ビエンフーの愛読書
「エレノア、そんなに本持ってどうしたんだ?運ぶの手伝おうか」
「名無……いえ、これは」
名無はエレノアが持つ、ビエンフーから没収したという本たちの表紙を眺めた。
”好みの人間女子を口説いて器にする方法”、”かわいこちゃんと好き好きスキンシップ”などと表紙には書かれていた。名無はどんな本なんだと眉を潜める。
「うわぁ……何だこれ」
「後で厳しく尋問する予定です」
「ふーん……?」軽く目を通してみようと本を開くが「見てはいけません!」エレノアに素早く取られてしまった。
「何で?」
「ま、まだ早いからです!」
「何だよ大人ぶりやがって!エレノアと私は二つしか変わらないじゃねーか」「別に大人ぶってなど……!」そのまま二人が言い争っていると「何の騒ぎだ」名無の声を聞きつけたアイゼンが割って入る。
「アイゼン聞いてくれよー」
「実は……」
エレノアの説明を聞いたアイゼンは、彼女の持つ本の表紙を目に納めた。
「お前にはまだ早い!」
「はぁあああー!?」
「なら、いつになったらいいんだよ!」「二年……いや、四年後だ」「ええー……」二十歳になる頃には忘れているだろうし、そこまで興味のないことだ。名無はすっぱり諦めることにした。
「はっ……!そういえば、名無はビエンフー好みの女の子……!何か変なことを言われたり、されたりしていませんか!?」
「へ、変なこと?多分大丈夫……」
一度、器になってくれないかと言い寄られただけだ。ビエンフーのことについて話していると、「僕を呼んだでフか〜?」ひょっこり本人が現れた。
「名無には回りくどい台詞は伝わらないと思ったんでフ。だからストレートに器になってほしいと頼んだんでフが……」
「断られたわけですね」
しかしビエンフー落胆せずに、熱い視線を名無に向けた。
「名無はいつか器になってくれるはず……!諦めてなんかいないでフ」
「お前エレノアがいいんじゃねーのかよ」
何故エレノアや自分に執着するのか、名無は呆れた顔をした。
「名無〜気が変わったらいつでも契約していいんでフよ♪」
そのまま名無に寄って行くビエンフーの帽子を、アイゼンが勢いよく掴む。
「ほう、名無は断ったのにまだ言い寄るか……いい度胸だな」
「ビエーーーン!?」
「アイゼンこっわ」
「な、何故アイゼンがそんなに怒るのです………?」