銀時は眠ってしまった。
突然万事屋に呼ばれて、ソファーに座れと言われて、気が付いたらこの状態。俗に言う、膝枕というやつだ。
俺の膝の上で、彼は寝息を立てている。俺の右手は、彼のふわふわした銀髪を撫でる。俺の左手は、彼の手にちゃっかり握られている。

何て、可愛い。



昔から変わらぬこの男。
普段は素っ気なく、俺の手を払ってしまうくせに。突然、何の前触れも無く、彼はこうして甘えてくる。
彼の甘え方はとても分かりづらい。無理矢理呼んで、命令して。俺の身体に触れてくる。甘えたいと思っても、彼はそれを言葉には出来ないのだ。

幼少の頃、それこそ俺達と出会う前、彼は家族というものを知らなかった。甘え方など、教えてもらった事は一度も無いのだろう。
いや、甘え方というものは、教えてもらうものじゃない。誰かが近くに居て、自分を愛してくれさえすれば、自然と身に付いてしまうもの。

幼少の頃、彼の周りには誰も居なかったのだろうか。彼は誰にも愛されなかったのだろうか。彼の昔の話は滅多に聞かないから、よく分からない。
ただ少なくとも、彼は本当の孤独を知っている。そして、本当に大切なものを知っている。それだけは、確かなのだ。



俺の左手を握る銀時の手に、力が込められる。何かと思い彼の顔を見ると、先程まで閉じられていたはずの彼の瞳は開いていた。その射抜く様な視線に、俺は戸惑う。

何だ?今度は何をして欲しいんだ?言ってくれ、銀時。俺はお前の為なら何だってするから。

口にしても無駄なのは分かっている。彼は決して答える事は無いからだ。
目で訴えるだけでいい。俺の言いたい事を、彼はきっと分かっている。



俺の左手を握っていた銀時の手が、離れていく。温もりを失った事に、何だか寂しさを感じた。
だが、その手はすぐに、俺の頭の上に乗せられる。長く伸ばし続けた俺の髪を、とかすようにさらさらと撫でる。髪を伸ばしてきて良かったと、こういう時に強く思う。



髪を撫でていた手が止まる。もっと撫でていて貰いたかったので、少し残念に思った。
俺の後頭部に、銀時の手はそのまま残されている。離れていかないでと、願わずにはいられない。
そしてその手は離れていくどころか、グッと下に向かって力を込めてきた。俺の顔と彼の顔が近付く。

あぁ、そうか。

本当に可愛い奴だと思う。今まで何度もしてきた事なのに、こうして甘えている時だと、それさえも言葉に出来ないのか。
温もりを失った左手で、彼の頬を撫でる。俺の分かったという意思表示、彼に伝わっただろうか。

彼の頭は膝の上に乗ったまま。それでも構わず、俺は彼の唇にキスをした。




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