9月  



「名無や、学園祭の実行委員をやってはくれんかのぅ」
「はぁー?何で私指名なんだよ」
「仕方ないのう、ではくじで印持ちを引いた者にするかの、くじ運だけが悪い名無には最初から引かせてやるぞい」
「よっしゃ引くぞー!………印、ある……」
「………頼んだぞよ」
「マジかよ!?お前くじに何か仕掛けしてないだろうな?全部に印あるとか!」
「いや、マジでちゃんとしたくじじゃぞ……」
「マジだ………」


* * *


「注目ー、学園祭の出し物決めるぞー!」

実行委員になった私は、話し合いに設けられた時間を有効に使おうと善処することにした。

デザートの模擬店、喫茶店、お化け屋敷。クラスメイトから定番なものたちが上げられ、エレノアが黒板に書き留めていく。

「他に何かいい案あるかー?」
「はい!」
「はい、ライフィセットくん………ライフィセット!?」
「クワガタとカブトムシとザリガニを戦わせて、一番強いのを決めようよ!」

何で初等部の彼がいるのかが疑問だし、彼の提案も意味不明だった。「三つ巴か!いい戦いが見れそうだな!」ロクロウ、話がめんどくなるから喋るな。

「何でライフィセットがいるんだ?何でザリガニが戦いに巻き込まれるんだ……」
「見学よ。ザリガニは知らないけど」
「何の………?」

「来春にわかるわ」とベルベットが言うが、私は混乱するだけだ。とりあえず、高校生に紛れて座る小学生のライフィセットは可愛い。

「はい!俺は真剣を使った、殺陣ショーがいいです!」
「却下、お前は黙ってろ!」

最初のバンドがやりたい、以外の発言全てが物騒なこいつは話にならない。ベルベットに問いかけた。

「女番長ベルベットは何かある?」
「何もないけど……というか、番長はやめなさい!」

体育祭の破天荒な行動があり、夏休み明けには彼女は番長と呼ばれていた。不本意そうだが私は合ってると思う、決して口には出せないが。

「エレノアは?」
「私ですか?……お裁縫が好きなので、準備で役に立てればいいなと」

はにかみながら言う彼女に感動する。実行委員になった私に一番に声をかけてくれたし、いい子だなぁ……!「ありがとう、裁縫関係は頼るよ」今上がっているなかから決めるか、多数決をとろうとすると、教室の扉が大きな音を立てて開いた。

「儂を差し置いて何を勝手に決めようとしておるーーー!!」
「遅刻するお前が悪いんだろ」

一限目に話し合うと前から決めてたのに寝坊するな。マギルゥは黒板の文字を読んで更に怒りを表した。

「かーっ!ありきたりなものばっかじゃのぅ!まさかこのなかから多数決で決めようとしたわけではあるまいな?」
「わ、悪いかよ」

ずんずんと歩んで私の隣に立つマギルゥ。ぐりぐり肩で押すな、私も押し返すように抗う。

「一応お前の提案も聞いてやる……!マギルゥは何がしたいんだ?」
「一応じゃと?儂の提案が決定事項なんじゃ……!」

マギルゥが押していた肩を急に離すものだから、私は倒れそうになる。私が体勢を戻すと、彼女は壇上の前にそびえ立ち、口を開いた。

「B組は奇術ショーをやるぞい!」

「奇術?」クラスのみんなが復唱した。自信満々に言う彼女だが、反して私たちの反応は薄い。

「マジックがやりたいってことか?」
「ちがーう!奇術じゃ、き・じゅ・つ!」
「はぁ……」

何が違うの?「駄目なら儂と名無でひたすら漫才になるぞよ」……それは困る。

一限目を使って話し合ったが、結局マギルゥメインの奇術ショーをやることになった。



「奇術ショー?」アイゼン先生の反応も私たちのように薄いものであった。私は部品をいじくるのをやめて、彼に話す。

「うん、マギルゥがどうしてもやりたいって言うから仕方なく」
「お前も出るのか?」
「出るよー。マギルゥの奇術を補佐するアシスタントとして」

私と同じ役割としてベルベットとエレノアも出場することに決まっている。マギルゥは脇役として身の程をわきまえろだ三歩後ろに下がれだうるさいが、学園祭が終わるまでの辛抱だ。

「大変か?実行委員は」
「そんなことないよ、みんな手伝ってくれてるし」

午前と午後に一回ずつやるから時間があれば見てほしいとアイゼン先生に頼む。彼は快く頷いてくれ、私は笑顔で返した。

「楽しそうだな」
「高校生になってから、やけに楽しいんだ」

あの偉大な父親の影響力がないからか、皆がありのままの姿で接してくれる。私はそれが嬉しくて仕方なかった。

「学園生活楽しいよ!勿論、部活も含めて!」
「!……そうか」

* * *

「―――名無、名無や!」休み時間にマギルゥが楽しそうに私のところにやって来る。嫌な予感しかしない。

「何だよ、今エレノアたちと色々話し合ってるんだから邪魔すんな」
「これを見たかえ?」

一枚のポスターを机に広げた。それにはでかでかと”歌コンテスト”と書かれている。私は文字を口に出して呟いた。マギルゥは私が出場するか気になっているようだ。

「んあ?………私?」
「注目すべきはここじゃ!」

マギルゥが指差す文字には”優勝者の願い事を一つ叶える”と書かれていた。「!!」願い事、私はその文字に食いつく。ベルベットが素朴な疑問をぶつけた。

「願い事……って、何でもいいわけ?」
「学園長や教師らの許容範囲なら可能だそうじゃ」

それでもある程度のことなら叶いそうだ。私はポスターを持ち、詳しい内容を読み始めた。

「どうして、学園側がそのようなことを?」
「体育祭の真似事のようじゃ〜、規模は小さいがの」

優勝者に賞品があると出場者は必死になり、ギャラリーも盛り上がる。体育祭の時の沸き上がりを学園祭でも起こしたいようだ。歌で盛り上がるかどうかはわからないが。
―――私は決心する。

ベルベットは呆れるように息をついた。「名無がそんな話に乗るわけ「出る」……名無?」

「私、出るよ。歌コンテスト」


 


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