(3Z新婚パロ/♀)





朝目覚めると、隣にあったはずの温もりは無く、代わりに、台所からトントンと包丁がまな板を叩く音が聞こえてくる。
つい先日まで、朝、そんな音が聞こえてくる事は無かったので、多少驚いた。だがすぐに事態を察し、重い身体を布団から引きずり出す。
のろのろとした足取りでまっすぐに台所に向かえば、見慣れている背中が見慣れていない姿で立っていた。
それを見ると実感する。俺は今幸せの絶頂にあるのだと。










最高の呼び名










「ヅーラ。」

包丁が置かれたところを見計らい、エプロン姿の愛しい背中を呼んで抱き締める。その綺麗な指に、傷を付ける訳にはいかないから。

「ヅラじゃありません、桂です。」

「おはよう。」

「おはようございます、先生。」

ヅラのツッコミを軽くスルーして、朝の挨拶。学校ではなく家で言うなんて、まだ慣れていなくて変な感じがする。

「もうお前の先生じゃないんだけど。」

「じゃあ何て呼べばいいんですか?」

「あなたー、とか銀八さーん、とか?」

「…先生って呼びます。」

あからさまに白い目で見られ、えー、と言った。そんなに嫌がる事は無いじゃないか。

「先生こそ、いい加減そのヅラって言うの止めてくれませんか?」

「だって、ヅラはヅラ以上でも以下でもないし。」

「…どういう意味ですか。」

抱き締めていた腕を青筋の立った手でがっちりと掴まれた。痛い。

「ちょ、痛いよヅラちゃん。」

「だからヅラじゃありませんって。」

「でも、桂でもないじゃん。」

う、と口を噤むヅラ。頬が少し赤い気がする。
手から力が抜け、掴んでいた箇所を優しくさする。愛しくて、その赤らんだ頬にキスをした。ヅラがくすぐったそうに身を捩る。
その仕草にうっかり欲情してしまい、首筋にもキスをして、赤い痕を残した。

「せ、せんせ…」

「…仕事あるから、続きは夜にしよっか。」

ヅラがこくん、と小さく頷く。それを見てから腕を解き、ヅラを解放する。少々名残惜しいが、仕方無い。

「…朝ご飯、もうすぐ出来ますから。」「うん。」

軽く返事をし、台所から立ち去る。背中に視線を感じたが、気付かないふりをした。










夜、家に着くと、出迎えたヅラをそのまま抱え、ベッドに押し倒した。
展開の早さに付いて行けていないヅラをよそに、その柔らかそうな唇に食い付いて、舌で咥内を荒らす。

「ん!むぅ…」

結婚する前も散々重ねてきた唇。何度味わっても、止められない。

「は…せんせ…」

唇を解放しての第一声がそれ。胸の奥がぞくぞくと波打った。ああ、堪らない。

「…やっぱお前、ずっと俺の事、先生って呼んで。」

エプロンを外し、着衣を乱す。エプロンはしたままでも良かったかな、なんて変態的な事を考えていたら、ヅラに髪の毛を掴まれた。

「…何?痛いんだけど。」

「今何か、変な事考えてたでしょ。」

何で気付かれたんだ。エスパーかお前は。

「別に考えてませんー。そう言うお前は、変な事されたいの?」

「な!?違います!」

顔を真っ赤にして、怒った様に否定する。もう、どうしてそんなに可愛いの。

「まぁいいや。」

勝手ながら、こっちは朝からお預け状態だったんだ。もう限界。
服を脱がしている間、ヅラは大人しかった。元々、恥じらいから自分で脱ぐ事が出来ない娘だったので、大人しくしている事は、今夜はオッケーの証だったりする。
ヅラを下着だけの姿にした後、俺も眼鏡を外し、服を脱いだ。その間、ヅラはまじまじと俺を見ている。何か柄にもなく恥ずかしいんだけど。

「何、見惚れてんの?」

「…そういうの、普通自分で言いますか?」

「だって本当の事だろ。」

そう言って、ヅラの身体を抱き締める。未だ残る布の感触が煩わしくて、すぐにブラジャーのホックを外した。上にずらすと、直に当たる胸の感触が堪らなく気持ち良い。

「せんせい…」

そう呟いて、そろそろと遠慮がちに背中に触れる手が愛おしい。
今朝と同じ様に首筋に吸い付いて、右手でパンツを脱がしていった。ヅラが足をずらし、少しだけ抵抗したが、そんなものは俺の前では無駄な行為だ。

