赤聖水切れ
門前付近で佇んでいる船員らしき者たちがいるが、表情が暗い。気になった名無は彼らに話しかけてみた。
「最近なんだか体の調子が悪いんだよなぁ。赤聖水飲んでた時は良かったのによぉ」
「ふーん……」
「何だか急に手に入りにくくなって、闇取引じゃあ二十倍以上の値がついちまって……」
彼らは王都なら売ってると思って来たが、どこにもない事実を聞いて途方に暮れているようだった。それを聞いたアイゼンが止めさせようと真実を告げる。
「赤聖水は止めておけ。あれには赤精鉱が入っている」
「何だって!?あれって確か……常習性が高い、ちょっとヤバいヤツだろ?」
彼らは赤精鉱を知っているようで、アイゼンの言葉に動揺した。
「手に入らなくなった今がやめ時だ。船乗りならそんなもんに頼らず、身体を動かせ」
「そうそう、偉大なる海を眺めながら働けばすぐ忘れるさ」
二人の言葉に感銘を受けた彼らは「ああ、そうだな!!赤聖水はやめだ!これからは仕事上がりには心水にするぜ!」と、新しいよりどころの飲み物をあげるのであった。
「いいこと教えてくれて、ありがとよ!」
「お、おう……じゃあな。ほどほどにしろよ」
再び歩き出す名無。
「何だかんだいって、心水もヤバい飲み物じゃないの?」という彼女の疑問に、アイゼンは全力で否定するのであった。