シン様リク
いちゃいちゃしてる銀桂
「あームカつくわ。」
銀時がボソッとそう言うと、桂は怪訝な顔をした。
「…何がだ。」
せっかく恋人と二人きりになれたというのに、ムカつくとは何事か。
そんなことを思いながら、桂は唇を尖らす。
「お前の髪、何でそんなサラサラなわけ?ムカつくんだよコノヤロー。」
銀時はそう言って、桂の髪を両手でグシャグシャと乱す。
「貴様何をする!絡まるだろう!」
「絡まれ絡まれ。散々絡んで、もう解けなくなればいーよ。」
髪を乱す手を止めることはなく、むしろもっと激しくグシャグシャにする。痛い、止めろと桂が言っても、止めることはしない。
「おー、バッサバサ。」
やっと止めた頃には、桂の髪はもわっと膨れ上がり、まとまりがなくなっていた。銀時がにやりと笑う。
「少しは俺の気持ちがわかったか。」
「〜っ貴様!」
お返しだと言わんばかりに、桂は銀時の髪に指を絡ませ、遠慮もなく思いっきりグシャグシャにする。
「いてっ!ちょ、止めろ!引っ張んな!」
「うるさい!思い知れ!」
これでもかと言わんばかりに、桂は銀時の髪を乱す。桂の手から逃れようと、銀時は身体を徐々に後退させるが、桂は懲りずに追いかけてくる。
「ちょ、バカ!うわっ…」
遂には桂の身体は銀時の上に乗っかり、バランスを崩した銀時はソファーに倒れ込む。その際、桂にしがみついたため、桂も共に銀時の上に倒れ込んだ。
「………」
「………」
至近距離に相手の顔。互いの瞳には、自分の顔が克明に写っている。
突然の出来事に対する驚き。顔の近さからくる照れ。そのまま相手に口付けてしまいたいという衝動。それら全てが入り混じり、二人は訳のわからない気分に浸る。見つめ合い、暫し、沈黙。
「…何だお前。髪、もう戻っちまってんじゃねェか。」
銀時が桂の髪に触れる。サラリと音がするのではないかと思う程に、滑らかなそれ。先刻の乱れた様が嘘のようだ。
「…貴様だって、いくら乱しても少しも変わらぬではないか。」
桂が銀時の髪を撫でる。既に桂の手に絡みついた銀髪は、ふわふわと桂の手をくすぐる。
「うるせェよ…」
桂の髪を撫でていた手が後頭部を軽く押す。桂はそのまま銀時に体重を預け、その唇に口付けた。何度も何度も、角度を変えて。
触れるだけの口付けで、こんなにも相手が愛おしくなる。長所も、短所と思える部分でさえも。
「ん…銀時…」
「…なに?」
口付けながら、互いの息がかかる距離で、桂が銀時を呼ぶ。
「貴様は、貴様の髪のようにひねくれて…何があっても変わらぬな…」
ちゅ、と銀時に口付ける。頬に、鼻に。そしてまた唇に。
「は…お前だってそうだろ。いっつもクソまっすぐで、絡まるってことを知らねェ…」
ぎゅ、と桂を抱き締めて、その長い黒髪を手に取り、口付けた。
「なんだ?羨ましいか?」
「別に…羨ましくなんかねーよ。」
言いながら、銀時は微笑み、桂の髪を指で弄ぶ。桂は銀時の着物を、きゅ、と掴んだ。
「…ならばもう、ムカついてはいないんだろう?」
心配そうに銀時を見つめる。桂はずっと、銀時の最初の一言を気にしていたらしい。
銀時は目を見開き、少し驚いたような表情をした。一瞬、何のことだかわからなかったのだ。すぐに理解して、はぁ、とため息をつく。
「…最初からムカついてねーよ。」
わかれ馬鹿。
そう呟いて、銀時は桂の頬を摘む。桂は訳がわからないといった顔で、銀時を見つめた。
何だ、どういうことだ。
桂がそう尋ねても、銀時はもう、何も言わない。
僕が君に触れるには、どうしても言い訳が必要なんだ。