『愛さないでください』

 部屋を汚しっぱなしにしていたら、急に訪ねて来たのは恋人。

「上がっていい?」
「あ、ああ……っ」

せっかく来てくれたんだから と、追い返す訳にも行かず部屋へ上げた。
大丈夫、エロ本とかはない……はず。
つい一週間くらい前に出来たばかりの恋人。
俺が猛アタックした故だけど。

「結構大きい部屋だねー」

足の踏み場もない様な俺の部屋を見渡しながら言った。

「……そこ、座れよ」
「うん」

ベッドを指差して言ったら照美は素直にベッドに座った。
そんな照美を見て少ない頭で俺が考えたのは、

これってもしかして……もしかしなくても……

「(エロスの予感……!?)」

一人興奮した俺はベッドに座っている照美を猛獣の様に押し倒した。

「ちょっと……! 源田くん!?」

驚いてこちらを伺う。
あ……やっぱり、俺だけだよな……
その気になってるのって。

「……嫌だ?」
「…………」

見つめ返して聞いた。
だってやっぱり欲しかったから。

「……い、やだって言うか、怖い……かな」

視線を俺から反らして横を向く。
ちょっと眉をひそませて。

「そっか……」

照美の上からどいて、隣に座った。
少しの沈黙が続いた後に、照美が口を開いた。

「……僕を、本気で愛さないでくれるなら抱いてもいいよ」

想像もつかない言葉が俺の耳に通る。
一度聞き逃して、聞き返した。

「え?」
「だから、僕を愛さないでくれるなら抱いて」

上手く意味が理解できなかった。
だけど、俺は再び照美の上に体を重ねた。

「いいのか?」
「……うん」

俺は照美の柔らかい唇に自分の唇を重ねた。その割れ目に舌を入れたら、甘い声が漏れた。

いやらしい水音がして、興奮を覚える。

「照美……! もう我慢出来ねー……」

照美の着ている邪魔な服を剥ぎ取り、まじまじと白い素肌を見つめた。

桃色の乳房を甘噛みしてから、自分のズボンから自身を取り出し照美の蕾にあてがった。

何も言わず、抵抗もせずに照美は顔を赤くして横を向いてる。可愛いと思った。

「入れ…るぞ…?」
「……うん」

その返事を聞いて、ゆっくりと自身を差し込んで行く。
慣らしも濡らしもしなかったものの、俺のそれは随時と前から我慢汁でしっとりと濡れていた為、案外すんなり入ってった。

ヤバい、気持ちいい。

ゆっくりと動く。
差し込む時には俺をすんなり受け入れて、抜く動作をする時は離さないと言わんばかりにしっかり締め付ける。

「ん……っ!!」

ピストンのペースが上がると照美が声を抑えながら小さく喘ぐ。
眉をしかめた顔とか性器を見ると、ああ、やっぱり男なんだな と
つくづく思ってしまう。

見れば見る程、女だと感じる時もあるけど
やっぱり見れば見る程、ちゃんと男なんだって感じる。

そんなお前を俺はずっと近くで見たい。
俺はもうどうしようもない位に愛し始めていた。

そんな事、考えていた時にさっきの
“僕を、本気で愛さないでくれるなら抱いてもいいよ”
って照美の言葉が脳裏に浮かんだ。

あれは、どういう意味だったんだろう。



 いつの間にか二人果てて、その余韻に浸っていたら夜になった。

「それじゃあね」

あの言葉の意味を理解出来ないまま、照美は帰って行った。
ダメだよ、俺……本気でお前の事、好きだよ……。




それから何ヶ月も過ぎたけど、二人の関係はずっと続いていた。
俺は本気で照美を愛しているけど、照美はどうなのか分からない。


ある日、照美が散らかり放題の俺の部屋に突然やってきた。
あの日と同じ。
違うのはもう二人は互いをよく知っていて
季節が随分と暖かくなった事だけ。

また照美はベッドに座る。
俺は上に乗ってキスをする。



「照美……ダメだ、俺……」
「……え?」
「本当に好きだよ……」

そう言った瞬間に照美が微笑んだ。

「ばっかだなぁ、源田くん……!」
「?」
「……僕は怖かったんだよ。君が、」

照美が言葉を続ける

「僕が君を愛してしまってから、君がいなくなってしまうのが怖かったんだよ……」「照美……」

そうやって、言った。
そんな俺の大事な恋人を抱きしめた。

なんだ、ちゃんと愛し合ってたじゃん。

ただ臆病だっただけなんだな。
これからはちゃんと、二人の気持ちを伝えあおう。

そしてまた、怖くなったのなら何度でもこうやって抱きしめてやる。

「愛してる……照美、本気で……」

しっかり見つめると照美はクスリと笑って俺の耳元で小さな声で、

「……僕も」

と、一度だけそう答えた。


(2010.10.20)





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