マリオネット 2/2

薄れる景色の中、何故か自分が倒れていく様が見える……
倒れ行く俺はだんだん小さく変形する。

俺のベッドにいた、血まみれの…マリオネット……?


「バーン?」
「……っ!!」

慌てて体を起こせば、俺は自分のベッドの上だった。
さっきのは、夢……?

「……どうしたの? バーン……」
「変な……夢、見て……」

息づかいが激しい俺をガゼルが抱きしめた。

「大丈夫だよ」

ガゼルの腕の中は、驚くほど冷たかった。
体温が低いのは知ってたけど、抱きしめられた時の
温かさってものが伝わって来ない……。

「……ガゼル?」

ドクン、ドクンと俺の心臓が大きく鳴り響いた。

「バーン、大丈夫……君には私がいるんだもの……」

――ドクン、ドクン……

「ずっと私のそばにいれば、なんにも怖くない……」

――――ドクン……ドクン………

「だから、一生離さないよ……。私のバーン……
「ぅわああ!!」

ガゼルの息が耳に当たって、ゾッとした。
怖かった。ガゼルの目。

「一緒にいようよ、バーン……」
「や、やだ……! 俺は、照美のとこ――」
「アフロディのところに行くんだね?」

後ずさった俺を追う様に、ガゼルがゆっくりゆっくり、俺との距離を縮める。

「来るなよ……!!」

好きだけど、怖かった。
だって目がイカレてる……。
いつもの、俺の好きなガゼルじゃない……

俺は適当に、手に当たった物をガゼルに向かって放り投げた。

それはガゼルの顔に直撃した。
ガゼルの顔に当たったのは血まみれのマリオネット。
マリオネットが顔から落ちる。

ガゼルの顔が真っ赤。

「……ご、ごめ」

小さすぎて聞こえないだろう、俺の声なんか。
でもガゼルが、俺の知ってる俺の好きな優しいガゼルがいなくなる様な気がして
俺は家を出て走り去った。


 5分ほど走り、振り向けばもうガゼルはいなかった。

呼吸を整えながら俺は照美の元へ向かった。

「照美……」

ドアの鍵が開いたままだった。
勝手に入って、照美を良く見た。

「ごめんな、照美……」
「晴矢……?」

泣いて、泣いて……。
目の下が真っ赤だ。

「ガゼルは一体どうしたんだよ……?」
「風介は、……晴矢っ!!」

照美が目を見開いて叫んだ。

「ごふ……っ」俺が血を吐いた。真っ赤だった。

後ろを振り向けば、そこにはガゼルがいた。
拳銃を持ってた。その穴からは青白い煙が出てた。

「まだ死んでないの……? バーン。……今度は外さないからね……?」

ああ、殺される。
生まれた時から一緒に生きてきた大切な家族に。

――――バァン……ッ

銃声が聞こえたけど、新たな痛みはなかった。
虚ろな目で見渡せば俺の代わりに倒れてたのは照美だった。

「……照美? おい照美……っ!!」

振り絞る声。もう出ない……。
死ぬ。死ぬんだなぁ……

「なんで……ガゼル……」
「バーンが、」

ガゼルが口を開く。

「バーンが……私に優しくするから…その気もないのに、好きじゃないのに……!!」

俺のせい……? ガゼルは俺を違う“好き”として見てたのか?
今更、照美が言った言葉の意味が分かった。

「好き……だった。照美とは、比べものにならないくらい……。」
「…!!」
「だって…そうだろ…? お前はずっと、一緒だったんだし…いなきゃ困った…」

ガゼルの泣き顔が赤く滲んでる……。
最後の最後に泣かせてしまうんだ、俺は……

「……照美とお前とは、好きの意味が違う……んだよ……」
「バーン……!!」

泣いてたはずのガゼルが突然笑う。
両の口元を吊り上げて。

「……? ……ガゼル?」

ガゼルの目線は俺に来ていなかった。
俺はその視線を目で辿った。

2つの、操り人形。
血まみれの俺と、血まみれの照美。

ガゼルはその2つを上手に動かした。

「……私の操り人形(マリオネット)。ちゃんと操られてくれてたみたい……」

操り人形はボロボロで、動かしていたら簡単に糸が千切れた。
そして、動かなくなった……。

「あーあ、動かなくなっちゃった……サヨナラの時間……だね」

――パァン、パァアアン……!!







「〜♪」

窓辺に2つのマリオネットが並べられてる。
金髪の長髪のマリオネットと、赤毛の変わった髪型のマリオネット。

仲良く窓辺で座ってる。
赤茶色の染みが沢山付いた人形。

赤毛の人形に長い髪の毛の人形がもたれ掛かった。

「あ……、ダメだよ。この子は私のだからね……」




(2012/10/23)





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