探索船@  



「ところで、お前たちの船だがな。あれも仲間が乗り込んで海門要塞を抜けた」
「ふーん、大砲何発かくらったしあのままかと思ってた」
「……命中させたのは一発だけだ。うちの”探索船”として使わせてもらうぞ」

ベルベットの方を向いてそう伝えるアイゼン。対してベルベットは名無を見た。

「あれは名無の物よ。組合から買ったんだから、あんたが決めなさい」
「何だと?」
「ああーそうだっけか。探索船が何かはわかんないけど、好きにしなよ。私一人じゃ扱えないものだし」
「探索船って……?」
「探索船の担当はベンウィックだ。あいつから説明を聞いてくれ」

それを聞いた一行はベンウィックに元へ訪れ、声をかける。

「おーい、ベンウィックー!」
「アイゼンに頼まれたんだけど、探索船ってなんなの?」
「”異海”を探索する船のことさ」

異海!と眼を輝かせる名無。ベンウィックはベルベットたちに異海の説明をした。

「そこを探ろうってわけ?何のために?」
「もちろん、世界地図をつくる為さ!」

「世界地図!」名無とライフィセットは顔を明るくさせる。

「そうだ。全世界を網羅した地図の完成は、俺たちアイフリード海賊団の野望のひとつ」
「そういや、一度だけ異大陸まで航海したってアイフリードが言ってたな」

名無の言葉にアイゼンは頷く。

「異大陸まで……」
「ほほう、夢のある話だなぁ」

ライフィセットとロクロウは異大陸の話に心を躍らせているようだった。

「さっぱりわかんない」
「略してさぱらんじゃな。知らん場所の地図なんかあってもしょーがないわい」
「えっ」

低い声で意味がわからないと言うベルベットとマギルゥ。何だこの男女間の落差は、名無は男性陣と女性陣を交互に見た。

「けど、広大な異海の探索には強い運が必要でね。あんたたちの運を利用させてもらいたいんだ」
「運を利用って……どうやって?」
「お前たちの直感で探索船に指示をだしてくれ」

アイゼンが指示を出すと裏目に出るから名無たちに頼むのだろう。

「見返りにバンエルティア号は足として協力する。探索で得た物資もお前たちの自由にしていい」

これは悪い条件ではない、むしろ良い条件だ。

「指示は”シルフモドキ”という伝書鳥を使って、どこからでも出せる」
「シルフモドキってベンウィックの頭にいる可愛いの?」

「おう!」とベンウィックは陽気に返事をする。それに合わせて彼の頭にとまっているシルフモドキも鳴いた。(やっぱり可愛い……)

「すごい財宝が見つかるかもしれないぜ!それに珍しい食材や、未知のレシピとか!」
「財宝に食材にレシピか………」

役に立ちそうな物に関心を示すベルベット。

「悪い話じゃないな。大して手間もかからんし、何より面白そうだ」
「そうだな、協力しよう!ベルベット、いいよね?」
「そうね。運の責任をとらなくていいなら、手を貸してもいい」

地図を広げ、試しに名無がとある場所に指示を出してみる。

「あとは報告を待てばいいのね」
「うわぁー!わくわくする!何が見つかるかな」

名無は各々に何が見つかるかの予想を聞いた。

「そうだな、お宝をのせた沈没船とか」
「海底遺跡とか、無人島とか」
「新航路も見つかるかもしれん」

男性陣は夢のあることを述べる。

「そんなのより美味しい魚がいいわ。きっと高く売れる」
「じゃよな〜!マグロとかブリとかチョウザメとかの〜」

対して女性陣は現実的なことを述べた。(さっきから何だろうこの雰囲気の違い……)名無は首を傾げた。ライフィセットが名無は何が見つかってほしい?と聞いてくる。皆の視線が集まるなか、彼女は素直に答えた。

「………私は見たことがないような景色がある新天地がいいな」

少し頬を染め、はにかみながら名無は答える。男性陣はそれを聞いて満足するが、ベルベットとマギルゥは溜め息をついた。

「あんたはそっち側なのね」
「女のくせして男に肩入れするとは……裏切り者め!」
「いっ、いいだろ!男とか女とかの以前に元々好きなんだから!」
「名無、お前は男のロマンがわかる女なんだな!いい嫁さんになるぞ」
「な、何それ………?」


 


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