「…何」



部活で作ったマカロンをラッピングして、エプロンのまま廊下に出た私を後輩達が笑った

「やっぱり高杉先生が好きなんですね」って


間違ってないよ、否定しない

だけど、晋助と私じゃ釣り合わないじゃない



そんな愚痴を胸の中で呟きながら保健室に向かってると、目の前に数人の男子がずらっと並んだ

まるで通せん坊をするように


自分より背の高い彼等を見上げて、きょとんと首を傾げて見た



「どーも、真菜ちゃん。保健室に行くのか?」


「…っ」



何こいつら…!

私に用?それとも晋助?

どっちにしろ、イライラする



「やっぱりお前らできてんだろー?」

「生徒と教師でいけないんじゃね?」



一歩一歩前に近づいてくる奴らに気圧されて、一歩ずつ後ろにさがる

抱えていた包みがくしゃっと音をたてると、奴らの視線がそれに集まった

ニタリと奴らが笑う



「それ高杉にか?」


「いいよなー。真菜ちゃんの手作りお菓子いつも食えて…」


「それくれよ」



手がのびてきたのを叩き落とした



「触らないで!」


「この…っ」



私が叩いた手をさすって、男は私を睨んだ

やばい…!!


そう思って思わず私はその場から逃げ出した


「追うぞ!」


後ろから追い掛けて来る

逃げ出せば追われる事くらい予想できたのに、ほんと私って馬鹿


マカロンを死守しながら、放課後の誰もいない廊下を走る

向かうは保健室

こっちからじゃ遠回りだけど、職員室よりは近い



「!」



運動神経が決していいとは言えない私は、躓いて盛大にこけてしまった

同時に包みが前方に落ちる


「いたい…」


あまりの痛さと恥ずかしさに涙目になっていると、後ろから来ていた奴らが追い付いて私を囲んだ


「あーあ、こけちゃった」

「これ、落としちゃだめでしょ…」


「…あっ」





−−ぐしゃっ





私が落とした包みを、男の一人が踏み潰した

できたばかりの、やわらかいマカロンが無惨にも潰された音が響いた


「なにやってんだよー!俺食べたかったのに」

「じゃあ、食う?」

「そんな潰れたやついらねーよ!」



そう言いながら奴らは私から離れて行った


なんなんだろ、アイツら…

とりあえず、私をからかいたかっただけなのかな

まぁ、マカロン潰して、私がショックを受けて…それで満足したんだろう



「あーぁ…」



潰されたマカロンの包みに手をのばした時、頭上から声が降ってきた



「何やってんだ、お前は」

「!」



びっくりして顔をあげると、そこにいたのは晋助だった

すっ、と晋助は私の目の前にしゃがみ込んで潰れた包みを手にした


「だ、だめっ」

「んだよ…」


そんな潰れたマカロンなんか見せられない


そう思って制止をかけるが、晋助が従うはずもない

シュルッと綺麗なラッピングをとくと、案の定ぐちゃぐちゃに崩れたマカロンが現れた

色んな色のクリームが混ざり合って、お世辞にも綺麗とは言い難い



「だから…だめだって…」

「何も駄目じゃねェよ」

「…?」


そう言って晋助は崩れたマカロンのカケラを口にいれた

まさか食べてくれるなんて思ってなかったから、私は言葉を失う


そんな私を見て晋助はニヤッといつもの様に笑った



「お前が作ったモンがまずいわけねェだろ。どんな形でも」


「…っ」



赤面して、思わず泣きそうになった私の顔に晋助は手をそえた



「俺はお前が作ったのしか食わねェからなァ」



そう言って私の額に小さくキスをした





壊れたのはマカロンと、




(気持ちを抑えてた防御壁)





2012*03*04 執筆

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