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以下、御礼小説です。お借りした100題の消化に挑戦中!

今回は、坂高、神威と神楽、銀桂の3つです。










014.冷たい手(坂高)





おんしの手はひやいのー。



春になっても夏になっても、いつまでも冷たい自分の手を見ていると、あの男の言葉を思い出す。
もちろん、好きで手を冷たくしているわけじゃない。だけど、温める術も知らない。手袋もカイロもストーブも、俺の手を温めてくれはしないのだ。
両の手で首に触れる。冷たくて冷たくて、身体中に寒気がした。



テメェの手はいつも暑苦しいな。



からかうようにそう言えば、あの男は朗らかに笑っていた。
俺よりも幾分か大きな手。指も太いものだから、実際よりも大分大きく感じられる。
俺の手とは違い、血色が良く、見るからに温かい、いや、熱そうな手だった。



わしの手が、何でいつもあっついか知っちょう?



にこにこと笑いながら、あの男は俺に尋ねてきた。
馬鹿げた質問だ。医学を学んでいない俺には、実際には何故この男の手か温かいかなんて知らないが、この男の考えている答えについては、大方わかっていた。
いつもそうやって女を口説いているのかと思うと多少苛立つが、それを露わにするのも何だか負けた気がして嫌だったので、苛立ちについては無かったことにした。



さあ、何でだろうな。俺にはわからねぇよ。



ふ、と笑い、窓の外を見る。既に冬の空気は消え去り、春の暖かな空気が流れ込んでいた。
それでも、俺の手は冷たい。年がら年中いつでも冷たい。
手の冷たい人の心は温かいなんて言うが、あんなものは嘘だ。俺の手は冷たいのに、心も冷え切っているではないか。
逆にあの男は、手も暑苦しければ、心だって暑苦しい。



それはの、晋助の手を温めるためなんじゃよ。



ほら、暑苦しいだろう?こんなことを、何の恥ずかしげも無く言ってしまうのだから。
言った後、あの男は俺の手を握り、優しくさすり始める。温かい手に包まれた俺の冷たい手は、徐々に熱を持ち始めた。



ほれ、そっちの手も。


片方の手を放し、もう片方の手を差し出すよう促してくる。見れば、その顔は、相変わらずにこにこと笑っていた。



テメェ、湯たんぽか。



苦笑いしながら、促されるままにもう片方の手を差し出す。すると、笑っていたあの男の目が、少しだけ見開かれた。



あり?こっちの手はちょっと温かいのー。



不思議そうに、あの男はもう片方の手をさする。俺は、顔に熱が集まってくるのを感じ、窓の外に視線を戻した。



…気にすんな。たまたまだ。



そう。それは偶然だ。春の陽気に、俺の片手が温められたせいなのだ。
そうかたまたまか、なんて笑い、追及してこないあの男に、安堵もしたが、腹立たしくもあったのを、今でもよく覚えている。





一体何年前の話だろう。
いつの間にか、あの男の手に触れない日常が当たり前になっていた。
たまに恋しくなることがある。あの温かい手に触れたいと、包み込まれたいと思うことがある。
こうして思い出してしまう日には、それはもう末期なのだ。

早く来い、辰馬。俺の手は、春が近くなってもまだ、こんなにも冷たいままなんだ。





(晋ちゃんは冷え性希望。坂本の手は絶対あっついぞ!)








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