『友枝町ー、友枝町ー』

機械の音と一緒に聞こえてくる車両のアナウンス
少し肌寒くなってきた頃
おれはいつもの時間に来る電車に乗る



一目惚れな狼くん






ドアから入ってすぐの右側の席
おれの特等席

別に決まりではないが空いていたらその席に座って学校につくまでの時間、音楽を聴いていたりお気に入りの文庫本を読んだりして暇を潰していた

星條高校には約20分くらいでつく
最近はどっと冷たい風が吹いてきてもうそろそろ冬物を出さなくちゃなとぼんやりと頭で考える


『間もなく発車します…』

「乗ります、乗りますっ!」
突然、向かいのドアから聞こえてきた声
顔をあげると、急いで走ってきた様子の子猫みたいなやつがいた

ミルク色の髪、澄んだ瞳はエメラルド色で白い肌はほんのりと赤く染まり息は乱れていた


(はあ。間にあったぁ)
ぽそっと呟いたその声は、ヘッドホンをしているおれの耳には届かなかったが何か独り言を言っている気がした
少し気になってそっとヘッドホンを外す


彼女をよく見ればおれと同じ学生服を着ていた
まだゴワゴワしていて着慣れてない様子から「転校生」と予想がついた

「あ、あの。星條高校の人ですよね?」
遠慮がちに柔らかい声で話しかけられる
にっこりと微笑むその表情に不覚にもドキッとした
「そうだが…」
「何年生ですか?」
小さな背丈で一生懸命、ゆらゆら揺れる電車のつりかわを掴む

あまりにもよたよたしていてまるで初めて電車に乗るおとなしめな子供みたいだった

「1年。それより座れば?隣」

おれは空いている席に目をこらす
彼女は大きく有難うございますと返事をした

おずおずと席に腰を沈めれ彼女はペラペラとおれに向けて喋りはじめた

「わ、わたし。今日が初めてなんです。星條高校…だから緊張してて」
当のおれは話はちゃんと聞いていたが彼女の横顔を見つめていた
少し赤く染まった頬

──触ったら柔らかいのだろうか
いや、何を考えているんだおれは
初対面の人に向かって

「わたし、木之本さくらって言うんです、一緒のクラスになれたらいいですね」

とびっきりの笑顔がこちらを向いた少し首を傾けて
答えないおれにどうしました?と問いかける
ふいに顔が近くなって
もう寒い時期なのに全身の血が頭に駆け巡るかのように体全体が熱かった

「いや、その。…おれは李小狼。よろしく」
とことんこういうのには弱いおれは相手の顔が見れず俯き加減で言葉を繋げる


高校から一番近い駅に到着した

ぷしゅううと勢いよくドアが開かれる
冷たい風が逆流して体中に染み渡る
火照ってるおれにはちょうど良い感じの風だった
すくっと立って反対側のドアから出る

さくらは鞄を抱きかかえおれの後についてきた

本当に子猫みたいなやつだな


「ふぅ、風冷たい…」
体を抱きしめるように自分の体を温めようとするさくら
ふぅ、また溜め息を一つ

「寒くなってきたな」
おれはさくらを見る
さくらは白い手をこすり合わせる
「そうですね」
そういって上目遣いでうるうると潤いに満ちた瞳でおれを捕らえる


ああ。反則だって、それは








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