(土沖)
早朝6時。
真選組では、まだ誰一人として起きていない、この時間。
今日もドSの仮面を被って、バズーカ片手にアンタの部屋を訪れた。
アンタの寝顔をちょっとだけ眺めてから、いつもの様にバズーカぶっ放した。
ねぇ、土方さん。アンタは知ってますかィ?
俺のこの行動の理由をー…
大好きの証
「総悟おぉぉ!!テメェ何なんだ、毎朝よォ!」
「チッ、おはようごぜェやす、土方さん。」
間一髪で砲撃をかわした土方さんを見下ろしながら、俺はわざと舌打ちしてやった。
それを聞いた土方さんは、青筋立てて、ぎゃあぎゃあと怒り出した。
怒鳴り声を聞き流しながら、土方さんの隣を見てみると、黒こげになって、ぽっかりと穴が空いた布団があった。
「ったく、テメェは…この布団もう使えねェじゃねーか。」
ひとしきり怒鳴り終えて、土方さんは大きな溜め息をついた。
「良かったですねィ。これで今夜から、ふっかふかの新しい布団で寝れまさァ。」
「この布団だって十分新しかったんだよ!!」
軽口たたいてやったら、土方さんがまた怒り出した。
毎日毎日、これの繰り返し。はっきり言って、キリが無い。
だけど、このやり取りが、俺の密かな楽しみだったりする。
朝一番に、アンタに会いたくて。
朝一番にアンタが会うのも、俺であって欲しくて。
このために毎朝早起きしてんだから、昼間は眠くて仕方が無いんでさァ。
全部、土方さんのせいですぜィ。
アンタに聞いてみようか。
何で俺が、毎朝アンタを襲撃すると思いますかィ?って。
アンタは何て答えるのかな。
どーせ副長の座だろ。とか言いそうだねィ。
もしそう答えたら、その通りでさァ。って言ってやろう。
だって、本当の理由なんて、言える訳が無い。
素直じゃないのは、生まれつきなんでねィ。
だけどもし、アンタが言い当てちまったら、どうしようかねィ。
俺は、その通りでさァ。って言えるのかねィ。
きっと、言えないんだろうな。
何てったって、俺は素直になれないんだから。
そうだな。言い当てられたら、アンタバカですかィ。って言って、バズーカぶっ放してやろう。
そうしたら土方さんは、きっとまた怒るんだろう。
「おい、総悟。」
「へぃ。」
「何ぼけらっとしてんだ。朝飯行くぞ。」
「はいよ。」
何事も無かったかの様に、煙草に火を付けて、立ち上がる土方さん。
部屋を出て、縁側を歩いて行く背中に、俺も何事も無かったかの様に付いて行った。
こんなひねくれた愛情表現しか出来ない俺を、文句を言いながらも、アンタは見放さずに、傍に置いてくれる。
まぁアンタはきっと、これが愛情表現だなんて、気付いていないんだろうけど。
いつだって、いつだって。
アンタの隣に居られるのが、嬉しくて。
アンタは俺を傍に置いてくれるんだって、確認せずには居られなくて。
確認する方法は、俺にはバズーカぶっ放す事ぐらいしか、思い付かなくて。
あぁ、俺はひねくれる一方。
「朝飯のマヨには、気を付けなせェ。」
「テメッ!俺のマヨに何しやがった!!」
また軽口たたいたら、土方さんはまた怒り出す。
毎日毎日、これの繰り返し。
楽しくて、仕方が無い。
でも、絶対に言ってやらない。
ねぇ、土方さん。知ってますかィ?
俺がアンタを襲撃する本当の理由を。
別に、知らなくたっていいんでさァ。
寧ろ今は、知って欲しくない。
いつか、俺が素直になれる日が来るのなら。
俺は答えてあげますぜィ。
それは、余りにも一方的な。
俺の、アンタへの。
大好きの証。