拾肆・再会
「夢、夢!」
「っ?!」
重い瞼を開けたら、そこには炎柱の煉獄様がいた。
寝ていた頭が起動するまでの時間……私は何が起こっているのかわからなくて。
目の前で、私の床の真横に座って前屈みで私を見下ろしている煉獄様が現実なのか夢なのか判別するのに時間がかかった。
「夢、寝ていたのに起こしてすまない!!はははっ!俺ももう少しあとに挨拶したかったのだが、どうにもこうにも鬼が出たようだ!うむっ、間の悪い!」
「煉獄様っ」
大きくてハキハキ喋るその声に、徐々に頭の中がハッキリとする。
慌てて起き上がろうとして、煉獄様に頭をぶつけてしまうと思ったけど、流石柱様。
するっといとも簡単に避けられた。
「あ、あの、こんな時間に……」
「うむっ、これを返しに近くまで来ていたのだ!」
煉獄様が開いた手のひらには私が手渡したハンカチが綺麗に折りたたまれている。
洗濯までしてくださったのだろうか。
丁寧なそれにきゅっと唇を噤む。
なんだか嬉しかった。
「……わざわざありがとうございます」
ぺこりと頭を下げてハンカチを受け取ると、真っ白な歯を見せてから煉獄様の目が細められた。
眩しいほどの笑みが心を温かく照らす。
「うむっ!だがよもやよもやだ!!本当は一日ぐらいゆっくりさせてもらおうと思ったのだが!」
「私も一日ぐらいはゆっくりして頂きたかったです」
「はははっ!夢は俺の弟である、千寿郎によく似ている!我慢しているところもそっくりだ!」
「わ、私は我慢など……」
首を横に振ろうとしたら、大きな煉獄様の手が私の頭をがしがしと撫でた。
温かい手のひらだった。
「そうだ、夢!千寿郎と文通をしてやってくれないか。お前がよければ友達になってやって欲しい」
「は、はいっ、私でよければ」
勢いよく頷いたら、煉獄様はまた満面の笑みで、どことなく嬉しそうだった。
住所を教えてもらうが、私がいきなり送っても……と思っていたら、煉獄様が「千寿郎にはもうお前のことは話してあるから、大丈夫だ!」と笑われた。
……一体どんな話をされたのだろう。
気になりつつも、またこれから鬼狩りに向かうと目を細めた煉獄様に切り火を行う。
あっという間に去っていった煉獄様が飛び立った空を見上げながら、まだ朝日すら登っていないことに気がついた。
ふわぁっと出た欠伸に、もう一度だけ寝直そうと布団の中に潜る。
煉獄様がまた無事に来られますように。
今はただ、それだけを祈った。