「お前、進路どうすんだ」



晋助に言われてチョコレートケーキを食べていた手を止めた


進路?何の事だろう。なんて、思うくらい、私は自分の進路について、何も考えてなかった

自分の事なのにもかかわらず、まるで他人事。自分には関係ない、無縁な事だと、何故かそう思っていた


「とくに考えてないけど…」


正直に答えると、晋助は馬鹿を見るような目で私を見た

まったく、失礼な!



「なんか文句あるの?」



別に喧嘩ごしに言いたいわけじゃないのに、こんな口調で言っちゃうのは癖だから大目に見て欲しい



「別にねぇよ」

「なによ…」


晋助が新聞に目を向けたから、私もケーキを再び食べ始めた


でも、一度話題を振られると気になるもので、頭の中は進路の事でいっぱいになった



大学に行く気はあまりない

元々の成績はよくないし、


考えた事はなかったけど、ケーキ屋さんもいいかもしれない



なんて思いながら晋助を見る

そういえば…



「晋助はなんで保健室の先生になったの?」



ずっと不思議に思ってたんだ

なんで晋助はお医者さんじゃなくて保健室の先生になったのか

晋助の両親と同じ医者に…



私が言うと、晋助はゆっくりと私の方を向いた

それから、いつもより数倍真面目な顔をして言った



「お前の傍にいるため」





時間が止まったかと思った



(ば、ばかっ)
(本気にしちゃうからやめて)






2012*06*10 執筆

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