「もう…だれもいないのね」


「あぁ」



誰もいない。私とシンスケしかいない王座の間


城下では他国の軍と私の国の民達が暴動を起こしている

銃声や爆発音。民達の罵倒がここまで響いてくる


銀の国の兵達が城門を壊そうとしている

この城に侵入されるのも時間の問題…


指揮をとっているのは私が愛した人

私の気持ちは少しも伝わらなかったみたい



「私…よくない王女だったよね」

「そうだな」



呟くとシンスケが肯定した



「我が儘で…だから嫌われちゃった…。皆いなくなっちゃった…」



からっぽな城、からっぽな国

何もない

私には何も残っていない



「シンスケも私の事嫌いでしょ」



いつも側にいてくれたシンスケも私の事嫌いなんでしょ

いなくなっちゃうんでしょ?


どうせ私は…一人ぼっち



「早く出ていきなよ。あんたまで殺されちゃうわよ…?」


「違うな…」

「?」



いきなりシンスケに抱きしめられた


意味が分からず黙っているとサッとドレスを脱がされた

代わりにいつも男装するときの服を着せられた


「どうするの…?」


私が尋ねるとシンスケは意地悪く笑って、私がきていたドレスを身に纏った


「死ぬのは王女だけだ」

「ちょっと…」


まさか…と思って側に寄ると、またギュッと抱きしめられた



「お前は逃げろ」


「ばかっ。いくら顔が似てるからってバレるわよ…っ」


「バレやしねェよ」



いっそう強く抱きしめられ、耳元で囁かれた




「俺らは双子だからな」




「…ぇ」




信じられない言葉に思わず聞き返した

今…なんて言ったの



「お前は覚えてねェだろうがな。それでも俺はお前を忘れた事なんかなかった」

「そんな…そんなのっ」


「ずっと昔からお前の事が好きだった。お前だけを見てきた

嫌いになるわけないだろ」



こんな私を…

まだ好きだなんて言ってくれるの?



「お前が悪だなんて言うなら、俺だって同じ血がながれてる」


シンスケは大切なものを扱うかのように、私の髪を撫でた

何度も何度も


もう触れることができないというように



その時。何かが破壊される音がした

多分城門が突破されたんだろう



「時計の裏に隠し通路がある…早く逃げろ」


「嫌だ!シンスケも一緒に逃げよう?これからも側にいてよ…」



どうしようもなくて、泣きながら抱き着いた


一人にしてほしくなかった

側にいてほしかった



「それじゃぁ、民が納得しないだろ?」

「だって…」

「うるせェよ」


駄々をこねる私をシンスケはヒョイッと抱き上げた

時計の文字版を押すと、時計が動き後ろに通路が現れた

そこに私を下ろすとシンスケはまた私を抱きしめた



「好きだサラサ…」

「シン…」


そっと私の額にキスをするとシンスケは扉を閉めた



「嫌…っ。シンスケっ!」



扉を叩いたけどびくともしなかった


嫌だこのままじゃシンスケが私の代わりに捕まっちゃう…!

殺されちゃう…!


私のせいで−−−ッッ



「……っ」



側に枯れた花の輪が落ちていた

シロツメ草の冠………



「シンスケ…っ」


シロツメ草を抱き上げた





私もだ、と

(言いたい言葉は)
(もう言えない)





−−−−−−−−
高杉様ぁ!←


2011*11*26



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