仁王雅治に

──仁王さんの頭を撫でるだけという罰ゲーム内容に安堵しつつ、首を斜めにかしげた。

「……どうしたんじゃ?」

「いえー、なんだか私の罰ゲーム対象にされてて、仁王さんが可哀想なような……」

「プピーナ」

ふっと目を細めて仁王さんが私と同じように首を傾げながら、いつものわけのわからない言語で返事を返してくる。
だから、まぁいいか。なんて思って。
仁王さんにしゃがんで欲しいと伝えた。

「……ピヨ」

「ありがとうございます。これで届きますっ」

日陰になっている花壇のレンガの上に腰掛けた仁王さんの頭へと手を伸ばす。
独特な色の髪が風に揺れて、さらさらと動いていた。

「えっと……なでなで」

思わず口から擬音を出してしまったが仕方がない。
だけどそれに対して、ぷっと仁王さんが吹き出した気がした。
恥ずかしさで唇を尖らせて彼の顔を覗き込んだら、すごく優しい目で私を見上げる。

「……もう一回……言って欲しいナリ」

「え?何をですか?」

「頭撫でる音」

口角を上げた仁王さんに恥ずかしさが募りながら、キョロキョロと辺りを見回す。
よし誰もいない。

背後に並ぶ木々がかさこそと風に揺られていた。

「……仁王さん、なでなで」

「……ふっ」

やっぱりまた吹き出したな!なんて思いつつ、仁王さんの頭を撫でながら彼を見つめる。

すっと細められた瞳に私が映って。
そして仁王さんの表情はどこまでも幸せそうだった。

「……仁王さんは……」

「ん?」

「……甘えたい年頃なんですね」

「は……」

そんなことを思ったら、だんだん可愛く見えてくる。
よしよしと何度も頭を撫でて、小さい子をあやす様にギュッと仁王さんを抱き締めた。

「可愛いです、仁王さん」

「……可愛いなんて……言われたことないき。驚きじゃが、……まぁ悪くは無いぜよ」

するりと私の背中に腕が伸ばされて、ぎゅうっと抱き寄せられる。

……本当に小さい子みたいだ。

「…………だが」

だけど突然そう呟いた仁王さんは、少し離れて顔を上げたのだが、それが妙に色っぽい表情で。

「俺も男じゃき」

トンっと自身の脚を叩いてから仁王さんが立ち上がった。
あっという間に彼を見上げる立場になってしまう。

「……あんまり胸を押し付けられると、悪ーい狼になってしまうかもしれんぜよ」

それから耳元で囁かれた台詞に思わず「ごめんなさいっ!」と叫んでしまった。

吐息がかかった耳元を手で押えて、仁王さんを見つめる。
確信的に首を傾げて薄く笑った彼に心臓が煩くなった。

……ら、楽な罰ゲームだと思ったのに!とても心臓に悪いものになった!
なんて小さく心の中で毒を吐く。
だけど結局口から出てて、皆に笑われるのだった。

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