海で遊ぼう・氷帝編

罰が悪そうに帽子を深く被り直した京介くんを一度眺めてから、ふうっと息を吐き出す。

「忍足先輩っ」

「ん。どないしたん?そない俺に会いたかったん?」

「いえもう既に脳内忍足先輩に褒め殺しされた後なので……」

「まぁ俺にだけに冷たいんは今更やけど……って、ちょ待ち。脳内忍足先輩とか詩織ちゃんの脳脳内に住んどる俺に軽く嫉妬やわ。でもなんや嬉しいで?」

「忍足、気持ち悪いCー」
「クソクソわけわかんねぇこと言ってんなよな!」
「あはは、忍足相変わらずめちゃくちゃ言われてるねー」

忍足先輩に振り返ったら、ジロー先輩と岳人先輩がいて滝先輩も軽やかに笑っていた。

「……夢野。お前、先に行くなら声ぐらいかけろ」
「まだ部屋の中かなーって待ってて遅くなっちゃったよ」
「ウス」

それからその後ろに若くん、長太郎くん、崇弘くんもいた。

「あれ?跡部様と宍戸先輩は……?」

二人の姿がないなぁなんて考えていたら、突然「はーはっはっはっ!」と高笑いが響き渡る。

恐る恐る声のする方に振り向いたら、海の上を走る電動ボートの上に跡部様。
しかも私には電動ボートを運転しているように見えるのだが、そのボートの後ろに繋がれたサーフボードに乗っているのは宍戸先輩のように見えた。

「へぇ。ウェイクサーフィン……初心者であそこまでできるんだとしたら……本当にすごいよね……あーあ、なんかムカつく」
「お、俺もやりたいっ!」

深司くんとアキラくんがくるくる回転して技を決めているらしい宍戸先輩を見ながら、そんなことを口に出した。
スイカを食べていた青学の皆さんも楽しそうにそれを眺めている。

「さすが宍戸さんっ!」
「ちっ……軽やかにボートを運転する跡部さんも……くそっ、下剋上だ」

長太郎くんと若くんがそんなことを言っていて、それから暫くして跡部様が私にトーイングトイでもやるか?と提案してくれた。

宍戸先輩がやっていた、技術と運動神経を求められる難しいものではなく、複数人の乗れるチューブにしがみついていればいいだけのアトラクションだそうだ。

「乗りたいですっ」

意気揚々と頷いて岳人先輩と若くんと乗ることにする。

ただ乗ればいいだけだったけれど、波の上を超えたりする時に大きく跳ねたりして、握力のないわたしはすぐに海に叩きつけられるかのように振り落とされたのだった。

岳人先輩と若くんは最後まで乗っててすごいなと思う。

「……で。大丈夫かいな?」
「……ウス」

砂浜に泳いで戻ったら、忍足先輩と崇弘くんがバスタオルを持って待っててくれていた。

「ありがとう!……えへへ、私は大丈夫ですけどもー」

鼻から大量に水が入ったし、けっこう痛かったけど大丈夫である。
へらって微笑んだら、忍足先輩がニヤリと口角を上げた。

「ん、大丈夫そうやな。……それから自分。水着めっちゃ似合っとるで。可愛ええな」
「はっ?!」

気付いてラッシュガードを見たら、やっぱりピッチリと私の素肌にくっついていて、そのまま中が透けていた。
忍足先輩の褒め言葉にちょっと赤くなりつつ、ここは反撃に出るべきではとか妙なことを考える。

「あ、ありがとうございますっえへへ、頑張ってきて良かったです」

照れたりしたら逆に忍足先輩のペースかななんて考えたわけで。だからこれは些細な抵抗だったわけで。
ラッシュガードのファスナーを下ろして、ラッシュガードを脱いで忍足先輩に微笑んでみた。

ほら、私はもうからかわれるだけの存在では無いのだ!照れてなんかないもん!
なんて心の中でほくそ笑む。

「……え?ちょお待って……これはあかんわ」

だと言うのに、忍足先輩はガっと私の両肩を掴んで真顔のまま顔を近づけてきた。

「「忍足っ」さんっ」

とりあえず、走ってやってきた宍戸先輩と長太郎くんによって忍足先輩は無事に私から引っペがされる。
私は隣でオロオロしていた崇弘くんの背中に逃げ込むのだった。

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