俺は姉貴が苦手や。いつもいつも引っ付いてきよるし、周りの目も気にせぇへんで俺が一番や言いよるし。

別に嫌いやない。たった一人の姉貴やし、俺に関すること以外は尊敬するところもある。ただ、異常なまでのブラコンはどうにかならんもんか。

そう思てさっさと彼氏でも作ればええんや、なんて言うても、付き合お思える人が現れへん、と取り合わんかった。


姉貴は俺の恋愛に関してはうるさくせぇへん。むしろ早うええ彼女作りよし、なんていらん後押しするほどや。ほんま変な奴。…まぁ余計な介入せぇへん分にはその点ええんやけど。志摩は『実は寂しかったりするんやないですか?』なんて言いよるがそれは断じてあらへん。

斯く言う姉貴は。

派手やないけど、姉貴は昔から一定の人気があった。身内の贔屓目抜きに整うた顔しとるし、文武両道やし、家事も得意ときとる。性格かて悪うない。

欠点は言わずもがなたった一つ、このずっと直らへんブラコンだけや。

姉貴に告白しよった奴が数多おることは知っとる。…その誰もがフラれたことも、や。さらには、その最大の理由が自分や言うことも。

大抵の奴は姉貴の想像以上のブラコン具合に諦める。そのくらいで、なんて言わん。悲しいことに重度やゆうことを知っとるからや。




…しかし、や。

そんな姉貴を、ずっと長い間想うとる奴が一人だけおる。



「琴虎、久々に帰ってきたんやし坊ばっか構うんやなくて俺とも出掛けへん?」

「金兄さん」



姉貴に長年片想いしとる、このド派手な金髪の男…金造がそうや。

偶然出張所に寄ったんやけど、琴虎も来とったんやな。琴虎はたまに出張所に差し入れしとるし、今日もそうやったんやろ。

二人はまだ俺に気付いてへん。金造は琴虎に会えたことが嬉しいんか、頬を緩ませきっとる。



「お出掛け?ええですね。竜士や子猫丸や廉造も誘ってピクニックとか…遊園地もありやろか」

「え!?」

「え?」



…噛み合うてへんな…。

さっきの金造の口振りは、間違いなくデートの誘いやった。が、姉貴はそう受け取らんかったらしい。上手くかわしたわけやない。これは100%素や。

姉貴は金造の気持ちに気付いてへん、と思う。恋愛に鈍いんやなくて、姉貴は金造を本当の兄みたいに思うとるから、金造も自分を妹みたいに可愛がっとるんやと勘違いしとるんや。

全く報われへん金造に、少しだけ同情してまうわ…。



「いや、あのな琴虎。俺はお前と二人で出掛けたいんやけど」

「二人で…?」

「そうや。琴虎の好きなとこでええし…特にないんやったら俺が考えるわ!」



いつになく頑張っとる金造。俺は色恋沙汰はようわからんが、頭空っぽの割になかなか上手く誘うとるんやないか?姉貴も満更でもなさそうやし。



「そうですねぇ…たまにはええかもしれませんね」

「ほ、ほんまに!?」

「ずっと竜士にくっついとっても煩わしがられるだけですし」

「こんなときまで坊中心…」

「何か言いました?」

「い、いや!何でもあらへん!それよりいつにしよか」

「金兄さんのお休みとか考えると、明後日しか都合合わへんと思いますえ?」

「せやったら明後日に…」



…とまぁ。金造にしては珍しく約束を取り付けられそうなこの状況。

が、金造には悪いんやけど、このデートは俺が認められへん。

姉貴はブラコンなんを除けばほんまに出来た女やと身内でも思う。そんな姉貴にほんまもんの阿呆である金造は合わへん。釣り合わん。とゆうか姉貴を任せられへん。人間性や仕事に対する姿勢は兎も角として、やけど。

何より、万が一にもないやろうが、金造と姉貴が上手くいったら金造が義兄になるんやろ?それは断固拒否したい。



そないなわけで。





「何しとるんや、姉貴」

「え、竜士!?出張所に来とったの?嬉しい偶然やわぁ」

「げ、坊…」



俺が陰から出てきて声かけた途端、琴虎は笑顔、金造はあからさまに苦い顔をしよった。予想通りの正反対なリアクションや。



「なんや明後日がどうこう聞こえたんやけど」

「え、あー…それは…」



口ごもる金造。金造は、姉貴に手を出すことを俺がよう思うてへんこと気付いとるからな。勿論、その警戒は正解や。誰が金造と出掛けさせるか。



「姉貴、明後日って用事あるんか」

「今、金兄さんと出掛ける約束しとったんやけど…どないしたん?」

「服が小さくなってもうたから、新しいの買いに行こ思うとるんや。志摩とはセンス合わんし子猫丸は課題やっとるから、姉貴に付き合うて貰いたいんやけど」

「え、私行ってもええの!?」

「…ちょ、琴虎?」



俺から誘うんは、ほんまに稀や。今言うたことに嘘はないけど、普段なら姉貴と出掛けるくらいやったら一人で行く。が、姉貴と金造のデートを阻止できるんやったら別に構わへん。

姉貴は余程嬉しかったのか、キラキラするような笑顔になる。対して金造は、思いきり顔を引きつらせとった。

そんな金造に気付いてへんのか、姉貴はその笑顔のまま金造に向き直ってこう言うた。



「金兄さん、やっぱり人数多い方が楽しいですやろ?竜士も一緒でええですか?」









神聖不可侵





「そんな笑顔で言われたら許すしかないやろぉぉぉ!」

と、半泣きで走り去る金造。

「金兄さんどないしたんやろか」

と、ほんまにわかってへん姉貴。


…流石に金造を哀れに思うてしもたことは、内緒や。






白鴉様リクエスト
『もしも金造が勝呂姉にアプローチしているところを勝呂が目撃したら』

白鴉様、リクエストありがとうございました!何ヵ月もお待たせしてしまいすみません…。ですが、実はとても楽しく書かせていただきました^^
金造が関わってくると、うちの勝呂は若干シスコンになります(笑)貴重なデレです(笑)その分金造が可哀想なことになりますが(笑)

アプローチらしいアプローチにはなりませんでしたが、いかがでしたでしょうか?もしご期待に添えていませんでしたら、遠慮せず仰ってください。

改めてリクエスト並びに応援ありがとうございました。これからもルシファーと桐生をよろしくお願いいたします!


※お持ち帰りは白鴉様のみ可




 




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -