50万筆頭祭 | ナノ

「夢野は三国志が好きなのか?」

「……え、と、……本を読むのは好きなので。あ、でも歴史小説とか特に好きかもです」

「ほう。ならば歴史自体にも興味はあるのか?」

俺がノートを広げペンを走らせれば、夢野は引きつった笑みで、一歩一歩後ずさっていく。
すかさず俺も一歩一歩彼女に近づいていった。

「……うぐ!」

「フッ、もう後ろはないぞ」

思わず口角を上げてしまう。
俺を見上げる夢野の顔から血の気が引いていたことから、どうも相当悪そうな笑みになっていたのだろうな。
……だが青い顔の夢野もなかなかからかいがいがあって面白いので、表情を訂正することは止めた。

「……歴史は……音楽的なものとかも好きですし、確かに三国志や戦国時代とかも好きですよ」

「ほう。ヴァイオリンだけではないんだな。見識を広げることに繋がる。いいことだ」

「……私の親か先生か!」

「ふむ、兄かもしれないぞ」

「や、柳さんはいつかニュースにでるかもしれませんね」

「面白い冗談だな」

俺が開眼すれば、夢野は「失礼しますぅ」と逃げ出していった。
毎度失礼なやつである。

……だが、歴史がそこそこ好きだという情報も仕入れたし、まぁ今日はこれぐらいで許してやろうと思った。

また明日は覚悟するんだな、夢野。

歴史について

  
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