(攘夷/♀)





突然の出来事だった。

ある日の夜。小太郎は自室に居た。部屋に備え付けてあった小さな灯りを頼りに、書物に目を通していた。
もう寝ようかと思った時、何者かの気配を感じ、振り向く。
それが誰なのかは、分かっている。長年の付き合いだ。姿を見なくても、気配だけで。

ゆっくりと開かれた襖の向こうには、予想通り。月明かりに照らされた銀髪が見える。小太郎は、彼の名を呼ぼうとした。

瞬間。背中に衝撃が走る。

小太郎の瞳には、鋭く光る紅い瞳と、天井が映った。

「なァ、小太郎。」

紅い瞳が呼ぶ。

「銀時…?」

戸惑いを隠せず、目をぱちぱちと瞬かせている小太郎に、銀時は不適に笑う。乱暴に寝間着をはだけさせられて、小太郎は驚き、息を呑んだ。



「慰めてよ。」



ゆっくりと、小太郎の首筋に銀時の顔が埋まる。異様に優しいその動きが、小太郎には逆に恐ろしくて、自然と身体が強張った。

何故なら、小太郎が見た銀時の紅い瞳は、哀しみと狂気を帯びていたからだ。










慰めて










また一人、仲間が殺された。

ここは戦場だ、そんなのは当然だろう。などとは誰も言わない。そう簡単に慣れるものではない。否、慣れてはいけないのだ。

銀時は怒り狂った。己の眼前で仲間を斬った、天人達への殺意に身を任せ、力の続く限り刀を振り回した。

その時の銀時は、殆ど正気を失っていた。

斬るものが無くなり、銀時は我に返る。見回すと、周りには百を裕に越えるだろう、屍の山。

虚ろな瞳を、生き残った仲間達に向ける。彼らを見て、銀時の表情は凍りついた。
彼らは恐怖に身を震わせ、まるで化け物でも見るかの様な瞳で、銀時を見ていたのだ。

この日からだ。銀時が白夜叉と呼ばれ、敵はおろか、仲間からも恐れられる様になったのは。



***



「あっ…ぁ」

「みーんな俺の事、避けるんだぜ。」

ちゅ、と音を立てて、首筋に跡を残す。小太郎の身体が強張ったままなのをいい事に、その肌を隅々まで弄る。
左手でさらしを引きちぎり、控えめだが小さくはない乳房に触れる。もう片方の乳房の中心に唇を寄せ、吸い付くと、小太郎の身体が跳ねた。

