バレンタイン突発企画

(2020ver.※不思議少女の楽曲のみ)
※新テニが始まらずに卒業式を待つ&手塚は三月ドイツ予定。リョーマもいる二月設定
※(キャラ名)はその話の視点人物

[list]

驚くほどの


不動峰の皆にチョコの包みを配り終わってから、視線をキョロキョロさせた夢野さんに剣太郎が大きな声で「夢野さーんっ!次、お願いしますっ」と元気よく手を挙げる。

夢野さんはパタパタとドレス姿であることを忘れているのか駆け足でやって来た。

「お、おい、危ないぞっ」
「どゅわっ?!」

首藤が気づいた時には遅かったらしい。
彼女は謎のウルトラマンみたいな声を発してから盛大に首藤の腹に突撃した。……なんて、何も無いところでつまづいた勢いのまま、首藤に体当たりをしたわけだけど。

「いたた……ひぃぃいっ、首藤さん、生きてますか?!」

そしてそのまま首藤を押し倒してしまったらしい。上体を起こした彼女はゆさゆさと首藤を揺さぶる。

「って」
「お、おい!夢野っ」
「まるっとパンツが丸見え……っ!」
「ダビデぇぇっ」

俺がハッとしたのと同時にバネとダビデも気づいたようだった。
俺はダビデにツッコミを入れているバネを横目に、近くのテーブルクロスをサッと引き抜いて彼女の腰元に巻く。
それから、夢野さんをお姫様抱っこしてみた。
彼女が腕にかけて持っていたチョコレートの包みが入ったカゴは、樹っちゃんが拾い集めている。

「サエさん、まさかのテーブルクロス抜きにお姫様抱っこ……!」
「……カッコよすぎで腹立つなぁ……」

剣太郎には羨望の眼差しを向けられて、亮からは嫉妬のため息を頂いた。

「お、お見苦しいものをお見せしたにも関わらず、ありがとうございます。そして、首藤さん、ごめんなさいぃぃーっ」

俺の顔を極力見ないようにしているのか、夢野さんは下に俯きつつそう早口で吐き出すように言った。
火が出るほど真っ赤に見えて、相変わらず可愛いなと小さく笑う。

「くす、スカート、巻き上がった部分直せた?あと、首藤は大丈夫だから」

「あ、はいっ、今直しました!」

ストンっと彼女を地面に下ろしてから声をかけると、夢野さんはやっと俺の顔をまともに見て頭を下げた。
本当はもう少し困ったような反応が見ていたかったけれど、他校の数人がこちらに突撃してきそうだったから残念だ。

「で、では、ハッピーバレンタインですっ!昨年からずっとお世話になりました!」

「ははっ、お互い様な気もするけどな!ありがとうな!!」
「ありが10匹でありがとう」
「うらぁっ!」

バネの派手なツッコミがダビデに入る。

そのいつものやり取りに、楽しそうにふわっと笑った夢野さんは驚くほど綺麗で。

……あぁ、これってそういうフィルターかかってるのかな、なんて。
去っていく彼女の背中を眺めながら、すごく寂しくなったのは内緒の話だ。

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