「初めてじゃないのに、何でそんなに恥ずかしがるの?」

「だって…ん…」

俺の視線から逃れる様に目を逸らしたヅラの唇に軽く口付ける。どちらからとも無く舌を絡ませて、ちゅ、という水音が聴覚を支配した。
名残惜しく銀糸を引いて唇を解放し、そのまま乳房の頂に吸い付く。もう片方の乳房は手で包み込んでやわやわと揉んだ。

「あ、あ、せんせ…っ」

ヅラは俺の頭を抱き込み、快感に耐えている。硬くなった乳首をころころと舌で転がせば、声が一層高くなった。
そして、ヅラの足がもじもじとし始めたのを、俺は見逃さない。

「こっち、触って欲しいみたいだね。」

胸を揉んでいた手をそのまま下腹部に滑らせる。俺の指が秘部を掠めた時、ヅラの肩がぴくりと反応する。何回シても、ここを触れられる感覚には慣れないらしい。

「ん、やぁ…あっ…」

指を二本侵入させれば、異物感にヅラは堅く目を瞑る。バラバラと指を動かしながら、ヅラの顔中に何度も口付けた。

「せんせぇ…ぁ…」

指を引き抜くと、ヅラの口から名残惜しそうな声があがる。蜜で濡れた指を見せ付ける様に舐めれば、ヅラはさっと顔を背けた。

「俺もう、限界だから。」

入れるよ。
そう耳元で呟くと、ヅラは顔を背けたまま小さく頷いた。
それを合図に、俺はすっかり勃ち上がった雄を秘部にあてがい、ゆっくりと入れていった。

「ああぁ…ん、あぁっ」

奥まで入ると、そのまま律動を開始する。それに合わせて規則正しく吐かれる熱い息が、俺の耳にかかった。

「あ、あ、せんせ、せんせぇっ」

俺の背中に回る腕に力が入る。俺もきつくヅラを抱き締めた。
顔を上げて、ヅラに口付ける。舌を入れ、歯列をなぞった。ヅラもまた、俺の舌に自分のそれを絡ませてくる。

「んふ、あ、せ…んせっ」

「は、こたろ…可愛い…」

「あっ…」

俺がヅラの名前を呼んだ瞬間、中がきゅっと締まった。ああ、俺は気付いてしまった。

「こたろ、好きだよ。」

「あ、はぁ…」

名前を呼ぶ度、ヅラの身体はふるふると震える。どうやら下の名を呼ばれるのが快感らしい。
律動を速めながら、名前と愛の言葉を囁けば、その度ヅラは何とも可愛らしい反応をする。これはやばい。

「あぁっせんせぇ、も、ぁっ」

「いーよ、こたろう。愛してる。」

「あっ…あぁー…!」

ヅラがイけば、その締め付けで俺も限界を迎え、ヅラの中に精を放った。そのまま脱力感で、ヅラの隣に倒れ込む。

「…先生、ずるい。」

ヅラが肩で息をしながらそう呟く。

「何が?」

「いきなり名前、呼ぶなんて…」

やっぱり俺は正解だった様で。そういえばこいつが生徒だった頃は、桂とは呼んでも小太郎とは呼ばなかったな。絶好の快感ポイントを見つけた事に、俺はひどく満足した。

「まーいいじゃん。気持ち良かったんでしょ?」

にやりと笑ってやれば、ヅラに思いっきり頬を摘まれた。だから痛いんだって。
頬が解放されてから、右手でヅラの腹をさする。

「子供、欲しい?」

ヅラが俺の目を見る。妙にキラキラとしていて、直視出来なくなった。
ヅラが俺の手の上に手を重ね、自分の腹の方を見る。

「はい…」

少し頬を赤らめて、照れた様にそう言われれば、こっちまで照れくさくなってくる。ああ、この恥ずかしい空気を何とか出来ないものか。

「…よーし!じゃあもう一発頑張ろうか!」

「…え!?」

ガバッとヅラの上にのし掛かる。ムードもへったくれも無い俺の発言に、ヅラは唖然としているが、そんな事は気にしていられない。
だって俺、絶対顔赤いもん。こんなツラ、見られてたまるか。

「頑張ろーね、こたろう。先生も頑張るから。」

からかう様にそう言えば、ヅラの顔が真っ赤に染まる。ああもう、可愛い。

まだ生徒だったあの頃から、俺は君の虜です。





***





ゆきえ様へ。



大変長らくお待たせ致しました!3333番キリリク小説「銀八桂で元教え子新婚甘裏」完成致しましたので、ゆきえ様に捧げますv

新婚な感じがイマイチ出せてない気がしてやまないです;;呼び方だけ…でもものすごく書いてて楽しかったです(笑)

こんなものでよろしければ、どうぞ貰ってやって下さいませ!



水樹麻夕。



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