(銀高/♀)
有り得ぬ面影
見慣れている様ないない様な。そんな人影を江戸の街に発見した。
妙にそわそわとしたその様子は、以前に会った時の狂気に満ちた姿とは異なるものだったので、少し驚いた。
最初は無視してやろうと思ったが、結局放っておけずに彼に近付いてしまうのは、やはり幼い頃からの繋がりのせいなのだろうか。
「よォ、高杉。」
後ろから近付いて名前を呼ぶと、彼の肩がびくりと跳ねる。
その肩が妙に細いと感じるのは、気のせいだろうか。それとも、激しい攘夷活動のせいで、窶れてしまったのだろうか。
だが、この細さは異常だ。しかもただ細いだけでなく、腰や胸の辺りに丸みを帯びたりしている、気がする。
そう。それはまるで女の様な…
「…銀時かァ?」
以前に聞いた彼の声より幾分か高い声で、俺の名が呼ばれる。
身体だけでなく声までもが女の様。明らかにおかしい。これは本当に高杉なのか?
「お前…高杉?」
一応確認してみる。高杉らしき人物は口から煙管を離し、ふーっと溜め息の様に煙を吐いた。
「違う、と言いてェところだがなァ…俺は高杉だよ。」
否定の答えを期待していたのに、返ってきたのは肯定の答え。
聞きたい事は山程ある。が、とりあえずこれだけは聞かねばと思い、俺は迷いながらも口を開く。
「お前…何それ。どしたの、その身体。」
「辰馬の馬鹿に天人の薬盛られた。」
「えー…」
この警戒心の塊の様な男に薬を盛るとは。
辰馬がやり手だったのか、それとも高杉が油断していたのか。
どちらにしても、辰馬は高杉にとって多少は気を許せる人物である事は、間違いなさそうだ。
俺にとっても奴はそういう存在だから、分からなくはない。
それにしても、高杉に薬を飲ませた後、辰馬は一体どうなったのだろう。
想像したら何だかとても恐ろしい事になったので、途中で考えるのを止めた。
「…辰馬の話だと、効果は2日間なんだと。」
「いつ飲んだの?」
「夕べ。」
という事は明日の夜までか。
完全に女になった訳ではない事に安堵しつつ、すぐに戻ってしまう事を残念に思った。
何故なら、雰囲気が丸くなり、以前会った時の様な狂気を全く放っていない高杉が、妙に可愛く思えたからだ。
「つーかさ、何でお前江戸に居んの。」
「こんな身体で帰れるか。」
「あー、それもそうだな。」
プライドの高い高杉の事だ。いとも簡単に薬を盛られ、身体が女になってしまったなどと、誰にも知られたくなかったのだろう。
きっと今も行く場所が無くて、途方に暮れていた所なのだろう。
「まァ、今日はうちに匿ってやるよ。偶然ガキ共が居なくてさァ、暇だったんだ。」
「…助かる。」
妙に素直なのは、身体が自分のものでなくなってしまった事への不安からなのか、どうなのか。
しかし、これは面白い事になった。
長い期間共に過ごしていたが、こんなに不安げな表情をする高杉は初めてだ。
俺の中のS心が疼く。なかなか楽しい夜になりそうだ、と思った。
万事屋に着いて、扉の鍵を閉める。先に部屋の中に入った高杉を、ソファーに押し倒し、強引に口付けた。
「ん!?…ふぅっ…」
高杉は逃げようと暴れるが、力まで女並になってしまっている様で、俺を押し退ける事が出来ないでいる。
「何…しやがるんだァ…?」
唇を解放してやれば、頬を上気させて荒い息をする高杉の顔が目に映る。
「んー?せっかく女の身体になってんだからさァ…」
楽しまないと損でしょ?
わざと熱っぽく耳元で言ってやれば、高杉の身体がぶるりと震える。
薄手の着物の袷から手を差し入れると、そこには僅かに膨らんだ乳房があった。
せっかく女体化しているのに、胸が小さいのは如何なものか。
一瞬そう思ったが、この膨らみかけな感じもなかなか新鮮かも知れない、と思い直し、乳房の中心を指先で転がす。
「んぁ…あ…」
「なーに?気持ちいい?」
言えば、きっと睨まれて、首をぶんぶんと横に振られた。
何強がってんだか、と思う。その顔を快楽に歪ませてやりたくて、俺は乳首をぎゅっと摘んだ。
「あっ!や…っ」
「素直じゃない子。」
袷を完全に開き、くりくりと刺激を与えながら、もう片方の乳首に吸い付いて、舌で転がしてやった。
ぶるぶると震える細い身体。上目遣いで高杉の顔を見てみれば、快感に耐えようと必死な表情が浮かんでいた。
「余裕無いね、高杉くん。」
まだ本番はこれからなのにね。
ボソッと言って、手を下半身に滑らせる。秘部に触れると、改めて現実を知る。
「本当にねェな…」
少し湿ったそこを下着越しに撫でる。指が突起を掠める度に、ビクッと跳ねる高杉の身体。
下着を脱がし、直に触れる。
「女はココが気持ちいいんだって。」
そう言って、少し膨れた突起を執拗に攻める。
「あ、あ、やめっ…」
ばたつく足を空いた手で掴み、そのまま広げて、ソファの背凭れに引っ掛ける。高杉は真っ赤な顔を両手で覆っていた。