「ふぁっ!あ…銀っ」

舌で乳首を転がされる度、身体がしなる。行き場に困っていた小太郎の手が、銀時の頭を掴んだ。

「それだけなら、まだいいけどよ。さっきさァ、俺聞いちまった。」

言って、再び乳首を味わう。乳房を揉んでいた左手は、もう片方の乳首を、爪で擽る様にひっかいた。



「俺、天人なんだって。」



銀時の予想外の言葉に、小太郎は胸への刺激を忘れ、目を見開く。それを見た銀時は、自嘲気味に笑った。

「それか、俺は本物の夜叉で、いつか本能に蝕まれちまって、仲間も、お前の事も殺すんだって。」

馬鹿みたいだろ、と銀時はまた笑う。
小太郎の頭は、銀時の言葉に混乱していた。



そんな筈、無いではないか。銀時ほど、仲間を想っている者は他に居ないのに。



言おうとした言葉は、下半身の違和感によって遮られる。小太郎が混乱している間に、銀時の手は胸から離れ、下着越しに秘部を撫でていた。

「こたろ、ここ濡れてるよ。」

「ぁ…やだっ…銀時…」

「何で?気持ちィから濡れてんだろ?」

ね、と呟いて、僅かに膨れた突起を下着越しにつつく。小太郎の身体はぴくっと跳ねた。

「アイツらにとって、俺はもう、白夜叉なんだよ。」

苦しげにそう言うと、銀時は小太郎の下着を乱暴に引きちぎった。小太郎は絶句する。

「坂田銀時じゃ、ねーんだよ。」

露わになったそこを舐めるように見る。小太郎は羞恥から、慌てて足を閉じようとした。が、その前に銀時の身体が間に割って入り、叶わなかった。

「っ…だめっ…見るな!」

「こんな可愛いの、隠すこたァねーだろ。」

銀時の指が、直に秘部に触れる。撫でられる度、小太郎の身体に甘い痺れが走った。

「はっ…あぁ…ぅ…」

「なァ、こたろ。」

指が一本、秘部に侵入する。何とも言えない異物感。

「俺が、本当に天人だったら、どうする?」

「そん…ぁっ」

指がまた一本増やされ、中でバラバラに動く。小さな痛みを感じ、小太郎は瞳を堅く閉じた。

「もし俺が本当に夜叉でも、お前、俺の事、銀時って呼んでくれる?」

「んっ…はぁ…」
じっくりと解されていくそこからは、痛みとは別の快感が生まれる。
銀時が、小太郎の頬に口付けて、耳元に唇を寄せた。

「なァ、こたろ…」

言った後、耳を甘噛みする。小太郎の身体がぞくっと震えた。

銀時は、己の頬に何かが触れる感覚に、顔を上げる。それが小太郎の手だと気付き、彼女の顔を見た。
小太郎の瞳は、まっすぐ銀時の紅い瞳を見つめていた。

「馬鹿者…」

小太郎の両腕が、銀時の首にふわりと回る。銀時は目を見開いた。

「何が天人だ。何が夜叉だ。そんな事…どうだって良いだろう。」

四方に散る銀髪を、小太郎は慈しむ様に撫でる。銀時の身体が少しだけ震えるのを感じたのは、気のせいでは無いだろう。先刻の彼とは打って変わり、小動物の様だ、と小太郎は思った。

「お前は誰よりも、仲間を想っているではないか。それに…」

銀時の腕が、小太郎の背に回る。
縋る様に、甘える様に。小太郎の肩口に、顔を埋めた。



「お前は、お前以外の何者でもない。俺の大好きな…坂田銀時だ。」



銀時がゆっくりと顔を上げる。瞳を見ようとしたら、唇に軽く口付けられた。



「…ありがと。」



再び、どちらからとも無く口付ける。先のものとは異なり、深く、深く。
互いに夢中で口内を弄り合い、求め合う。唇を放すと、名残を惜しむ様に、二人の間を銀糸が繋いでいた。

銀時は着物を脱ぎ捨て、小太郎を抱き締める。互いの、少し汗ばんだ素肌が触れ合う感覚に、気持ちが高ぶった。

「挿れるよ。」

銀時の言葉に、小太郎は声を出さずに、ただ頷いた。
秘部に銀時の自身が触れる。そのままゆっくりと、銀時が入ってきた。

「いっ…あぁ…ぎん、ときぃ…」

「キツ…こたろ、もうちょい力抜いて。」

力の抜き方なんて知るか。
そう言ってやりたかったが、小太郎にはそんな余裕は無かった。

狭いそこが広げられていく感覚に、小太郎の瞳から涙が零れた。
銀時が侵入を止め、涙を舐め取る。そのまま瞼に、頬に、そして唇に口付けた。
唇には何度も、啄む様に。
一瞬、小太郎の身体から力が抜けた。

その瞬間を逃さず、一気に突き上げた。

「んあぁ!いた…あぁ…」

「痛かった?ゴメンな。」

再び、小太郎の顔の至る所に口付ける。
労るように、何度も。

「でも、全部入ったよ。」

「はぁ…ぎんとき…」

銀時の手が接合部に触れる。小太郎の秘部は切れて、僅かに血が滲んでいた。
指に付いた血を舐めて、銀時は穏やかに小太郎を揺さぶる。

「あっ…ん…はぁ…」

律動の度、小太郎の口から熱い吐息が漏れ、銀時の耳に掛かる。それが堪らなく愛おしくて、銀時は小太郎をきつく抱き締めた。



少しずつ速くなる律動。
荒く、熱くなっていく呼吸。

互いの快感は昇り、昇っていく。
もう、限界は近い。

「あぁ!ぎんっ、もっ」

「…ん、いいよ。」

「は…あ、ああぁぁ!!」

一際強く突き上げると、小太郎の身体は大きくしなり、絶頂を迎えた。
その後の締め付けに銀時も限界を感じ、自身を抜こうとした。が、小太郎が力一杯銀時にしがみついていて叶わず、小太郎の中で達した。

射精した後の脱力感に肩で息をしながら、小太郎に目を向ける。彼女は意識を飛ばし、眠っていた。
自身を抜き、白濁で汚れた秘部を見る。

「子供、出来ちまうかもよ?」

まぁ、それもいいかも知れない。
考えながら気だるい身体を起こし、小太郎を抱きかかえ、風呂場に向かう。彼女と自分の身体を清めた後、銀時は小太郎を自室に連れて行った。

穏やかな寝息を立てる小太郎の身体を抱き締めて、眠った。










たとえ、皆から恐れられても。

たとえ、皆から天人と思われても。

たとえ、皆から白夜叉と呼ばれても。



お前が、俺を恐れないのなら。

お前が、俺を想っていてくれるのなら。

お前が、俺を銀時と呼んでくれるのなら。



俺は、明日からも生きていける。



愛してるよ、小太郎。



たとえ、戦争に負けてしまっても。

たとえ、世界が滅んでしまっても。



ずっと、ずっと、愛してる。



だから、お前は。



ずっと、俺の傍に居て。



ずっと俺の事、慰めて。




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