Loving Kiss*





「銀時、知っていたか?」

真面目な顔をして、桂が銀時に尋ねる。
知っていたか?

「…なんの話?」

銀時は訳が分からない、という顔をして、逆に聞き返した。
何の話?
桂は万事屋に居た。銀時に呼ばれた訳ではなかった。勝手に来て、勝手に居座っていた。

「…俺が、貴様のことを好きだということを、だ。」

相変わらず真面目な顔をして、再度尋ねてくる桂を、銀時は可笑しいと思った。
一体どんな告白の仕方だ、と。
銀時と桂は所謂“恋人”と言われるやつで。しかし付き合いたてのカップルというわけでもなく、今更好きだ愛してるだ毎日言い合うような仲でもなかった。それにもうお互いにそれ程若くはないのだ、今更告白など、可笑しくて仕方がなかった。

「そんなん百万回も聞いたし、とっくの昔に知ってるってーの。」

銀時が、鼻で笑うように答える。
分かっている、そんなこと。
充分過ぎるほどに。

「…そうか。」

「…なんで?」

銀時は訳が分からないままだった。
突然やって来て(それは割といつものことだが)、突然訳の分からない質問をしてきて、桂は一体どうしたというのだろうか。

「…別に。ただ、俺は銀時が好きだな、と思って。」

「…は、はぁ?」

何でもないように黙々と話す桂。

(この男には恥じらいとか羞恥とか無いのか?)

銀時は桂の代わりに恥ずかしくなってくる。
当たり前みたいな顔をして、はっきりと『銀時が好き』なんて言ってくる桂。
銀時は桂から顔を背けた。

(馬鹿だ、こいつ絶対馬鹿。)

今更そんなこと言い合う仲でも歳でもない。
銀時は咳払いをした。ごほん、と。あー、なんて照れ隠しで低く唸ったりしながら。

「?銀時?」

「お前馬鹿だろ絶対…。」

「?馬鹿じゃない桂だ。」

「あーもう、馬鹿だお前。馬鹿としか思えない。」

今度は桂の方が訳が分からない、と言ったような表情(かお)をした。少しだけ眉を寄せて、小首をかしげる。

「馬鹿じゃない。好きなものを好きと言ってなにが悪いんだ。」

か、とまた銀時の頬が微かに赤らむ。さすがの銀時も真面目に(しかも最近聞き慣れていない)告白を何度もされれば、恥ずかしさを感じてくる。
かといって、桂のように自身も桂に面と向かって告白は出来ない。銀時はそこまで出来た大人ではない。(もしここで銀時が坂本だったなら、もしくは近藤だったなら、言えたかもしれないが。)

「おま…、いきなり来て、いきなり告りやがって、」

「…ん?」

「…ぶぁか。」

「…なにがなんだかさっぱりだぞ、銀時。」

「俺もだ馬鹿。」

「…ぎ」

桂がまた何か言おうとして、銀時がその唇を塞ぐ。

「んく…」

「…。」

ぱ、と重なっていた唇が離れて。
銀時は手の甲で唇を拭うように押さえながら、桂から顔を逸らした。あー、とか言いながら。
桂はと言えば、頭にクエスチョンマークを浮かべて、また訳の分からない、といった顔をしている。
馬鹿馬鹿と言っていたくせに、一体何なのだ、と。

「べ、別にお前にちゅーしたくてしたんじゃないからな。」

「…?」

「黙らせないと、お前うっさいし、しつこいし。」

「…あぁ。」

「だからちゅーしただけで、別に深い意味はないからな。」

「…そうか。」

「そうだよ。」

「…銀時は、言葉以外で伝えるのが上手いんだな。」

「だから、違うってば!」

銀時はそう怒鳴って、桂の頭を叩いた。
そして小さく呟く。

「…俺も好きだ馬鹿。」

桂もとっくに知っていたことなので、小さく微笑んだだけで、何も言わなかった。

そして二人で目を瞑って、また唇を重ねた。





***





シン様のサイト「オーダーメイド」の25000番のキリ番リクエスト小説として頂きましたv
銀さん大好きなヅラとツンデレな銀さん、本当に素敵ですv
シン様、ありがとうございました!




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