今年もデイダラは俺の部屋に来るなり、手作りのフォンダンショコラをくれた。
去年より少し甘さを抑えて、腕も上がっていた。しかもハートの形になっている。
「うめぇ」
「それはどうも」
こうしてケーキが食えるのも、生身の身体であるおかげだ。
洋菓子作りがうまいのに、デイダラはバレンタインと俺の誕生日以外はケーキを焼かない。
特別って感じが嬉しいが、でも何か、また来年となると待ち遠しく感じる。
俺はフォークを器用に使って、皿に残ったクリームまで残さずすくって口にした。
デイダラは微妙な笑みを向けてくる。そんな顔するなら、もっとデカく作れ。
「来年も期待してるぜ」
「オイラは来月のお返しを期待してるぜ、うん」
そうだ。忘れていた。
来月は俺が返す番なのか。
「…何がいいんだ」
「そんなの、オイラからすれば面白くねぇよ。サプライズみたいな感じにならないだろ?」
なるほど、俺の感性が決め手になるのか。
「…分かった。じゃあ夜の俺が少し鬼畜になってお前に襲い掛かると言うサプライズを」
「分かった。来年から何も作らねぇ」
「今のは冗談だ」
…ったく、何をやればいいか浮かばねぇな。
俺は薬の調合はできるが、料理の才能は無い。だからデイダラのように食い物は却下だ。
それなら、デイダラが赤面状態になるようなことをするしかない。
最近口説き文句を甘く囁いても、夜を重ねる回数が多くなるにつれて、アイツも慣れてきたらしい。
…慣れってのは厄介だな。
ならお返しと一緒に、素直に気持ちを伝えてやろう。
俺は、そう決意した。
(続く)