『鍵のない部屋』

大切だから閉じ込めといたら、いつしか君はいなくなった。
僕は怖かった。誰かに忘れられる事が。

"忘れないで。忘れないで。忘れないで。忘れないで。忘れないで。忘れないで。忘れないで。忘れないで。忘れないで。"

おもむろに紙に書きなぐった。
なんだか、存在が消えてしまう気がして、嫌なんだ。

我を忘れて頭を押さえてい 大切だから閉じ込めといたら、いつしか君はいなくなった。
僕は怖かった。誰かに忘れられる事が。

"忘れないで。忘れないで。忘れないで。忘れないで。忘れないで。忘れないで。忘れないで。忘れないで。忘れないで。"

おもむろに紙に書きなぐった。
なんだか、存在が消えてしまう気がして、嫌なんだ。

我を忘れて頭を押さえている途中あることに気付いて動きを止めた。

「あ"あぁぁぁぁぁぁああああああああああ…っ!!」

叫ぶ己の、鏡に映る姿が醜くて携帯電話を鏡に投げて割った。
優しい君は、もう近くにいなかった。
手遅れだった。ただただ全てが、手遅れだった。



「アフロディ」

優しく僕を呼ぶのは、一つだけ年上の中学の頃のチームメイト。
風が吹く度に騒ぐ髪の毛の匂いがとても好きだった。

「俺がいなくっても俺の事覚えててくれる?」
「どうしたの? 急に」
「なんとなく」

曖昧な答えを残したままで夕陽は落ちて、そのまま僕に背を向けて歩いて帰って言った。

「待って…っ! ねぇ平良!」

必死に叫んでも君は待ってくれなくて段々遠ざかって行って、段々消えて行く。

「置いて行かないでぇぇぇえ…っ!!」

そう叫んだとたんに、これは夢だった事に気づいた。
そしてもうその悪夢から解放されたんだ、と分かった。

安堵して、肩を下ろした。
置いて行かれるのはもう充分だ。
怖い。

『…どうした? アフロディ』
「急に…声、が…きたく…なっ…て」

怖くて怖くて、いつの間にか手にした電話で必死に訴えたけど、掠れた自分の声を上手く出す事が出来なくて、泣き出した。

『今行く』

強くはっきりさした口調で平良は受話器越しに言った。だから、君を殴りたくなった。
だってあまりにも、僕とは違う。

泣きながら待ってると扉が空く音がした。
ああ、やっと、来てくれた。

「アフロディ、大丈夫か?」
「もう遅い…」

君を殴って奥の部屋に閉じ込めた。
これでもう、君だけは、僕を忘れない。

安心すると涙が出た。同時にとてつもない不安に襲われて、膝を抱えた。

「あ"あ"あ"ぁ"…っ」

まるで獣の様な声を上げて泣いた。
何度も、何度も。自分を叩いては涙を流した。 」

叫ぶ己の、鏡に映る姿が醜くて携帯電話を鏡に投げて割った。
優しい君は、もう近くにいなかった。
手遅れだった。ただただ全てが、手遅れだった。



「アフロディ」

優しく僕を呼ぶのは、一つだけ年上の中学の頃のチームメイト。
風が吹く度に騒ぐ髪の毛の匂いがとても好きだった。

「俺がいなくっても俺の事覚えててくれる?」
「どうしたの? 急に」
「なんとなく」

曖昧な答えを残したままで夕陽は落ちて、そのまま僕に背を向けて歩いて帰って言った。

「待って…っ! ねぇ平良!」

必死に叫んでも君は待ってくれなくて段々遠ざかって行って、段々消えて行く。

「置いて行かないでぇぇぇえ…っ!!」

そう叫んだとたんに、これは夢だった事に気づいた。
そしてもうその悪夢から解放されたんだ、と分かった。

安堵して、肩を下ろした。
置いて行かれるのはもう充分だ。
怖い。

『…どうした? アフロディ』
「急に…声、が…きたく…なっ…て」

怖くて怖くて、いつの間にか手にした電話で必死に訴えたけど、掠れた自分の声を上手く出す事が出来なくて、泣き出した。

『今行く』

強くはっきりさした口調で平良は受話器越しに言った。だから、君を殴りたくなった。
だってあまりにも、僕とは違う。

泣きながら待ってると扉が空く音がした。
ああ、やっと、来てくれた。

「アフロディ、大丈夫か?」
「もう遅い…」

君を殴って奥の部屋に閉じ込めた。
これでもう、君だけは、僕を忘れない。

安心すると涙が出た。同時にとてつもない不安に襲われて、膝を抱えた。

「あ"あ"あ"ぁ"…っ」

まるで獣の様な声を上げて泣いた。
何度も、何度も。自分を叩いては涙を流した。

ねぇ怖いよ、怖い。
今にも暗闇に飲まれてしまいそう。外はこんなにも明るいのに。
僕だけ一人真っ暗な闇の中にいるようだった。

「し、死んじゃうよ…、ねぇ、死にそう…。 死にそう死にそう死にそう死にそう死にそう死にそう死にそう死にそう死にそう死にそう…っ」

そんな事を繰り返していつしか日は落ちて、夜になって 朝になった。

「平良…。そこにいる…?」

一枚のドアを隔てて問いかけた。

「ああ。 いるよ」

返ってきた言葉を聞いて落ち着いた。
そしてパンをひと欠片、平良のいる部屋に投げ入れた。

「お願い…っ! 僕の事、忘れないでねぇ…」
「…………」
「返事してよ平良!!」

帰ってくるのは、沈黙ばかり。

このドアを開けるのが怖い だから、壁に穴を開けてそこから平良への餌を与える事にした。
ドアを開けた瞬間、平良が逃げ出すと困るから。

たいせつ だから ずっと そばに いたかった。
ただ それだけ なのに
いっかげつ たった あるひ きみは ぼくを うらぎった。

「へら? そこにいる?」

へんじも いきづかいも なにも きこえなくなって どあを あけたら
きみは いなく なってた。

こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい

「うそだぁぁぁぁぁぁああ…っ!!」

さけんで、さけんで のぞいた かがみに うつった じぶん
みにくくて けいたいを かがみに ぶつけて わった。

「あ"あぁぁぁぁぁぁああああああああああ…っ!!」

さけんでる とちゅう きづいた。

「かぎ……」

へらを とじこめていた へやには かぎは かけて なかった。
それなら へらは にげられた はず。

「…っ」

ああ そうか。 こんどこそ ぼくは おいて イカレたんだ。
わすれられたんだ。
消えるんだ、このまま。

「ごめん、ごめんね…平良…っ」

我に返り自分のやった事の浅はかさを思い知ると、涙も出なかった。

あの鍵のない部屋で、君はどんな気持ちで
何を思って、そのドアを開かなかったの?

今はもう分からない。優しい君はもういない。

今まで感じてた恐怖や不安が僕の体を蝕んでいたみたい。
そのまま床に倒れ込むと、起き上がる事すら出来やしなかった。

他人に嫌われて、置いて行かれて、忘れ去られて、僕は消えるんだ。
この閉じ籠った部屋(おり)の中で。

まだ閉じない瞳は、鍵のない部屋の鍵のかかったドアを見つめて閉じた。

鍵なんてなくても開けないのならば、鍵があるのと同じ。
鍵があっても、無理矢理開くのならば、鍵がないのと同じ。

このドアの向こうに光があるなら、僕は開けない、開けれない。

君を閉じ込めてたこの鍵のない部屋で、僕はひたすら明日を願う。


(2014/2/9)





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