1月  



「おうロクロウ!終業式ぶりー。宿題できた?」
「   はっはっはっ。名無も見たか?ジョニーの吟遊年越しライブ!あれは熱かったなぁ」
「……わかった」

エレノアのおかげで期末テストでそこそこの点数をとれたというのにこの始末。……怒られるぞ。



「始業式明けの最初の授業は化学ですね」
「一発目から死神先生の、爆発と怒号が絶えない授業とは……やる気なくすのー」
「今日は実験ないから、流石に爆発はないと思うぞ……」
「真面目で長い説明やうんちくは沢山ありそうね」

筆記用具と教科書を持って教室を出た彼女たちに続いて、私も歩き出した。

「楽しいけどなぁ、意味はわかんないけど」

そこそこアイゼン先生の授業が好きな私は彼女たちの反応に疑問を覚える。そうしたら三人とも私をじっと見てきて、何か変なこと言ったかな?と首を傾げた。

「……名無。実際のところ、どうなのよ」
「どうって?何が?」
「わからぬかー、とぼけても無駄じゃぞ」
「まだ授業開始までには時間がありますね」
「ちょっと、こっちに来なさい」

ぐいぐいと引っ張られ、人通りのない場所に追い詰められた。「な、何だよ……」彼女たちの真剣な眼差しに戸惑う。

「実際どうなの?アイゼン先生とは」
「……?」
「去年の四月から放課後を共にし、旅行では二人っきりで過ごすことが多く……何でもクリスマスも一緒だったとか!?」
「クリスマスはザビーダ先生の奴もいたけど」

クリスマスは寂しい奴らで集まっただけだぞ……。ちなみに、ザビちゃんは最近セクハラが過ぎるのでザビーダ先生呼びに格下げした。

「ともかく儂ら視点で、お主らはただの教師と生徒の関係には見えんのじゃ!」
「アイゼン先生は独身ですからね!」
「あたしたちには正直に話しなさい。さもないと……後悔するわよ」

ベルベットの脅し文句は怖い。つまりあれだ、三人は私とアイゼン先生の関係性が気になり、私が彼のことをどう思っているか知りたいわけだ。

「全くそんな目線で見たことなかったわ……」

第一、アイゼン先生は私のこと何とも思ってないだろう。私の言葉を聞いた三人は、呆れたように息を吐いた。

「なら、次から”そういう”目線で見てみれば?」
「真の心に気付くかもしれません!」
「ええ……」

十一月にもこんな感じの話したな……。どうして女子は、そう恋愛方面にいきたがるんだ。私はらちが明かないと思い、渋々頷いた。

「不良生徒に、不良教師じゃ。世間体など考えんでもいいじゃろうて」
「アイゼン先生は外見以外は真面目だぞ」

「とにかく!バレなければいいんじゃ」そう言い残したマギルゥは歩き出してしまった。ベルベットとエレノアも化学室に向かうようで、私も後に続いた。


化学の授業が始まり、大人しくアイゼン先生の教えを聞く。ベルベットの言う”そういう”目で、彼を眺めてみた。

まずは外見。目付きが悪く強面だが、整っている。好みかどうか聞かれれば……どうだろう。私は父親をとても尊敬している為、理想は父親みたいな人かも。浅黒くて筋肉質な男性が好きかもしれない。でもアイゼン先生も、かっこいい。
次に内面。何だかんだいってこれが最優先だ。これまでの付き合いでわかっているが、彼は頼りになる。彼との学園生活は楽しいし、私はお互い相性はいいと思っている。説明が長かったり、たまにこいつ中学二年生なんじゃねーか、と感じるところがあるが、慣れてしまえば可愛いものだ。

私はアイゼン先生が好きではある。しかし、どういう意味の好きなのか。今まで深くは考えたことはなかった。それは―――

「―――名無。今、俺が何と言ったか復唱してみろ」
「………」
「名無!」
「……んあっ!?」

考えているうちに、授業を真面目に受けていなかったことがアイゼン先生にバレたらしく、私は焦りだした。

「あーーー、えーと…すみません。聞いてませんでした」
「顧問の授業はしっかり受けろ。……放課後、覚えてろよ」
「いやいや!冗談はその目付きの悪さだけにしてくれよー」
「あぁ?お前そんな言い方していいと思ってんのか?部活、一時間延長だ」
「そんなぁ!」

周りがドッと沸き上がる。私たちのやりとりにクラスのみんなが笑った。それに紛れてベルベットとロクロウが何か話しているようだが、今は詳細を聞くことはできない。私は大人しく教科書に目を移した。


「アイゼン先生って本当によく名無を見てるわね」
「普通はすぐには気付かんよなぁ」


 


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