5月  



昼休み。中庭で昼食を食べていた。メンバーは同じクラスのベルベット、エレノア、マギルゥ、私だ。

「はぁあ………」
「名無、部活に入ってから溜息が増えたわね」
「やはりアイゼン先生の指導は厳しいのでしょうか……」
「厳しいってもんじゃないよ……」

エレノアの一言に触発され、いかにアイゼン先生がスパルタか喋り続けた。そして一通り喋った最後に付け足したい言葉がある。
それもこれも全部………

「誰かのせいでな!」
「はて?一体誰のことじゃろう?何のことだかさぱらーん!」
「コイツ!」

私の渾身の睨み付ける攻撃は彼女には効果はないようだ……。
ならばと弁当を取り上げる。

「儂の弁当〜!返さんか!」
「私の弁当だよ!もう作ってやんないからな!」

マギルゥはパンかコンビニ弁当ばかりだから彼女の健康を案じた私が少し前からお節介にも手作り弁当を作ってた。案外きっちり一人分の弁当を作るのは難しかったしマギルゥの健康の為にならって思ってたのにこの態度!

「まぁまぁそう言うでない。毎日この生徒会長の儂に弁当を献上すればいずれ良いことがあるやもしれんぞ?」
「あなたはまたそんな適当なことを……名無!信じてはいけません!」

生徒会長の言葉に書記が怒った。そう、マギルゥはこの前の選挙で見事生徒会長になった。いや見事ではないな。明らかに不正な気がする。こんな制服をカラフルにアレンジしまくりの奴が生徒の模範となる生徒会長になれる筈がない。
まぁ制服は私も好きにいじってるから何も言えないが。

「書記エレノア、いいのかえ?生徒会長に逆らって。これからもーっと雑用が増えるかもしれんのう」
「く……いつか必ずあなたの不正を暴いてみせますからね!」

マギルゥの当選が発表されてすぐにエレノアは探偵部を設立した。華道部か茶道部、どちらに入ろうかと真剣に悩んでいたのに。それほどショックだったのかなぁ。
探偵部はすでに部員が数名いるらしく、私にはそれが羨ましかった。アイゼン先生が厳し過ぎて機械部は今だに私だけなんだけど?部長になってしまったんだけど?

二人の言い争いは終わらず、ついにベルベットが止めようとした時に風が吹く。その風の音の中にある声が聞こえ体がビクッと反応し反射的に後ろの校舎の窓を振り返った。

「ハイッ!?………あれ、いない。なんだ空耳か」
「ど、どうしたの急に。驚かさないでよ」
「ご、ごめんごめん。アイゼン先生の声が聞こえた気がして」
「儂らには聞こえんかったし本当に空耳のようじゃの」
「でもどうしてそんな空耳が……?」
「あ"ーーー……アレのせいか」

アレ?と三人に聞かれ私は話すことにした。
マギルゥが私が取り上げた弁当に手を出してきたがもういいや、今日を最後にするつもりだし食べることを許そう。

「いやここ最近カラクリンピックの映像を第一回から見せられてるんだよ、映像に何かある毎に先生の解説が何分も入るからさ……ご丁寧に一時停止してから。だから先生の声が耳に残っちゃってて」

只今映像は第七回に差し掛かってる。まだまだ先は長い。自然とまた溜め息をついてしまった。

「そ、それはキツいですね」
「御愁傷様」
「毎日特に精神的に大変なようじゃの」
「誰かのせいでな!」
「さぱらーん!」

それこそ機械関係がさぱらんな私にアイゼン先生はいち早く基礎を叩き込みたいんだろうな。
先生はカラクリンピック優勝まで単位は無しだ!とか言ってたけどあれはマジだ……。

「とにかく名無はこれからも儂にそのまずまずな味の弁当を作り続けておくれ♪」
「コイツゥ!!」
「名無、こんなとこで昼飯食ってんのか」

また空耳か?ガラッと窓を開ける音まで付属されてる空耳とはまた珍しい。

「残念ながら今度は空耳じゃないわよ」
「ゲェッ!マジで現れた!!」
「何だその反応は」
「あ、いやぁあのですね……」

アイゼン先生の睨み付ける攻撃。私に効果は抜群だ!ヤバい、あなたのことを愚痴ってましたなんて言える筈がない!

「あ、アイゼン先生のお話をしていたんです!こんなに部活に熱心な先生そうはいないって!名無感謝してるみたいです!」
「ハァ!?あ、いや、そ、そうだな……せんせー!いつもありがとー!」

無理があるわよ、とベルベットが。顔ひきつってるおるぞ、とマギルゥが小さく呟いていた。

「そうか、教師として冥利に尽きるな。そんな名無にいい話があるぞ。明日から昼休みに化学室に来い。弁当食いながらでも映像なら見れるだろ?お前が感謝している俺の解説付きだ、喜べ」
「エレノアァァアアア!!」
「ごめんなさい!!」


 


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