(幼少/♀)





白くて、白くて。

その髪は、まるで雪の様。



ふわふわ、ふわふわ。

お前は、まるで子犬の様。



可愛くて、可愛くて。

どうも、目が離せない。










子犬とお人形










「銀時!」

後ろから、高く可愛らしい声が呼ぶ。
呼ばれた少年は、仕方なさそうに振り返る。

はぁはぁ、と息を切らして、少女は少年の前で止まる。
息が整うと顔を上げ、少女は少年に笑い掛ける。

「銀時、どこに行くのだ?」

嬉しそうに、少女が尋ねる。

「どこだって、良いだろ。」

少女の笑顔から目を逸らし、少年が言う。

「俺も一緒に行く。」

大きな瞳をきらきらと輝かせて、少女が言う。

「好きにすれば。」

興味が無い様に、少年が言う。



二人並んで、歩き出す。

少女は、高い位置に結われた長い黒髪を揺らし、楽しそうに歩く。
少年は、四方に跳ねる銀髪を風になびかせて、つまらなそうに歩く。

少女は楽しそうに、少年に話し掛ける。
少年はつまらなさそうに、少女に相槌を打つ。

対称的な二人は、真っ直ぐに伸びる一本道を、ひたすらひたすら歩いて行った。










歩き続けて辿り着いたのは、ちょろちょろと流れる、細い小川。

少女は下駄を脱ぎ捨てて、素足を冷たい水に浸ける。
少年は傍らの草むらに座り込んで、その様を眺める。

「何でお前、いつも俺に付いて来んの?」

小川の中で跳ね回る少女に、少年が尋ねる。
少女は不思議そうに首を傾げた後、にっこりと笑う。

「銀時と居ると、楽しいから。」

少女は小川から離れ、少年の隣に座る。
少女の瞳が真っ直ぐに少年を見つめると、少年は居心地が悪そうに顔を背けた。

「銀時。」

少女が呼ぶ。

「何だよ?」

少年は振り返らない。

「髪、触っても良いか?」

少女が尋ねる。

「…好きにすれば。」

少年が答える。

少女が、少年の銀色の髪に触れる。
ふわふわとして、自然と指に絡んでくる感触が、心地良い。

少女がしばらく髪を撫でていると、突然少年が振り返る。
少年の頬は、少しだけ紅く染まっていた。

「銀時、顔が赤いぞ。」

少女が、心配そうに少年を見つめる。

「…何でもねェよ。」

少年は、気まずそうに目を逸らす。

「熱でもあるのか?」

少女が、少年の頬に手を伸ばす。
少女の手は、少年の手によって捕まえられる。

「銀時?」

少女は、不思議そうに少年を見る。
少年は、逸らしていた目を少女に向ける。

少年の瞳が、熱を含んだものだという事に、少女は気付いていただろうか。

少年の顔が近付く。

そのまま。

少女の頬に、少年は唇を押し当てた。

少年が唇を離す。
少女はきょとんとした顔で、少年を見る。

「何で、何も言わねぇの?」

少年が問う。

「よく分からない。けど…」

少女が、ほんのりと頬を染めた。

「少し、気持ち良かった。」

少女が俯く。
少年は少女の手を放し、両手でそっと顔を上げさせる。



幼い二人は、見つめ合う。



少年の顔が、また近付く。
少女が、その大きな瞳を閉じた。



幼い二人の唇が、重なった。










さらさら、さらさら。

長い黒髪が、風に揺れて。



可愛くて、可愛くて。

お前は、まるでお人形の様。



大好きで、大好きで。

絶対に、放したくない。










子犬とお人形は、互いの手と手を取り合って。
夕日に向かって、真っ直ぐに伸びた一本道を、ひたすらひたすら歩いて行った。




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