大聖堂  



一行は情報収集の為、王都の大聖堂に訪れていた。内部の豪華な造りに感嘆する。ロクロウとライフィセットが思わず口を開いた。

「さすがは王都の大聖堂。大したもんだな」
「うん、すごい………」

人の手で作られている聖堂にアイゼンも評価した。名無が彼を見上げる。

「ふむ……噂通り聖隷術ではなく人間の最新技術で築かれているようだな」
「そうなの?」
「立体装飾と力学的合理性を両立させたアーチ構造が見事だ」
「へえー」

名無も大聖堂を見渡す。確かに言われてみればそうな気がする、とボーッと考えていた。

「ここに聖主とやらが祀られているの?」
「……いや、とてもそうとは思えん。長らく聖主信仰は形骸化していた」
「信仰の為じゃないよ」

「確か………」名無はベルベットにこの大聖堂が建てられた意味を教える為に思いだそうとしたが「ああ、信仰の為ではなく王国の大陸統一を記念して建てられたときいている」アイゼンが補うように説明してくれた。

「つまり権力を示すのが目的か」
「成る程、そりゃあ豪華につくるはずだ」
「驚くのは早い。ここはただの入口。しかもまだ未完成だ。この奥に巨大な神殿を建築中で、完成するのは数百年後の予定らしい」
「そうそう、昔からずっと建築中なんだよな」

アイゼンは建築物にも詳しいらしい。名無は同意しながら感心した。ロクロウは驚く。

「そんな計画でいいのか!?気長すぎるだろ?」
「……わからん。何故か人間は、時々こういう突き抜けたことをする」
「だよなー」
「死神と業魔に呆れられるなんて、大聖堂のありがたみゼロね」

二人の会話を聞いていた名無は「そっか。アイゼンたちにはわかんないか」と呟いた。

「名無にはわかるのか?」
「ん、わかるっつーか……ほら、人間って代替わりする生き物だろ?」

環境適応の為に代替わりし、古いものからなくなっていく。そういう生物たちは総じて受け継がせる、受け継ぐことを大切にする。

「だから建築物とか、作品とか。何かを通して未来に今の自分たちが生きていたことを伝える。それが人間なんだって私は思う」

大聖堂の豪奢な構造を見上げて言った、未来の人々に思いを馳せるように。

「この大聖堂は、過去、現在、未来の人の”生”の証だな。直接会えなくても、ここで祈ることで人々が繋がっていく気がする」
「ほう、いいこと言うじゃないか」
「名無……そうか、お前はそういう風にとらえるんだな」
「神殿……どんなのかな」

周りは名無の発言に感心するが

「まあ私は神様とか聖主様とか全く信じてないけどなー!だって見たことねえし!」
「……いいこと言ったと思ったらそれか」
「あんたって、身も蓋もないわよね」


 


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