「ふあぁっ…あ…」
高杉の身体が一際大きく跳ね、一気に脱力した。肩で息をする高杉の頬にキスをして、わざと耳に唇を付けながら囁く。
「今、イッたろ?そんなに気持ち良かった?」
虚ろな瞳で俺を捉えた高杉は、力無く首を横に振る。
あぁもう。どうしてお前はそう俺のS心を擽るのか。
高杉の顔が引きつる。きっと今、俺は物凄くいやらしい表情をしているのだろう。
「その首、ぜってェ縦に振らせてやるよ。」
秘部に指を二本入れた。一度達したそこは潤っていて、狭くはあるが、比較的たやすく俺の指を受け入れた。
「い、たっ…やだ…」
指を出し入れしながら高杉の首筋を甘噛みする。歯が当たる度にピクッと震える高杉は何とも可愛らしい。
指をもう一本増やしてバラバラに動かす。痛み以外の快感も生まれているのが、その表情から窺えた。
「は…はぁ…」
中で壁を擦れば、高杉の背中がしなる。その細い腰を抱いて、半開きの唇を奪い、舌を絡ませた。
「んふ…ぅ…」
「は…もういいか。」
繋がる唾液をそのままに唇を離す。指を引き抜けば、高杉の愛液が指に絡んでいた。
見せつける様にその指を舐めると、高杉の顔は更に赤くなった。
「挿れんぞ。」
高杉の足を更に大きく広げ、立ち上がった俺の自身をあてがう。
「うぁ…や…あー!」
当たり前だが、初めて雄を受け入れたそこはキツく、挿れるだけで一苦労だ。
全てが中に納まって、高杉の顔を見ると、右目から涙が零れていた。
頬を伝うそれを舐めとって、ゆっくりと動く。
「は、あ、んん…」
少しずつ律動を速めていけば、高杉の口から出る喘ぎは大きくなっていく。
俺の下に居るのは高杉の筈なのに、本当に女とヤッてるみたいで、何だか複雑な気分だ。
まぁ俺は気持ち良いし、高杉も気持ち良さそうなので、それは気にしない事にしよう。
「あ…あぁ…!ぎ、ん…イく…!」
「ん、俺も…!」
「ふ、あ、ああぁぁーーー!!」
高杉が達すると、俺の自身が締め付けられて、俺も中で達した。
一瞬、まずいなー、と思ったが、コイツは元々男なので大丈夫か。
俺が余韻に浸っている間に、高杉は気を失ってしまった様で、俺の下から穏やかな寝息が聞こえてきた。
昔と変わらぬ寝顔に笑みが零れる。
寝ている間に後処理をしてやろうと、高杉を横抱きにして、風呂場に向かった。
「銀ちゃん、起きるヨロシ。」
聞き慣れた声に目を開けると、そこには神楽の顔があった。
「あー?何お前。もう帰ってきたの?」
「何言ってるカ。もうお昼過ぎてるヨ。」
そうなの、と言って、だるい身体を無理矢理起こす。
「何でソファーで寝てたアルカ?」
「だってよー、俺の布団は高す…あ…」
しまった。高杉を俺の布団で寝かしてたんだった。
まずい。神楽に見つかったら何言われるか分からない。しばらく汚いものを見る目で見られ続ける。絶対。
「銀ちゃんの布団がどうしたアルカ?」
「いやー?何でも無いよ、神楽ちゃん。ホントに何でも無いよ。」
「…怪しいアル。見せるヨロシ!」
「あー!!待てコラ神楽ー!!」
神楽が俺の部屋に向かって走り出す。俺はソファーから転げ落ちつつ慌てて追い掛けた。
だが俺の視線の先で、神楽が俺の部屋の襖をパァンと開く。あぁ、終わった。俺は右手で顔を覆った。
「…ホントに何も無いアルな。」
「…へ?」
俺も部屋を覗くと、そこには畳まれた布団しか無かった。
「ちぇ。つまんないアル。」
頬をぷくっと膨らませて神楽が去って行った後、俺は部屋の中に入る。
積み上げられた布団の上から枕を退かすと、そこから紙切れが一枚。
何やら文字が書いてあったので、とりあえず手に取って呼んでみる。
『このまま居るとまた襲われそうなので、テメェが起きる前に出る事にする。世話になった。』
何だろう。この微妙な気分は。俺ってそんなに信用無いの?まぁ昨日いきなりあんな事したからそりゃそうか。
「銀ちゃーん。今日のお昼の当番、銀ちゃんアルヨー。」
「あー、分かった分かった。」
頭をボリボリと掻いて、その紙をタンスの中に放り込む。
今日の夜には、高杉の身体は男に戻るのだろう。なかなか可愛かっただけに、またあの狂気じみた男に戻るのは、少しだけ勿体無い気がした。
「銀ちゃーん。」
「うるせー、今行く。」
昨夜の高杉の面影を思い出しながら、俺は神楽の居る居間に向かった。
あぁ、そういえば。
結局俺は、高杉の首を縦に振らせる事は叶わなかった様だ。
***
夜羅様へ。
お待たせ致しました!1850番リクエスト「銀高で男高杉が女体化で裏」完成致しましたので、夜羅様に捧げますv
甘さ控えめな上に銀さんが中途半端にSですみません;;
私は未熟故に夜羅様のリクエストに応えられたか自信はありませんが、よろしければ貰ってやって下さいませ!
水樹麻夕。