気が合うのか合わないのか
「あ」
「げ……」
新曲のCDを買おうとショップに立ち寄ったら、レジ前であのバカを見つけた。
「げ……とはなんぞな、失礼ではないかお主」
「……いきなり今日は何キャラなんだよ」
「……何だろう」
「なんだそれ」
首を傾げて変な顔をするバカの額にでこぴんを食らわす。
変な奇声を上げたヤツに吹き出したら、涙目のまま俺の額めがけて頭突きをかましてくるが、身長差により鼻に激痛が走った。
「〜っ!お、ま……っ」
「くぉおぉ……おでこが、痛っ……神尾くんの鼻痛……っ」
二人してその場にうずくまっちまって、周囲からの視線が何よりも一番痛い。
とりあえず、恥ずかしいのでバカ夢野の腕を掴んで引っ張った。
CDショップの横には、ファーストフード店があったし、ドリンクだけを頼んでとっとと席に座ることにする。
とりあえず、夢野には文句を言わないと気が済まない。と思っていたら店員に「あ、セットで」とか注文しているのが聞こえて、思わずつっこんだ。
「なんでセット注文してんだよっ」
「え、お腹が減っているから……?」
「……もういい。お前そんなやつだよな、諦めるわ」
どんなけマイペースなやつなんだろうか。
窓側の席でもぐもぐとポテトを頬張っている姿を見つめながら、ぼんやりとハムスターっぽいなと考えた。
……黙っていれば可愛い方なのに、言動や行動が残念過ぎる。
少しぐらい杏ちゃんを見習えばいいのに。
「……そういえば、神尾くん、髪あげたら雰囲気変わりそうだよね」
不意に前から伸ばされた手が俺の前髪に触れるか触れないかの位置にきて、思わずその手を払いのけた。
「……え、あ、ごめんなさい」
俺の勢いに畏縮したのか、夢野は肩をすくめて目線を足元に落とす。
「……あ、油まみれなんだよ、お前の手。拭いてからにしろっつぅの」
べっと舌を出して適当なこといって誤魔化しといた。
なに意識してんだとか頭ん中ではぐるぐるしていたが、バカな夢野は気づいてもいないようだ。
「っ、おりゃー。ムカつくからその油まみれの手で触ってやるぅ」
「はっ!俺に攻撃なんか効かねぇぜ!触れるもんならやってみろ、リズムにのるぜ!」
「りずむにのるぜっ」
「てっめー、バカにしてるだろ!もう許さねぇ!ポテト寄越せ!バカ夢野っ」
「いーやーだー」
……気付いたら辺りが暗くなっていたのだった。