「…」
「…」


晋助の車の中。私達は無言で家路を急いでいた

気まずい…非常に気まずい


「まだへそ曲げてんのか」

「曲げてない」


いや、実際曲げてるけど


晋助はうちの保険医だし、当たり前のことなんだけど…

いや、それ以前に晋助はかっこいいから女子生徒に人気なのは当たり前で、しかも今に始まったことじゃない

だけど、保健室であからさまに晋助目当ての子を、晋助が看病してるのが気に食わなくて

一人で怒って、機嫌悪くしてるのは私。


馬鹿みたい。いや、馬鹿だ。

こんな事で嫉妬なんて、みっともないし、可愛くない


「ついたぞ」

「…」


謝るどころか、まともに会話もしないまま家についてしまった

無言のまま、鞄を持って車を出る間際


「悪かった」

「…っ」


パタン…

ドアが閉まる音が響いて、私と晋助の空間が遮られた


なんで、晋助が謝るのよ

悪いのは、私なのに。



なんだか大人の余裕を見せられた気がして少し腹が立った

子供扱いなんかして欲しくない


玄関に向いた足を晋助の車に向けて、早足で運転席の方に向かった


ーーダンッ…


窓を叩いて呼ぶと、晋助はびっくりしたように私を見ていた

窓ごしで、聞こえないのは承知で、更に聞こえないような小さな声で言った




るコトバ




言ったあとに、晋助の顔も見ずに踵を返すと、コンコンッという窓を叩く音がした

振り向くと晋助がにっ、といつものように意地悪く笑っていて何かを言ったのが見えた




(昨日のあれ何て言ったの?)

(さぁ?)

(もう一回言って)

(お前が大人になったらな)

(?)





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