バレンタイン突発企画
(2020ver.※不思議少女の楽曲のみ)
※新テニが始まらずに卒業式を待つ&手塚は三月ドイツ予定。リョーマもいる二月設定
※(キャラ名)はその話の視点人物
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ビターな恋
「ふぅん……鳳が誕生日だったんだ……」
なんだよ、俺らはおまけかよ。とかボヤきたくなったけど、楽しそうにヴァイオリンを弾いている詩織の顔を見ていたら、そういうのが馬鹿らしく感じた。
手の中にあるチョコレートの特別な包装紙。チャット仲間三人だけが同じ包装紙で。
リボンはそれぞれの学校イメージカラー。
他にも跡部さんだったり、甘いものが苦手な橘さんだったり、不二さんだったり、山吹の亜久津さんだったり。
包装紙やリボンが違う人間も数人居たりして。
そういう細かいところも一生懸命考えながら、一人一人に付き合って準備したんだろうなと思ったら、途端に何も言えなくなる。
「……ほんと、もう一歩なんだけどな……」
この立ち位置から抜け出すのに、あと一歩。
あと一歩でいい。
そうすれば……。
会場中に漂う様々な匂いの中で、甘いチョコレートの香りが一番鼻につく。
なのに、詩織と俺との関係は甘くなんかなくて。
そう、例えるならば、橘さんが手にしているビターチョコ。
「深司くん、深司くんっ!!」
「え?」
ぼーっとしてたら、俺を呼ぶ詩織の声が聞こえた。
他にも財前と室町も呼ばれている。
「……何?」
「チャット仲間で写真撮んねんて」
「詩織の友人の子が」
篠山とかいう子、だっけ。
四人で写真を撮って貰えることに嬉しいのか詩織はご機嫌だったが、この写真俺らには有料なんだよね……とボヤく。
あと一歩。
キュッと唇を噛み締めた。
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