さっきからテレビゲームに熱中する倉間の口から発せられる、絶え間ない愚痴とかあーとかうーと言ったうめき声が雑音として俺の鼓膜を揺り動かす。耳に感じる微かな心地良さに微睡みながら、何もない天井を見上げた。真っ白い天井に遠近を感じられなくて、今自分が何処に居るのか分からなくなった俺は天井に向かって手を伸ばした。空を切る手にはもちろん天井になんて届くはずがない。力を無くした腕が重力に従って、バフンと布団を叩いた。
「何してんすか」

思いの外良く鳴った布団の音にゲーム中の倉間が、ベッドに寝そべる俺を振り返った。訝し気に俺を伺う倉間に「何となく」って言って、ほら続けろと、ベットから身を乗り出して倉間の持つコントローラーのスタートボタンを押した。
画面が切り替わり何やら中ボスらしきドラゴンが小さい主人公に襲い掛かった。ぎゃーと叫んだのは倉間で、馬鹿とかアホと俺に罵声を浴びせてコントローラーをがちゃがちゃと必死に操作している。
チカチカと光る画面の眩しさに良く酔わない物だと、俺は小さく感心した。昔からゲームと言う物は苦手だった。指先での操作は現実感が無くて、長時間プレイすると画面に酔うのと同時に不愉快な浮遊感が頭にまとわりついた。

大分時間が過ぎた。中ボスはとうに倒された。カチャカチャとボタンの音がなり止むことは無く、一切俺を振り向かない倉間に少し腹が立った。
そろりとベットの端までホフクゼンシンで移動した。気付かれないように倉間の背後に回る。
ぺろり。
倉間のふさふさの髪を分けて見えた耳の後ろに舌を這わせた。

うひっ

ぞわりと鳥肌が倉間の全身を覆ったのが肩がびくついたせいで後ろからでも分かる。
「色気のない声だな。」
耳に口を近付けて言ってやると、倉間は頑なに画面を睨み俺を振り向かないでいた。顔が真っ赤になっているのを見られたくないのだろう。耳まで赤くなっていて意味はない。
「倉間」と呼んでも反応はなかった。
何となく面白くなくて、
がぶり
と、倉間のその柔かな耳に食い付いた。俺は本当に何も考えていなかったものだから、力加減などするはずもなく、文字どおりがぶりと、さながら獲物を前にした獣だなと他人事のように考えながら。食い付いた。
悲鳴が、上がった。
コントローラーは投げ出され倉間が片耳がきちんと正常に付いてるか恐々と確認している。

「な、何してんすか。馬鹿ですか、あんた。」

のんびりと肢体をベッドに投げ出して下から倉間を見上げると、怒りか照れか分からない程に赤く染まった顔に、痛さに涙を溜めた目で俺を睨んでいた。

「ちゃんと、付いてますよね。俺の耳」

自分で触っても不安に為るくらい痛かったらしい。慌て過ぎて、自分の耳に歯を立てた俺に確認を求めてきた。

「付いてるよ」
耳たぶから耳の根元にかけての赤い跡が、俺の物だと主張する印が。

「俺の物だな」
手を伸ばして歯形を優しくなぞれば、限界まで赤く染まった倉間の顔が俯いた。

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