????奇術団
ローグレスを歩いていると「ややっ、その怪しい身なり、お前らアレだろ!忘れもしない……」一人の物好きそうな商人に話しかけられた。
「ローグレスの入口で鳩出した、マミムメ奇術団だろ!?」
「マミムメ…?」
何だその名前は。名無は首を傾げた。すかさずマギルゥが否定をして正しい名前を教えてやる。
「マギルゥ奇術団じゃ。何じゃお主、あの場におったのかえ?」
「そうとも。ゼクソン港から来て検問でお前らを見て楽しみにしてたのに、いつまでたっても話をきかない」
それはそうだ。あれはその場しのぎで生まれたもので、律儀に公演をしようとする者などだれ一人もいないのだから。明日にでもゼクソン港で講演してもらいたいと頼む商人。
「そっちの愛想のない姉ちゃんからの、ポッポ……、からの魔法使いの姉ちゃんの鳩奇術!」
「ちっ……」
「あ、あのさ。ハトマネのくだりは話さないでやってくれよ…」
「音響担当の姉ちゃんの出す音もきいてみたいぜ!」
名無は苦笑いを返すことしかできなかった。
「やってもいいが、儂らの出演料は高いぞえ?」
「金ならある!あれが見られるんなら、いくらだって出すぜ!」
相当気に入ってくれたようだ。あの一回きりの出来事でもうファンを獲得してしまうとは……。しかしベルベットは「……断る」冷たく拒否するのだった。
「そこをなんとか」
「……しつこい」
「なんだよ、つれねえなぁ」
とびきり低い声の彼女に名無は冷や汗を垂らす。マギルゥに視線を送ると、彼女は仕方ないと断りの言葉を放った。
「今回は縁がなかったと思って、諦めるのじゃ。さもなくば、お主がこの世から消える奇術をこの弟子がやりかねんぞ?」
「おお、いいじゃないか。やってくれよ」
「やめとけ、やめとけ!」
奇術という名の殺人を受け入れようとする彼に名無は全力で止めることを勧めた。
「弟子にやらせてもよいがお主は消えたまま戻れぬぞ?それでもよいのか?」
「えっ、マジ?」
「マジだ、マジ」
「うむ。そして儂らはマギルゥ奇術団じゃ。次の機会を待つがよい」
この場を去るマギルゥ奇術団。後ろから「むうう……俺が消える大マジックか。見たいような、見たくないような……」という声が聞こえた名無は困り眉で笑った。