触るな危険

――明日から、私の新しい生活が始まる。
私を養女として受け入れてくださった遠い親戚である松永久秀さんには、何度感謝の言葉を並べても足りないぐらいだ。

だけれど、一つだけ私には不安があった。
それは――

「お嬢さん、明日はいよいよ入学式ですね」
「我らが登下校お守りさせていただきます……」
「お嬢さんに寄り付く虫けらは我ら三好三人衆が抹殺――」
「やめてください!そんな冷酷なことばかり口にするのは……それから、名前で呼んでいただいて結構ですからっ」

「……はっ」

不服そうに短く頷いた三好さんたちを見つめて、はぁっと深い溜め息をつく。

実を言うと、私の養父である久秀さんは、極道の組長さんみたいな感じなのだ。
みたいな……と言ったのは、私自身はっきりと教えてもらったわけではないからだ。
ただ、この久秀さんの為に動き、同じように屋敷で生活している男性たちが何人もいるので、世間知らずな私でも、そういう予想ぐらいは立てられたわけである。


「……お友達できるでしょうか……」

ぽつりと漏らした台詞は本当にただの独り言のつもりで。
だけどすぐに背後に現れた気配にびくりと肩を震わした。

「……卿はそんなものが欲しかったのかね」

「ひ、久秀さん!いつの間に……あ、いえ、その……はい」

穏やかな口調で目を細められた久秀さんが、一体何を考えているのかわからない。
だけど私が恐る恐る頷いたら「ふむ」とだけ返事をされて、顎に当てていた手を離し去っていかれた。

……明日からの学園生活、いささか不安です。





「……政宗様、成実。松永からこのような文が」
「えーっと、何々〜?って、ちょ、梵っ、まだ読んでないのに取り上げないでよ!」
「Shut up!……hum,野郎の娘だぁ?しかも友達の範囲で仲良くするようにとは……どうせ醜女かなんかなんだろ」
「……そんなこと言っといて、美人だったとき俺の女にするとか言わないでねー」




「あ、やっぱ真田の旦那んとこにも来たんだ?」
「うむ。しかし、何故わざわざこのような文を……松永殿の考えがわからぬ」
「あはー、俺様が思うにこれってただの親馬鹿じゃない?」




「卿を用心棒として雇いたいのだが」
「……、……(この娘の用心棒に、俺を)」




「くっしゅん!」

――小さなクシャミは、きっと騒がしい日常が始まる予兆かもしれません。

backgo
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -