「お嬢様、朝でございます」

「−−−んっ」


目が覚めた。いつもと同じ、執事の低音ボイス

あともう少し寝かせてほしい、と布団に潜り込んだ私に彼は言い張った


「起きろや」

「…仕方ないわね」


余りしていると本気で怒られてしまう

その前に私は自ら布団から出た


暖かい朝日がいっぱい部屋に差し込んでいて、執事のシンスケが私を見ていた


「おはようございます」

「おはよう」


シンスケと挨拶を交わして、一つ欠伸をして伸びをする


「朝食ができております。御早く準備を」

「めんどくさいわね。敬語なんか使わなくていいわよ」


わざとらしく敬語を使うシンスケに言ってやると、一つ息をついて彼は私のいるベッドに腰掛けた


「お前に敬語使う義理ねぇしな」

「失礼ないいかたね?」



この執事:シンスケは、私が幼い頃から傍にいる男

所謂幼なじみであるこの男が私の執事になったのはいつ頃だったか…


まるで姉弟の様に育った私達は、二人っきりの時は敬語を使わない

流石に他人の前でこんな喋り方はできないからねι


「早く脱げ」

「もっと優しい言い方できないわけ?」


真っ白なネグリジェを脱いだ私に、シンスケが持ってきたドレスを着せてくれる


淡い藤色のドレス

いつも思うけどシンスケのセンスはなかなかのものだと思う


ドレスが終わると椅子に座って、シンスケが髪の毛をアップにしてくれる


鏡ごしに見るシンスケはやっぱりかっこよくて、どうして執事なんかしてるのかといつも疑いたくなる


じっとシンスケを見てると、バチッと目があった

瞬間、彼はニッと嫌らしく笑った


「何見惚れてんだよ」

「自惚れないでよ」



見惚れてなんかないわ

だって鏡にうつる私と貴方って少し似ているんですもの


髪の色とか一緒だし、私が少し目を吊り上げたら目つきも似る

瓜二つとまではいかなくても、似るんじゃなかろうか


そんな貴方に見惚れるなんて、ただのナルシストじゃない



「できた」

「ありがとう」


支度が終わると、私達は食卓へ向かう

いつもと同じ、豪華だけど独りぼっちの食事


「貴方は食べないの?」

「私はもうすませましたので」


毎回の如くシンスケに問い掛けてみるけど、返事は決まってそうだった

二人っきりじゃなくなると幼なじみじゃいられなくなるの、嫌い



「お食事中申し訳ありません、王女様」

「なに?」


扉が開いて、家臣の一人が入って来た

食事中に入って来るなんて余程の事なんでしょうね



「隣国から譲渡品が届いておりますが、いかがなさいますか」

「それなら適当な部屋に運んでおいてちょうだい」


私が言うと家臣は一礼して出ていこうとする

それをちょっと呼び止めて言う


「ジョセフィーヌの世話もよろしくね」

「かしこまりました」



あぁ、今日も平和だわ

いいお天気の朝に、美味しい朝食に、豪華な譲渡品、かっこいい執事に、愛馬のジョセフィーヌ

あぁ、私ってなんて幸せなのかしら





むかしむかし

(全て私のものなの)






−−−−−−−−
やってしまった
“悪のシリーズ”のパロ

よく考えたら名前とかおかしいことになるι


2011*11*13



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