私の意識が既に他へ移ったのを目敏く感知し、コラ!と君の口から更に一喝。往来で、叱られているこの私とただの女官1匹。チラチラと多くの視線がこちらに向いているのも気の所為ではないのだろう。
いい加減に飽きた。


「明日からは責め苦を1つ増やしますからね!」

「1ついいかな、お嬢さん。」

「何ですか?」

「これも、君の言う"悪いこと"に入るのかな?」


怪訝な顔をする彼女の細い手を掬い上げその掌に口吻けを。淡く啄めば途端に目を見開くのを指越しに捉えると次の瞬間には君は真っ赤になって固まった。


「では…失礼するよ。いつも仕事熱心な君は評価に値する。今後も頑張ってくれたまえ。」


踵を返した私の背に、君の声が返る事は無いが。飛翔する間際にまた何かきいきいと喚いて居た気もする。
さて、ヒマ潰しに今日は何をしようか。
そしてまた、その内に君は私を咎めに来るのだろう。
次に見せる顔は、恐らく見応えのある物だと期待しよう。



此処は余りにも退屈すぎて、
その程度しか愉しみを赦されないと云うのなら。






(嗚呼…それにしても、此処は本当に面白くつまらない。)




【一日一悪】


2015.02.20
Thanks clap!
.








.
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -