(攘夷/♀)
「えー…」
何?
何ですか?この状況。
何でヅラ、俺の部屋に居んの?
何でヅラ、俺の部屋で寝てんの?
何でヅラ、俺と同じ布団で寝てんのおぉぉ!?
親愛なるもこもこ様
頭痛くて目ェ覚ましたら、なーんか息苦しかったんだよね。しかも全然身動き取れないし。
何かと思って上向いたら、そこにはヅラの寝顔のドアップ。
驚いて顔の位置元に戻したら、そこには着物の隙間からチラッとヅラの胸。
何!?この二重のトラップ!!
落ち着け、落ち着け俺。
まずは状況を整理しなければ…
昨日の夜はえーっと…俺とヅラと晋助と辰馬で飲んだんだったな。場所は確か…ここだ!俺の部屋だ!
みんなで飲んで、俺吐いて。またまた飲んで、辰馬吐いて。懲りずに飲んで、二人で吐いて。
…男二人、吐いてばっかじゃねーか。情けねーな、オイ。
そん時、女二人はどうしてたんだっけ。
晋助はザルだからな。一人で夜通し飲んでたんだろ。ったくあの酒の強さ、俺にも分けて貰いてェな。
ヅラは…何か一人で暴走してたような…しかも変な歌うたってたな。
犬のーお巡りさん♪
困ってしまってワンワンワワーン♪
ワンワンワワーン♪
このフレーズばっか、俺の頭撫で回しながら歌ってたな。
…あれ?俺犬扱いですか?
あー、何やかんやで繋がってきたな。
頭撫で回された状態のまま、二人でつぶれちまった訳だ。
で、辰馬あたりが布団掛けてくれてこの状態。
つーか二人は?俺の記憶のある内はここに居たはずなんだけど。
あー…そっか。なるほどね。
俺ら放っといて、アイツら二人で夜のお楽しみって事かチクショー。
まぁいいや。とりあえず俺は一夜の過ちは犯して無さそうだな。多分。
やっぱ初めては恥じらうヅラを優しく…いや、待てよ…無理矢理ってのも結構燃えるものが…
いやいやいやいや!何考えてんの俺!今はそうじゃねーだろ!!
…あーもう。考えてても埒があかねェや。
とりあえずヅラを起こして放して貰おう。
「ヅラー。」
「………」
「おーい、ヅラー。」
「………」
「ヅーラー。」
「………」
敵は手強い。
あれ?コイツこんなに寝起き悪かったっけ?いつもはジジババみたく早起きだったよな。酒のせいか?
とりあえず起きてくれよ。じゃねーと俺、いつまで経っても動けねーよ。
いや、そりゃある意味嬉しいよ?だってこんな可愛いのに頭抱っこされてんだからさ。
でもよ、このままだとマジでヤバい訳よ。俺のバベルが。まだ大丈夫だけどさ、俺元気な男の子なんだからね。いつどうなるか俺にも予測不可能なんだよ。
あれ?
つーかさ、頭抱えられてるだけで何でこんなに動きにくいんだ?
おかしくない?だって、力なら明らかに俺の方が強いんだよ?
いや、何か嬉しいやら気持ちいいやらで、敢えて離れなかったっていうのはあるけどさ。それにしても動きにく過ぎるだろ。
あー、そういえば下の方にも違和感が…いや、俺のバベルじゃないよ?まだ大丈夫だから。アイツは控えめな奴だから。
もっとこう、縛られてる感じ?いや、別に喜んでないよ?俺Mじゃないから。どっちかって言うとSだから。
でも紐にしては、ちょっとさらさらし過ぎじゃないか?何か柔らかくて、気持ちいいような…
…何か、嫌な予感。
あーもう!うだうだ考えてんじゃねーよ俺!男なら潔く布団をめくって現実を見ろ!!
ぺろっ
………
おいぃぃ!!
ヅラの足が…俺の足に絡まってんぞおぉぉ!?
しかも浴衣はだけてるし!!生足かよ!!太股まで見えてんぞおぉぉ!?
あ、さらにヤバい事実発覚。
ヅラの…片っぽの膝の位置が…俺の…股んとこに…
え、何これ。
生殺し?
俺、元気な男の子だよ?
色んなところも元気なんだよ!?
ヤバいって、これ。
バベル反応しちまうって、これ。
…ねぇ。
襲うよ?
襲っちゃうよ!?
いいのか?
いいのか、ヅラ!?
ぁあぁあぁぁあ!!!
「ヅラー!!起きてくれー!!やっぱダメだ!!やっぱ初めては同意の上で…」
「ヅラじゃない、桂だぁ!!」
「ぐはぁ!!」
ヅラの拳が俺の顎にジャストミート!!
あ、起きた。
「…ん?何で俺はここに居るんだ?銀時、お前は何でここに居るんだ?」
「おいぃぃ!!それ俺のセリフだからね!!ここ俺の部屋だから!!大体よォ、テメーが俺の頭放してくんねーからこんな事に…」
あ、ヅラ動いたから足離れた。あー助かった。いや、ちょっと残念だけど、とりあえず良かった。
「そうか!あのもこもこは銀時の頭だったのか!」
「はぁ!?何だいきなり!!もこもこ言うなコノヤロー!!」
髪サラッサラのテメーにもこもこの苦しみはわからねーよ!
つーか早く頭を放しやがれ!また撫で回してんじゃねーよ!いや、ちょっと嬉しいけど!
…ん、何だ?何か嬉しそうだな、コイツ。
「…昔な、白くてもこもこした、犬のぬいぐるみを持っていたんだ。」
あー、何かそんなの持ってたなー。ちょっと顔ぶさいくだったよな。
「小さい頃は、そのぬいぐるみが無いと安心して眠れなくてな。無くしてしまった時は本当に悲しかった。」
そういえばぎゃんぎゃん泣いてたなー。もこもこが居なくなったーってよ。
「さっき、久しぶりに夢にもこもこが出て来てな。もう自分が居なくても大丈夫だと言ったんだ。」
久しぶりって…あれ夢に出て来てたのかよ!
すげぇよ。お前のあのぬいぐるみに対する執着がすげぇよ。
…つーか、何で大丈夫だったの?それは俺に関係あるの?
いや、思い当たる節はあるよ。余りにも不本意だけど、あのぬいぐるみとの共通点が俺には確かにあるから。
何?俺は期待していいの?
「俺の腕の中には別のもこもこがあってな、まさかそれが銀時だったとはな。」
…うーん。ヤバいね、これは。顔熱い。柄にも無く照れちゃうわ、銀さん。
お前、安眠出来たのは俺のおかげ的な事言ったんだぞ?俺が居れば安心出来るみたいな事言ったんだぞ?
なんつーこっ恥ずかしい事言ってんだ。
ねぇ、自覚ある?お前、自分が言った言葉の恥ずかしさ、分かってる?
「あー、まぁ何だ。お前が眠れない時は貸してやるよ、この頭。どーせ減るもんじゃねーし。」
「それはいいな。よろしく頼むぞ、銀時。」
…やっぱ分かってなかった。この天然が。
つーか笑ってやがる。相変わらず可愛いじゃねーかチクショー。
その笑顔に免じて、今日の所は許してやるよ。
さっきのムラムラは…一人寂しくトイレで流すか。
今は亡きもこもこ一代目へ。
テメーも大変だったなぁ。毎日毎日アイツに締め付けられてたもんなぁ。
でも正直言うとよ、俺はテメーが羨ましかったよ。あんな可愛いのに抱っこされてさぁ。
これからは俺が二代目として、アイツを安眠させてやるよ。
あ、勘違いすんなよ?別にやらしい事考えてる訳じゃねーからな。
そこ、大事だからな。忘れんなよ。
まーとにかく、テメーはお役御免だ。
安心して眠りやがれ。